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アカエゾマツ

道産木材データベース


アカエゾマツ


アカエゾマツ樹形


名称 和名:アカエゾマツ
                 慣習名:テシオマツ,シコタンマツ,ヤチシンコ
                 漢字表記:赤蝦夷松
英名 Sakhalin spruce
学名 Picea glehni (Fr.Schm.)Masters
分類 マツ科トウヒ属
分布 北海道,東北(早池峰山),南千島,サハリン南部



生態・形態
温帯北部から亜寒帯にかけて分布する。北海道では北部や東部,大雪山から日高山脈にかけての山岳地に多い。寒流の影響を強く受ける根室半島では海岸線に見られ,大雪山では標高1000~1500mあたりに多い。岩手県の早池峰山(はやちねさん)にも小規模ながら隔離分布する。通常,エゾマツ,トドマツ,ダケカンバ,イタヤカエデなどと混交する。純林は湿原,蛇紋岩地帯,火山礫(れき)地,海岸砂丘などの特殊環境下でよく見られる。


林齢76年の人工林材(直径40~50cm)


高さ40m,直径1.5mに達する。樹皮は赤褐色で,ふぞろいな薄片となって波状に浮きあがり,はげ落ちる。主枝は樹幹の上部では斜上するが下部では「ハ」の字状に垂れ下がる。葉は少しわん曲して密生する。葉の横断面は四角形で,4面に白色の気孔帯をもつ。雌花は枝先に上向きに着くが,成熟とともに徐々に向きを変え球果となってぶら下がる。(エゾマツとの形態比較を「エゾマツ」の項で行っています。)
エゾマツとともに「北海道の木」に指定されているが,蓄積は,針葉樹全体の4~5%,エゾマツの3分の1程度と多くはない。環境適応性,病害抵抗性が比較的高く,苗木養成も容易なことから,北海道では高寒多雪地,湿潤地等での造林材料としてよく用いられる。春の芽だし時期が遅く,霜害地形での造林も比較的安全である。2008年現在,5~6齢級を中心に16万haほどの人工林がある。

左:樹皮中央:枝(枝先に雌花と雄花)右:葉

木材の性質
材質全般がエゾマツに似る。天然の良材は,年輪幅・晩材幅が狭く,しかも均質な材面をもつ。肌目は精とされ,上品でソフトな印象をあたえる。全体に淡黄白色で心材と辺材の境界がはっきりしない。樹脂道があるがあまり目立たない。木理は通直である。強度性能は針葉樹材としては中庸で比重の割には強めとされる。耐朽性は低めである。人工林材では,成長を促進しすぎると材の緻密(ちみつ)さゆえの特長が薄れてしまう,との指摘がある。

左:木口面中央:板目面右:柾目面

物理的・機械的・加工的性質

 上記の木材の性質に関する数値等は,(社)日本木材加工技術協会発行の「世界の有用木材300種」から引用しました。<*>内はエゾマツのデータで,同協会発行の「日本の木材」からの引用です。
木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
木材の用途はエゾマツとほぼ同じで,建築材,建具材,器具材,パルプ材など幅広く使われる。年輪幅が狭く均一で材が緻密なものは,狂いが少なく,音響性能がとりわけ優れているとされ,ピアノの響板や鍵盤,ヴァイオリンの甲板などに使われる。楽器材としての価値はエゾマツより上とされる。ただ,エゾマツ同様,天然林の蓄積は減っており良材の入手が難しくなっている。樹形が良いので庭園樹,街路樹,盆栽としての需要が多い。

アカエゾマツ材の利用

良材の柾目によるピアノ響板

               柾目の良材を用いるピアノ響板


引用(木材の性質に関する数値)

・世界の有用木材300種:農林省林業試験場木材部編 (社)日本木材加工技術協会 1975
・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・図説樹木学-針葉樹編-:矢頭献一 朝倉書店 1964
・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・平成18年度北海道林業統計:北海道水産林務部 2007
・外材と道産材-材質による比較(針葉樹材):佐藤真由美 北海道立林産試験場「林産試だより1991年5月号」
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/rsdayo/25257023001.pdf
・木の情報発信基地:中川木材株式会社http://www.wood.co.jp