水産研究本部

試験研究は今 No.99「平成4年度水産試験研究事業紹介-1」(1992年3月27日)

平成4年度水産試験研究事業紹介-1

  水産試験研究機関で平成4年度から新たに開始する試験研究の内容についてご紹介します。
  今回は水産試験場についてです。

1:マナマコ資源管理技術開発試験

  マナマコは、近年のグルメブームを反映して、中華料理の食材としての乾しナマコの需用が急激に拡大し、価格も急上昇したことなどから漁獲が増大し、昭和60年には全道で2,000トンに達しましたが、その後平成元年には1,485トンにまで落ち込むなど、生産量は減少傾向にあります。

  これまでは漁業の実態、資源状況などには不明な点が多く、資源管理対策等はほとんど実施されていませんでした。

  このため、この研究は、マナマコの適正な資源管理技術を開発し、これにより資源の維持増大を図ることが目的です。

  その内容としては、全道生産量の約70%を占める宗谷、留萌両支庁管内を対象として、マナマコの漁業実態や資源状況を把握するとともに、稚仔の分布条件やその減耗・成長等の生態を解明し、これらをもとにして資源管理の技術を開発していこうとするものです。

2:磯焼け発生機構の解明と予測技術の開発

  「磯焼け」については、既に大多数の方がお聞きになったことがあるとは思いますが、「岩礁地帯で有用海藻類がほとんど枯死流失し、無節サンゴ藻で覆われ、そのために有用海藻類及び有用動物の生産量が激減する現象」をいいます。

  本道の日本海沿岸では昭和25年頃から次第に進行し、最近はその範囲が広がってきているといわれています。

  この現象の解明を図っていくためには、まずその発生のメカニズム等を究明する必要があります。

  これについては今まで「海況変化説」、「食害説」など様々な説がありますが、「これだ!」という確定的な要因については不明なのが実態です。

  このため平成4年度より、磯焼け発生のメカニズムの解明や、その発生を予測する技術の開発を図ることを目的とした様々な試験調査が、水産庁北海道区水産研究所をリーダーとし、その他の水産研究所及び日本海側の各道県の水産試験場が役割分担する形で実施されることとなりました。

  道立水産試験場は、このうち「海藻の群落の変化や、それと物理環境条件(地形、水温、波浪等)との関連から、磯焼けの発生を予測・診断する技術の開発」を担当する予定です。

  磯焼けに関する調査研究に、国や関係道県が一体となって取組みを行うことは、これまでなかった画期的なことであり、その成果が大いに期待されます。

3:染色体操作技術等の応用による養殖用ヒラメの優良品種作出試験

  本道の「魚類養殖」は、他府県に比べて非常に遅れているといわれていますが、最近は、これに積極的に取組んでいこうとの意欲を見せる地域が増えてきています。

  魚類養殖の対象として、特に商品価値の高いヒラメが注目されていますが、本道においては冬期間に水温が大幅に低下することから、育成期間が長期化したりその間に魚病が発生しやすいなどの問題を抱えています。

  そこでこの研究は、バイオテクノロジー技術を応用し、低水温でも早く成長する種苗などを作りだそうというのが目的です。

  その内容は、染色体を操作して3倍体の不妊ヒラメとし、本来成熟に向けられるエネルギーを成長に振り向け、短期間で成長する品種を開発することや、冷水性のカレイ類(オヒョウなど)との掛け合わせにより、新たな品種を作りだす可能性を探ることなどです。

  これが実用化されれば、コストの低減などが図られ、本道のヒラメ養殖業の発展に大きく寄与できるととになります。

4:前浜資源の活用技術開発試験

  全道各地の前浜ではそれぞれ特徴のある水産物が水揚げされていますが、魚種によっては、流通上の問題や原料の性質などから、これまでは利用方法に限界があり、従って魚価も低いなどの問題があります。

  とりわけ、近年著しく水揚げが増大している秋サケについては価格が非常に低迷していることから、価格を維持するために、品質が劣る「ブナザケ」をすり身原料に向けるなどの努力が行われ始めていますが、その製造技術については未確立であり、生産現場では様々な問題が生じています。

  このため、この研究は、ブナザケすり身製造技術の安定化を図るための技術を確立し、その製品の規格化、製造技術のマニュアル化や、すり身の新たな利用技術を開発することを目的としています。

  また、すり身以外の利用法として、ブナサケを原料としたポーションやペ一ストといった、新たな食品の開発にも取組む予定です。

  この他、夏に漁獲される、商品価値の低い「キアンコウ」や、大味なため用途が限られている「水力スベ」についても、付加価値を高めるための技術開発を行う予定です。(水産部)