水産研究本部

試験研究は今 No.193「ホタテガイ付着物除去試験について」(1994年7月22日)

ホタテガイ付着生物除去試験について

表1
  室蘭地区水産技術普及指導所では、平成5年度、道立工業試験場と共同で開発したホタテガイ付着生物除去機を使っての生物試験調査を実施しました。

  噴火湾では、養殖ホタテガイを水揚げする時に出る、貝に付着している付着生物(雑物)が大変多く、時にはホタテガイの水揚げ量と同量の雑物が出ることから、湾内の養殖漁業者や漁協、役場など大変頭を悩ましている問題です。そこで雑物を何とか減らすことが出来ないかと考えて、この除去機が開発されました。この機械は平成3年度から開発試験が始められ、何回もの試作機の改良が繰り返されて、平成4年度末にやっと完成機が出来上がりました。この機械の特徴は船縁に取り付けて、幹綱から耳吊り養殖連を巻き上げ、高圧ポンプから送られた高圧海水を噴射し、貝殻の表面に付いている付着生物(イガイ類、ホヤ類、海藻類等)を洗浄して、また海中に戻す一連の作業が1人で短時間に簡単に出来るものです。
  ホタテガイの付着生物量の年変化を表-1に示しましたが、平成元年度から3年度までの付着生物量はホタテガイの生産量と同じ量位上がっていました。この付着生物の種類を調べたところイガイ類が60パーセント~80パーセントを占めていました。そこで、このイガイ類を減らすことによって、雑物量全体を減らすことが出来るのではと考えたのです。

  さて、昨年度に行われた生物試験調査は、この完成された機会を使っていつの時期に貝洗浄すれば良いのか、また使う水圧はどのくらいが良いのか、ホタテガイヘの影響はどのくらいあるのかを調べるために行われました。

  試験調査は7月から10月までの月1回耳吊り養殖されているホタテガイ養殖連を洗浄しました。この時の使用水圧は5、10、15、20kg/cm2の4段階で行い、試験連は水揚げされる時期まで同じ場所に養殖されました。そして今年の1月末~2月始めに全ての試験運と貝洗浄しなかった対照連を引き揚げて、それぞれの付着生物量やホタテガイの成長について調べました。

  調査結果では、平成5年度の付着生物量は平成元年度~3年度に比べ極端に少なく約4分の1でした。貝洗浄した貝の付着生物量は、洗浄しなかった貝よりも極端に少なくなってはいませんでしたがそのうちのイガイ類の量については少なくなっていたという結果でした。

  月別、水圧別に洗浄した貝と洗浄しなかった貝の殻長、重量、軟体部重量、貝柱重量を測定して成長の差について調べました。その結果一番良かったものは9月に洗浄した水圧10~20kg/cm2を使用したものでした。

  これらのことから、この機械を使っての貝洗浄適期はイガイ類の付着盛期から約2ヵ月後で、使用水圧も10~20kg/cm2で行うのが最も効果が上がることが分かりました。

  平成5年度はイガイ類の付着も少ない年でしたので洗浄した貝としなかった貝の付着物量やホタテガイの成長に顕著な差はみられませんでしたが、イガイ類の付着の多い年には大いに期待されると思います。また、年によってはイガイ類の付着時期や付着物量、水温などが違いますので、それらを十分考慮に入れて洗浄時期や水圧調整を行うことが重要だと思います。

  最後に、噴火湾では雑物量の減量や処理方法について色々な対策、試験調査等が行われていますが、1日も早く雑物処理問題が解決されることが望まれています。
(函館水試室蘭支場水産業専門技術員)
    • 付着生物除去機によるホタテ貝洗浄