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イタヤカエデ

道産木材データベース


イタヤカエデ


全体


名称  和名:イタヤカエデ
    別名:エゾイタヤ,マイタヤ
    アイヌ語名:トペニ(乳(樹液)の出る木)
    漢字表記:板屋楓
    英名:Painted maple
学名  Acer mono Maxim.
分類  カエデ科カエデ属
分布  日本,サハリン,朝鮮半島,中国,アムール地方など

生態・形態
温帯の山地にごく普通に見られる落葉高木。土地をあまり選ばない。葉や果実等の形態変異が大きく,一般に複数の亜種や変種,品種に分けられる(分類法には諸説あり)。北海道に自生するイタヤカエデはエゾイタヤと変種アカイタヤ(A. mono var. mayrii Koidz.,ベニイタヤ)とするのが通説。
エゾイタヤは高さ25m,太さ1mになる。樹皮は灰色~暗灰色。若いうちは平滑だが成長につれて波状の縦じわが生じ,大径になると縦横に不規則な割れ目が入る。枝は斜上し,ごつごつとした印象の小枝が先端部に密生する。葉は十字対生する。葉の色は,新葉のころ緑黄色で夏場が濃緑色,秋には黄色となる。葉の形状は,長さ・幅が同じくらいで5~10cm,手のひら状に5つ又は7つに中(写真参照)~浅裂する。裂片は三角形。葉の基部は浅い心形(ハート形)となる。葉の縁に鋸歯は無い。果実はへん平で2個に分裂し片側に翼がつく。翼は斜めに開出し長さ3~4cm。冬芽は通常有毛。
アカイタヤの葉は,幅広で,5つに浅裂し,基部はごく浅い心形~直線状。新葉のころ赤褐色。冬芽は無毛。
「イタヤ=板屋」の名のいわれは葉が重なって茂る様子が板屋根を想像させるから,「カエデ」は葉の形が「かえるの手」に似ていることから。
道内のカエデ類の蓄積(カエデ科全体)は,広葉樹ではナラ類・カンバ類・シナ類に次いで多く,全広葉樹の8%,2千8百万m3

樹皮・樹形


枝ぶり・葉・果実


木材の性質
散孔材。重硬で粘りがある。材色は赤味を帯びた白色~淡い赤褐色。辺材・心材で色の差が少なく区別は不明瞭。年輪ははっきりしない。放射組織の色がやや濃く柾目面で筋模様となる。肌目はやや精。緻密で絹のような光沢があり磨くとより光る。小鳥の眼を散りばめたような鳥眼杢(ちょうがんもく)や大きなうねりの波状杢など特殊な杢がしばしば現れる。褐色のピスフレック(害虫の穿孔跡)が縦断面で目立つことがある。
アカイタヤはエゾイタヤと比べて赤みがやや濃く強度性能において少々劣る点があるとの指摘もあるが,流通上,マイタヤとしてエゾイタヤと同様に扱われる。
属名 Acer は「硬い」の意。

各種性質,三断面


木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
硬くて傷がつきにくく衝撃に強いので体育館の床や学童用のいす・机,スキー板,ボーリングのピン等の運動具,器具の柄によく使われる。
特有の振動性能から楽器材としての価値が高く,ピアノのアクション機構や響板を支える木枠,ヴァイオリン・ギターの裏板などに使われる。
白さや光沢が好まれ家具・内装材とされる。平成20年に行われた北海道洞爺湖サミットでは,G8円卓会議用のテーブルといすが檜山産のイタヤカエデで作られた。
杢は工芸的に珍重される。粘りがあり割れにくいので曲木に適する。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・外材と道産材-材質による比較(広葉樹・散孔材):佐藤真由美 北海道立林産試験場 林産試だより 1992年7月号
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・平成19年度北海道林業統計:北海道水産林務部 2008