森林研究本部へ

林産試験場

ハルニレ・オヒョウ

道産木材データベース


ハルニレ・オヒョウ


ハルニレ


名称  和名:ハルニレ
    別名:ニレ,アカダモ
    アイヌ語名:チキサニ chi-kisa-ni (我ら・こする(発火に使う)・木)など
    漢字表記:春楡
    英名:Japanese elm
学名  Ulmus davidiana Planchon var. japonica (Rehder)Nakai
分類  ニレ科ニレ属
分布  北海道,本州,四国,九州,千島,サハリン,朝鮮半島,中国

名称  和名:オヒョウ
    別名:オヒョウニレ
    アイヌ語名:アツニ at-ni(at(樹皮及び内皮から取った繊維)を取る木)など。
          樺太東海岸のアイヌはこの樹皮をオピウ(opiw)と呼び,オヒョウの名は
          ここから出た。
学名  Ulmus laciniata(Trautv.) Mayr
分類  ニレ科ニレ属
分布  北海道,本州,四国,九州,サハリン,朝鮮半島,中国,東シベリア,カムチャッカ
生態・形態
ハルニレは平地の適潤からやや湿った肥沃地に生える落葉樹。高さ30m,太さ1.5mに達する。樹皮は暗褐色で縦にやや深い割れ目があり,枝にコルク層が発達することがある(コブニレと呼ばれる)。葉は互生し全体に左右非対称の倒卵形から倒卵楕円形で先は急に鋭くとがり,二重鋸歯縁,基部はくさび形。
花は花弁がなく4~5月,葉に先だって咲き,赤褐色。翼果は6月に熟し,倒卵形,扁平,無毛,翼は膜質で先が凹み,種子はその中央部にある。

オヒョウは山地に生える落葉樹。高さ25m,太さ1mに達する。樹皮は灰褐色,縦に浅裂し下側からめくれるようにはがれてくる。皮層は繊維質で長い裂片になってはげる。葉は互生しハルニレ同様左右非対称の倒広卵形から長楕円形で上部は浅く3~9裂または分裂せず先は急に鋭くとがり、二重鋸歯縁,基部は鈍形ないしくさび形。花はハルニレと同様だが,淡黄色。翼果は6月に熟し,円形または広楕円形,扁平,無毛,翼は膜質で先に花柱裂片が残り,種子はその中央やや下にある。

この2種は北海道の高木では開花,結実がもっとも早く,時によってはヤチダモが開葉する前に翼果が落ちてくる。
2種合わせると広葉樹の中では北海道で6番目に蓄積が多く,総蓄積の1.3%,広葉樹の2.7%を占める。

ハルニレ樹皮,葉,花,オヒョウ樹皮,葉,花


木材の性質
ハルニレは環孔材,やや重硬。辺心材の境界は明瞭。辺材は灰褐色,心材は暗褐色。年輪は明瞭。木理は概ね通直。肌目は疎。
オヒョウは材質は類似するが,辺材は淡黄褐色,心材は淡紅色。

木材の三断面


性質一覧

木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
ハルニレは器具材,家具材,太鼓の胴などに使われるが,ケヤキの代用とされることが多い。こぶを持つ材が銘木として珍重されることがある。割れにくいことから臼,杵に使われる。
オヒョウはハルニレ同様に使われるが,家具材としてはより上質とされる。曲木に適する。アイヌは内皮から繊維を取り,衣服の主要な原料とした。織ったものをアツシ(厚司)という。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・平成19年度 北海道林業統計:北海道水産林務部 2008
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・木の事典第1集第4巻:平井信二 かなえ書房 1980
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976