水産研究本部

試験研究は今 No.578「科学でサケの身色を評価する!」(2006年10月6日)

はじめに

  サケの品質において最も重要視される項目は、身色です。サケは、筋肉中に含まれるカロテノイド色素(主に、アスタキサンチン)により鮮やかなサーモンカラーを呈することが知られています。サケの身色判別では、専用カラーチャート等もありますが、実際は熟練者の感覚(目視)に頼っているのが現状です。しかも、正確に身色を判別するには、一度フィレー等の形態に加工しなければなりません。現在、魚体(ラウンド)からの身色判別もブナ度合い等を指標に行われていますが、等級誤認が多く生じています。このようなことからラウンド状態で判断可能な非破壊計測技術(等級判別技術)の開発が強く望まれています。

  そのために、現在、サケ身色の科学的な判別基準(品質評価基準)の策定とそれを基にした鮭等級判別装置の開発を網走水産試験場、工業試験場、北海道大学、北海道漁業協同組合連合会、民間企業2社との共同研究として進めています。

ア)サケ身色の測定方法

平成17年9月、10月に厚田、門別、ウトロ沖で漁獲されたブナ度合い別のシロザケ60尾の脊肉部を試験に供しました。(道漁連でブナ度合いを判定)

(1)目視による官能評価
道漁連のサーモンカラーチャート(以下SCCと略す)(図1)を使用して、レッド、ピンク、ホワイトの3区分に判別しました(図2)。判別条件は、レッドはSCC値23以上、ピンクはSCC値20~22、ホワイトはSCC値20未満としました。

(2)機器分析による測定
分光測色計(図3)を使用して、計測部をフィレーに直接押し当てL*a*b*表色系により数値化しました。
    • 図1
      図1 サーモンカラーチャート
    • 図2
      図2 ホワイト、ピンク、レッド(左から)
    • 図3
      図3 分光測色計CM-2500d(コニカミノルタ製)

イ)サケ身色の測定結果

  SCC値で判別した各シロザケのa*値とb*値を図4に示しました。分析結果より、ピンクとホワイトの区分は、a*値(=8)で判別できました。レッドとピンクの区分はa*値での判別よりも、a*値とb*値からの判別分析で算出した線形判別関数を使用することにより精度良く判別できました。サケ身色の目視評価と機器分析の適合率は92パーセントと高い値でした。
    • 図4

ウ)サケ身色の非破壊計測装置の開発

  現在、工業試験場ではサケの魚体を裁割せずに身色を測定できる光ファイバプローブを利用した機械装置開発に取り組んでおります。この非破壊計測装置の開発によりサケの姿そのままで、身色の判別が可能となります。

おわりに

  シロザケの魚体(ラウンド)からの身色判別は、ブナ度合い等を指標に行われていますが、等級誤認も生じているようです。水試でも今回の試験で調査しましたがシロザケのブナ度合いと身色での相関が低いことが分かりました。

  近年、市場におけるサケの品質に関する要求は年々厳しくなっています。道産サケのブランド力を高めるため身色による品質保証を可能にする非破壊計測での等級判別システムを構築していきたいと思います。
(網走水産試験場加工利用部 秋野雅樹)

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