水産研究本部

試験研究は今 No.197「鮭トバの改良品について」(1994年8月19日)

鮭トバの改良品について

図1
  ブナサケを原料としたトバ製品は、北海道の特産物として根強い人気を保っています。しかし、この製品は一般的に硬いため、最近の消費者からは、柔らかいタイプのものが望まれています。

  そこで、網走水産試験場紋別支場では、ソフト化に対応した製品を試作しましたので、紹介します。

  まず、一般的なトバの製造方法を図1に、市販トバの性状を表1に示しました。
それによりますと、水分(16.6~21.3パーセント)、粗タンパク質(62.5~74.9パーセント)、粗脂肪(3.8~.6パーセント)、塩分(1.2~8.8パーセント)、硬さ(368.8~1,206.5グラム)は各社で大きな差が見られました。しかし、微生物の発育指標の一つである水分活性は、各社とも、0.75以下で、普通酵母、カビ、好塩細菌の最低発育条件より低い値でした。

  これら成分、物性値の差は原料のブナ度合いや製造方法(調味、乾燥方法)の違いによると思われます。そこで、ブナ度合い別(銀毛、Aブナ、Bブナ、Cブナ)に製造したときの水分と硬さ、および硬さと脂肪含量の関係について図2,3に示しました。
    • 表1
  水分と硬さについては、水分量の減少とともに徐々に硬くなり、約20パーセント以下になると急激に硬くなることが分かりました。また、硬さと脂肪含量の関係は、ブナ度合いが進行するほど脂肪含量が少なくなり、硬さは増加する傾向がありました。これらのことから、脂肪含量の少ないブナサケを原料としたトバのソフト化には、水分を20パーセント以上にする必要があると思われます。しかし、水分が高いと保存性が劣るという問題があります。

  そこで、製造工程の乾燥途中(水分35?40パーセント)で加熱殺菌を行う改良方法を図4に示しました。

  原料は、生鮮または解凍品を使用し、これをフィレーとし、0.5倍量の5パーセント食塩水に一晩浸し、漬けておきます。翌日、水洗い、水切り後、乾燥を行います。乾燥は、低温送風乾燥機を用い、15度で行います。トバの表面が乾燥したら短冊状に切り、歩留まりが約35パーセントになるまで乾燥します。

  これをあん蒸し、整形後、真空包装します。最後に、80度で30分加熱殺菌後、冷却し、製品とします。

  この製品は従来のトバに比べて、焼き魚の香ばしい風味があり、柔らかいものとなりました。また、試作品として各イベントに出展し、高い評価が得られています。

  このソフト化されたトバの改良品をぜひ試作してみてください。
(網走水試紋別支場 木村 稔)