水産研究本部

試験研究は今 No.194「ホタテガイ副産物の処理・利用について」(1994年7月29日)

ホタテガイ副産物の処理・利用について

はじめに

  近年、ホタテガイの水揚量が増加するにつれ、中腸腺(ウロ)や生殖巣、えらなどの廃棄物が多量に発生し(これらを総称して「副産物」と呼びます)、産地では、処理に頭を悩ませています。現在、この問題の解決に向けて、道立の6試験研究機関(中央水産試験場、函館水産試験場、工業試験場、衛生研究所、中央農業試験場、滝川畜産試験場)が連携して取り組みを進めています。その研究の一端を紹介いたします。
ウ口中の有価物
図1
  学習機能の強化、乳ガンなどの抑制に効果のあるDHA、血中コレステロールの低下に効果のあるEPA含量を調べました。
  中腸腺100グラム中に最高でEPAが3,200ミリグラム、DHAが1,700ミリグラム存在していました(図1:函館水試)。また、このほかムコ多糖という糖の存在もみています。また、飼肥料成分として、アミノ酸組成、無機質なども調べています。
ウロ中のカドミウム
図2
  ホタテガイのウロには、15~40ppmのカドミウムがあります。春から秋にかけて増加し、秋から春にかけて減少しています(図2:工試)。ヒ素も3?10ppmあります。これら廃棄物を飼肥料として利用するには、重金属の除去が是非とも必要になります。
カドミウムの存在状態
  カドミウムはウ口中の胃内壁に局在していて主に分子量65万の糖たん白質様の物質と結合していることがわかりました。ヒ素については10数種の化学形態が確認されています。これらの毒性は低いものと考えられます。(衛研)
カドミウムの除去
図3
  ウロ中のカドミウムを除去するには、ウロを硫酸に浸してカドミウムを遊離させ、その後3回水洗を繰り返すことにより、十分飼肥料の規制値を下回ることができました(図3:工試)。実用化に向けては、廃液処理も含めたテストプラントによる経済性の確認が必要となります。
飼肥料としての利用
  中央水試ではウニ、アワビの餌料、中央農試ではレタス、大根の肥料、滝川畜試では豚の飼料として利用した場合の有効性について検討しました。

   稚ウニの中間育成用餌料では、ホタテ副産物餌料はコンブとほぼ同等の効果が認められました(図4)。アワビについても、市販配合餌料と比較して差がないという結果を得ています。
 
  レタス、大根への肥料効果では、ホタテ副産物は有機質窒素肥料(窒素利用率46%)としてかなりの効果があると推定されました。
 
  豚への利用として、配合飼料の30パーセントをホタテ副産物で代替して育成したところ、魚粉末、配合飼料に近い生育効果が認められました。また、ホタテガイ副産物の採食率、可消化エネルギーも配合飼料の94パーセント、77パーセントと比較的良好でした。
    • 図4
おわりに
  ここまで、簡単に試験概要の紹介を行ってきました。詳しい内容につきましては、いずれ別な形で報告しようと考えております。この共同研究も残された期間はあと1年あまり、より現実的な対応を打ち出せるよう今後も頑張っていきたいと思います。
(中央水試加工部 今村琢磨)