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留萌地区

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留萌1(小平町鬼鹿秀浦)

    • 留萌地区ニシン産卵床1(小平町鬼鹿秀浦)

留萌2(臼谷)

    • 留萌地区ニシン産卵床2(小平町臼谷~留萌市三泊)

留萌3(留萌市三泊町)

    • 留萌地区ニシン産卵床3(留萌市三泊町)

留萌4(塩見町)

    • 留萌地区ニシン産卵床4(留萌市塩見町)平成9年撮影
    • 留萌地区ニシン産卵床4(留萌市塩見町)平成14年撮影

留萌支庁管内におけるニシン産卵状況(H16)

平成16年の留萌支庁管内におけるニシン産卵状況調査を、2月17~20日、3月9~10日に実施しました。2月19日に行った焼尻島での調査結果は、焼尻地区を見ていただき、ここでははそれ以外の調査結果をお知らせします。

調査方法

2月17~18日に、増毛町3カ所(大別苅、朱分別、元阿分)、留萌市3カ所(礼受、塩見、三泊)、小平町1カ所(臼谷)の藻場で、徒歩によりニシンの産卵状況を調べました。
さらに、3月9~10日に、留萌市と小平町で、同様に調べました。産卵のあった場所ではGPSで位置を記録するとともに、過去に撮影した航空写真から、産卵範囲を推定しました。
目視で、付着卵が「濃い」、「平均的」、「薄い」の3段階に区分し、それぞれ場所で1/4平方メートル方形枠を用い、海藻(草)を2~5枠(全10枠)採集しました。採集した試料は水試に持ち帰り、海藻(草)種別に湿重量を測定し、付着卵をはずし、付着海藻(草)種ごとにその数を算出しました。そして、平均卵密度と産卵範囲から、総産卵数を推定しました。
さらに、尾叉長-よう卵数関係(高柳ら, 2003)から、来遊総個体数と総重量を推定しました。 

結果の概要

    • 留萌市塩見地区
調査の結果、3月9日に留萌市塩見地区で付着卵を確認しましたが、それ以外の場所では確認されませんでした。塩見地区でニシン付着卵が確認されたのは、平成10年以降7年連続となります。
本年は、特に産卵規模が大きく、留萌川河口近くの岩礁の藻場全体で付着卵が見られました(面積約2万5千平方メートル)。確認した限りでは、海藻(草)の分布する、水深約0.5~2メートルの範囲で産卵されていました。
採集した海藻の現存量は、1.4~3.4キログラム湿重/平方メートルの範囲にあり、平均2.2キログラム湿重/平方メートルでした。海藻現存量が大きかったのは、主にスガモ、ミヤベモク、フシスジモク、ホソバフジマツモで、これらに付着卵が多く見られました。
海藻(草)への付着卵数は、3千百~35万4千粒/平方メートルの範囲にあり、平均で16万5千粒/平方メートルでした。海域全体の総産卵数は40億7千2百万粒と推定され、平成10年以降道北日本海沿岸で観察された産卵床としては、最も産卵数の大きいものでした。
海藻種別の付着卵数は、付着卵数の多い枠順にスガモ、ミヤベモク、フシスジモク、ホソバフジマツモの順で多く、それぞれ26万8千、22万3千、14万2千、11万7千粒/平方メートルでした。一方、海藻の単位重量当たりの付着卵数では、ヘラリュウモン、アナアオサ、カヤモノリ、スガモの順で多く、藻体1グラム当たりそれぞれ500、380.6、267.8、166.1粒でした。同地に生育するリシリコンブにも、特に葉体の先端部付近に付着卵が見られ、1藻体当たり300~3,000粒、藻体1グラム当たり30~120粒付着していました。また、やや深みに多く見られた紅藻類(マクサ)で、藻体1グラム当たり約200粒付着していました。
ニシンの産卵床となった岩礁は、水深0.5メートル程度のごく浅い平磯状の所と、水深1.5~2メートル程度に落ち込む周辺部から成り、多数の溝が走っていました。
平磯状の所にはスガモが多く、その他ヘラリュウモン、カヤモノリ、ミヤベモクなどが見られました。溝の中や、やや深みには、フシスジモクやミヤベモク、マクサやホソバフジマツモ、リシリコンブなどが見られました。水中の観察では、溝の中や、やや深みに芝生状またはパッチ状に分布する海藻(特にマクサやホソバフジマツモなどの紅藻類)に、多数の卵が付着していました。
卵発生状態の観察から、産卵後2~3日経過したもので、3月6~7日に産卵があったものと推定されました。
産卵に来たニシンの平均尾叉長を27.1センチメートルとして、1個体のよう卵数は4万7千粒と計算され、産卵雌個体数が約8万6千5百個体、雄を同数として、総来遊個体数は17万3千個体と推定されました。1個体の平均重量を230グラムとして、来遊したニシンの総重量は約40トンと推定されました。 
用語解説
よう卵数:雌1尾当たりの抱(産)卵数 
引用文献
高柳志朗、石田良太郎(2003):石狩湾系ニシンの繁殖特性.北水試研報62、79-89. 

留萌5(礼受町)

    • 留萌地区ニシン産卵床5(留萌市礼受町)

45年ぶりの群来(H11年)

45年ぶりの群来

郡来汁で白く濁った留萌市礼受地区の藻場
平成11年3月18日、留萌市礼受地区から喜ばしいニュースが発信されました。それは、当日の早朝、前浜の広い範囲でニシンが群来た、というものです。
浜では地元漁業関係者や報道陣だけでなく、市民も多数駆けつけ、珍しそうに白く濁った海岸を眺めるなど、大いに沸き返っていました。 

ニシン産卵場の現状

北海道水産林務部では、平成8年から日本海ニシン資源増大対策事業を実施しており、かつてのニシン漁の賑わいをもう一度!ということで地元漁業者もその成果を期待しています。
ニシン資源の減少の背景には沿岸海況の変化、資源管理上の問題等、一要因では片づけられない多くの考えるべき事柄がありますが、近年よくいわれることは、沿岸の磯焼けの拡大や漁港周辺および沿岸道路等の開発・整備などで産卵場自体が失われつつあるのではないかということです。
ニシンは産卵のために沿岸に群来し、海藻に卵を産み付けますので、事実であるならば、それはニシン資源にとって大きな問題です。しかし、産卵藻場に関して、豊漁に沸いた昭和20年台までの過去と現在を比較できるような資料があまりない状態ではなにも言えません。

産卵藻場の調査研究

そこで、水産試験場では、水産指導所、地元市町村および漁協等の協力を得ながら、厚田・留萌両沿岸域で、
(1)(ニシンが産卵に利用できるような)藻場、大型海藻種の分布の実態を把握すること
(2)ニシンが実際にどのような海藻に卵を産み付けているのかを確かめて、産卵場としての好適環境を明らかにすること
(3)藻場造成技術の検討と試験を実施すること、
を主な目的とし、調査を進めています。その中で、今回は(2)についての調査に関して、留萌管内でこれまで得た情報・成果をお知らせします。 

ニシンはどこに卵を産んでいるのか?

実はニシンの産卵場所の調査は平成8年度から始めましたが、卵が産み付けられた場所の確認はできていませんでした。平成9年度の調査結果の検討会では「見当違いの場所を探しているのでは」「努力が足りないんでないの」など厳しい意見をもらい、平成10年は是非とも結果を出そうと決意を新たにしていました。
また、留萌港内では、ニシンの卵が付着した流れ藻が見つかったこと、稚魚ネットでニシン稚魚が数匹採集されたこと、港内に位置する留萌川河口域では、海藻群落が比較的広い範囲で見られることなどから、そこにニシンが産卵に来る確率が高いと考え、場所を絞って、産卵期の3月に港内の藻場を重点的に調査しようということになりました。 

スガモ葉体上にニシン卵を発見!

 平成10年3月17日、まずは18日予定の港内での潜水調査の下見を兼ねて、河口域の北東側に位置する港内潮見地区の岸から胴付き長靴を着用して卵探しをしてみました。
ここはスガモ群落が拡がっており、岩盤上に所々砂がついていて沖側には溝のような凹凸もあります。
間もなく海藻調査歴20年のN主任に呼ばれ、急いで駆けつけてみると、箱メガネで海中を覗いていたその人は「そこについている白っぽいの、ニシンの卵じゃないか。」といいます。半信半疑で箱メガネを奪い、海中を覗き、目を凝らすと、おお、水深僅か0.7メートルに生育するスガモの細い葉上にぽつぽつと半透明の丸いものが数個付着していて、手に取るとニシン卵のようです。周辺を探すと、ぽつぽつは広い範囲にあることがわかりました。しかし、風波もでてきたのでその日はそこで作業を中止しました。
翌18日は、潜水班と合流し、留萌南部地区水産指導所の普及員とともに留萌漁協の指導船に乗り込み、卵発見場所へ向かいました。
ニシンの卵はスガモ群落の水深0.5メートル~2メートルの広い範囲で、スガモ1株につき数粒~2000粒付着していました。
スガモ場より深い、コンブ、フシスジモクを中心とした群落には、卵はほとんど付着していませんでした。
また、留萌港外の水深1メートル前後のスガモ場でも卵が付着している場所を発見しました。
    • こんなに浅い所に産卵するなんて
    • スガモに付着したニシン卵

フシスジモク群落でも卵を発見!

3月31日に留萌南部水産技術普及指導所を通して、漁業者から、小平町の臼谷漁港付近で海藻にニシン卵らしきものがついているようだ、との情報があり、現場へ向かいました。
ここも水深が1メートル以内で、大型褐藻類ホンダワラの仲間であるフシスジモクを中心とした群落があり、岸の水深 0.5メートル地点から沖側へ約40メートル、岸沿いに100メートル以上の範囲で拡がっていました。卵は藻体1株あたり数粒~3000粒付着していました。
その後、留萌市三泊漁港付近でも小規模ながら、フシスジモク群落で卵が発見され、平成10年は留萌市~小平町臼谷の広い範囲でニシンの産卵を確認することができました。 

留萌市礼受へ急行!

平成11年3月18日の早朝、留萌市礼受の前浜が白く濁っているのを漁業者が発見、浜ではニシンが群来たのでは、と色めき立ちました。
漁業者、報道陣、見物市民で賑わうなか、たまたま打ち合わせで羽幌にいた我々も現場へ急行し、状況を確認しました。
礼受地区の岸付近はニシンの放精によって幅約1キロメートル、沖だし100メートル以上にわたって海水の色が乳白色になっていました。 また、スガモやフシスジモクなどの海草(藻)にはニシンの卵が数多く付着していました。
3月25日にニシンがどのくらいの規模で産卵をしたのかを知るために卵分布調査を行いました。ニシンの卵が確認された範囲は水深が30センチメートル~1メートル程度、群来で白く濁った所とほぼ等しいものでした。特に調査範囲とした500×100メートルに卵は多く、1平方メートルあたり平均4.3万粒、合計約216,310万粒の付着卵があると推定されました。海草(藻)の種類としては、スガモを主に、フシスジモク、スギモク、カヤモノリ等に数多く付いており、卵の付着に好適な種があることが明らかになりました。
さて、次の関心はいつ、卵がふ化するかということです。ふ化を確認するまで、我々は毎週、礼受前浜の卵を観察することにしました。卵の発達を観察しながら待つこと約1ヶ月、4月15日に夜間採集で体長1センチメートルに満たないふ化直後の仔魚を多数採集、ふ化開始が確認できました。 
    • スガモに付着したニシン卵
    • カヤモノリに付着したニシン卵

藻場分布図A

    • 留萌地区藻場分布図A

藻場分布図B

    • 留萌地区藻場分布図B

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