かご網目の大きさを変えて、大きなエビだけを獲る
えびかごの網目選択性と網目拡大による管理効果予測
中央水産試験場 資源管理部 山口浩志
研究成果の概要 : えびかご漁業の漁業収益を確保しながら資源を維持増大させる最適なえびかごの網目の大きさの候補は,9.5節(17.4mm)であることがわかりました。
背景と研究目的
背景
ホッコクアカエビの資源維持増大のためには,小さいエビを取り残すことが有効。
えびかごの網目を拡大することで,小さいエビを傷つけることなく逃がすことができる。
小さいエビを逃がすと,短機的に漁業収入が減少。
漁業者は,資源管理は大事だとはわかっているが,生活できなければ困る。
研究目的
漁業収益を確保しながらホッコクアカエビ資源を維持増大させることができる最適なえびかごの網目の大きさを求めることを目的としました。
研究成果
かごの網目の大きさを変えることによって,獲れるエビの大きさが異なってきます。試験調査船北洋丸でどの目合でどれくらいの大きさのエビが獲れるか試験を行い,得られたデータを用いて以下の解析を行いました。
ここでは,現在の使用目合10節(実測値:15.3mm)から,9.5節(17.4mm)および9節(19.1mm)に拡大した場合の漁獲量の変化,加入量あたり漁獲金額を推定し,資源量の将来予測を行いました。
漁獲量はどれくらい減るのか?
えびかごの網目を拡大すれば,小さいエビの漁獲量を大きく減らすことができますが,あまり網目を大きくしすぎると商品価値の高い大きなエビまで減ってしまいます。そこで,各銘柄の漁獲量の変化を調べました。
網目が大きくなるほど小さなエビがより獲れにくくなり,全体の漁獲量は9.5節(17.4mm)では約20%,9節(19.1mm)では約40%減少することがわかりました。
どの網目で獲るほうが最も得なのか?
単価の安い小さいエビをたくさん獲るよりも,少し待って大きく単価が高くなってから獲ったほうが,トータルでの漁獲金額は多くなる場合があります。しかし,エビは漁獲しなくても年をとれば死んでしまうので,あまり待ちすぎても損をする場合もあります。そこで,3種類の目合の中で,どの目合で獲れば利益が高くなるか比較しました。
3種類の網目の中では9.5節(17.4mm)が最も漁獲金額が多くなることがわかりました。
資源保護の効果は?
小さいエビを取り残せば資源量は現状維持もしくは増加すると考えられます。その資源保護の効果はどの程度なのでしょうか?そこで10年先までの資源量の将来予測を行いました。
現行の規制目合である10節(15.3mm)では現在の資源量を維持,9.5節(17.4mm)では過去の最高の1万2千トン,9節(19.1mm)では,資源量の最高値を更新して1万3千トンに達すると推定されました。
結論
「大幅に漁獲量を減らすことなく」,「効率良く資源を利用することができ」,「資源保護にも繋がる」目合は,9.5節(17.4mm)であることが明らかになりました。
研究成果の活用
この研究の成果は,えびかご漁業協議会で検討され,えびかごの網目拡大を検討するための判断材料となっています。
※漁業生物の資源生態調査研究(一般試験研究 平成19~21年度)
※本研究は,平成19年度に稚内水産試験場において行った調査結果に基づく成果です。
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