水産研究本部

試験研究は今 No.196「地域のウニ資源の増大をめざして-釧路管内水産種苗センター-」(1994年8月12日)

地域のウニ資源の増大をめざして -釧路管内水産種苗生産センター-

センター全景とセンター所属研究員
  今回の浜ウオッチングは、釧路地域のウニ資源増大を図るため、本年1月厚岸町筑紫恋に完成した「釧路管内水産種苗生産センター」を訪問し、同センターの管理責任者である三上主任研究員から色々とお話を伺いました。
最初に、この施設を整備するに至った経過について教えてください。
釧路管内でのウニの水揚げは、昭和50年の238トンをピークに減少を続け、平成3年には10トンまでに落ち込みました。この間、各漁協では地先海域での深浅移殖放流や他管内からの種苗購入による放流を行って、ウニ資源の減少に歯止めをかけようと努力していましたが十分な効果を発揮するまでに至りませんでした。その一方で近年他管内からの種苗の入手が困難になってきた背景もあって、自分達のウニ資源を増やすには地元で種苗を作るべきとの管内関係漁業者からの要請が強まりました。そこで、釧路管内1市4町7漁協が一致団結して平成5年に国の沿岸漁業構造改善事業の補助を受け、総工費約9億2,000万円かけて「釧路管内水産種苗生産センター」として平成6年1月に完成したところであります。

次に、このセンターの概要を教えてくだい。
本施設は、鉄骨平屋建てで床面積は3,753平方メートルあって、このうち育成室として2,829平方メートルを確保し、このほかに幼生飼育室が4室、餌料培養室2室、準備室、餌料植継室、検鏡室、機械室、管理室の1室で構成されています。また、設備としては一次、二次、精密ろ過器を備え、7.5トン水槽が79基あるほか、近くの海岸には取水施設及び貯水槽が整備されており、これらの設備や機器を用いてウニの種苗生産に必要不可欠なウルベラを波板で4万3,000枚作り、そして5ミリメートルサイズの種苗を年間500万粒生産して管内の各単協に供給することとしております。
    • 場内作業風景
現在の作業状況を教えてください。
今年春に、地元産の親ウニを用いて受精を4回行っており、沈着状況としては推定で約1,900万粒が生産されています。現在は、今年11月の種苗供給に向けて約1.2メートルの稚ウニを初期育成していますが、波板に付いている稚ウニの密度が1枚当たり最大で約600個から1,000個と高いため、この密度を低くするためにウルベラを増殖させ、稚ウニの付着した波板の間へ挟んでやる作業を行っています。
また、それとともに初期飼育のときには日光が水槽内に入るため、波板に付着珪藻が繁茂し、稚ウニが巻かれてしまうことから付着珪藻類を除去する作業と、密度を一定にさせるために波板を反転させたり、位置を変えたりしています。

このセンターは、何人で運営しているのですか?また、このセンターは今年から使用していますが、運営に当たって苦労されている点は何ですか?
このセンターに勤務している職員は、正職員3人、臨時職員2人の5人で、その他幼生飼育時と種苗出荷時にパート3人を雇います。
それと苦労した点と言えば、今までにこれだけ大規模な施設を運営したことがなかったので、完成からの毎日が苦労の連続だったと思います。特に、春先のプランクトンの異常発生によって、ろ過器が目づまりを起こし取水能力が低下したため、回復するまでの毎日の作業が大変だったことと、屋根及び壁の大半がポリカーボネイトで覆われているため、室温が厳冬期には氷点下となったり、夏場には30℃を超えた日もあったりで、ただでさえキツイ作業の中でどこまで体が持つか一番心配だったこともありました。
また、浮遊幼生飼育時には20基の水槽を使って一気に行ったため、正職員3人が交替で当直をしながら昼間の作業をこなすなど、気の抜けない毎日が続き、よく体が壊れなかったと思います。

最後に、今後の抱負や将来への希望がありましたらお聞かせください。
今年からこのセンターで種苗生産を始めましたが、春先の取水トラブルのため予定していた出荷時期が約1ヵ月程度遅れる見通しにあることから、来年以降は計画通りに施設を動かして種苗が出荷できるようにすることと、ここで生産された種苗が1年でも2年でも早く生産に結び付くように努力していきたいと思います。そのためには各単協毎に地先の漁場環境をキチンと把握してもらうとともに、放流後の追跡調査を行ってもらう等の協力を得て、地先漁場にあった種苗の放流サイズを検討してもらって、将来それらニーズに対応した成果の上がる種苗を生産できたらいいなと思っています。

本日はどうもありがとうございました。
(釧路水試 企画総務部主査)