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ヒバ

道産木材データベース


ヒノキアスナロ(ヒバ)



名称 別名・慣習名:ヒバ,青森ヒバ,エゾヒノキ
   漢字表記:檜翌檜,檜葉
英名 Aomori cypress
学名 Thujopsis dolabrata Sieb. et Tucc. var. hondai Makino
分類 ヒノキ科アスナロ属
分布 北海道,東北,佐渡
生態・形態
ヒノキアスナロはアスナロの変種で,日本にのみ自生する(アスナロ属は1種1変種からなり日本固有)。林業上,両者を「ヒバ」と呼ぶ。ヒノキアスナロはアスナロより分布域が北方で,渡島半島南部を北限,日光付近を南限とする。分布の中心は下北・津軽半島で,日本のヒバ総蓄積(アスナロを含む)の8割以上が集中する。下北・津軽のヒノキアスナロは「青森ヒバ」と呼ばれ,木曽ヒノキ,秋田スギとともに日本三大美林の一つに数えられる。
耐陰性が強く,暗い林内でも実生や伏状による更新を行う。
道内に自生するヒノキ科の樹種では唯一の高木。高さ30m,太さ1m近くになる。樹冠はきれいな円錐形。樹皮は紫褐色から灰褐色で,縦に浅くて長い裂け目ができ繊維状に薄くはげる。はげた樹皮は樹幹上に残る。枝はわん曲する。葉は光沢のある緑色で鱗片状。十字対生に密生する。葉の裏は白い気孔線が目立つ。
能登地方で古くから造林され,「アテ」の呼び名のあるヒバはアスナロで,球果の形状の違いなどからヒノキアスナロと区別される。
道内での蓄積は77万m3ほど。小規模ながら樹下植栽を主体に更新が図られている。


木材の性質
心材は淡黄色,辺材は黄白色で,色の差が少なく心材・辺材の境は不明瞭。通常,年輪幅が狭い。年輪内の細胞の形の違いが小さく肌目は精とされる。材の木理は通直。均質で仕上がりの良い上品な材面となり,古来高級材とされる。針葉樹のうちでは軽軟とされるが強度はある。
ヒノキチオール等の成分による独特の強い香気がある。材中に抗菌成分を持つヒノキ科樹種のうちでも特に保存性が高く,水湿に耐え耐蟻性が高い。建築土台とするのに防腐処理がいらない,総ヒバ造りの家には蚊も入らない,とまで言われる。


 木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
建築内・外装,フローリング,土木,家具,建具,器具,風呂桶,漆器木地など用途は広い。水湿に耐えることではヒノキにまさるとされ,強度が大きく保存性が高いので,土台,根太によく使われる。産地近くではヒバの柱にこだわる民家も多いと言う。古くは,松前城や中尊寺などの大建築物に使われた。橋梁材にも適した。精油は,防腐・防虫目的の食品添加物や養毛剤等の原料となる。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・図説樹木学-針葉樹編-:矢頭献一 朝倉書店 1964
・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・樹の事典 美しい森と自然の素材:朝日新聞社 1984
・(財)日本木材総合情報センター:http://www.jawic.or.jp
・道南のヒバ:滝沢忠昭 北海道立林産試験場 林産試だより 1992年3月号
    http://www..hro.or.jp/list/forest/research/fpri/rsdayo/26153008001.pdf
・外材と道産材-材質による比較(針葉樹材):佐藤真由美 北海道立林産試験場 林産試だより
1991年5月号http://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/rsdayo/25257023001.pdf
・平成18年度北海道林業統計:北海道水産林務部 2007
・東北森林管理局ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/