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森とみどりのQ&A(環境保全・防災林)

森とみどりのQ&A(環境保全・防災林)
環境保全/防災林

Q1.林帯によって騒音を緩和できるか?

Q2.養豚場の悪臭を樹林帯で防止できないか?

Q3.家畜糞尿堆積地の遮蔽緑化はできるか?

Q4.糞尿堆積地跡にアカエゾマツを植栽したが枯損したので、土壌を改良する良い方法はないか?

Q5.ドロノキ、オオバヤナギの生育地は?

Q6.ドロノキ、ケショウヤナギ、オオバヤナギの種子散布時期は?

Q7.オオバヤナギとバッコヤナギの違いは?

Q8.タチヤナギとエゾヤナギの見分け方は?

Q9.ヤナギの耐水性

Q10.シダレヤナギの挿し木方法

Q11.湿地への直ざしに適した樹種は?

Q12.溪畔に適する樹種は?

Q13.オヒョウの樹種特性、育苗方法は?

Q14.よい河畔林とは?

Q15.道内に生育する樹木で、大気汚染(SOx、NOx)の指標になる樹種を知りたい。

Q16.カラマツ以外で、耕地防風林に適した樹種は?

Q17.防風林に広葉樹を植えたいが、シラカンバ以外ではどんな樹種がよいか?

Q18.針葉樹の防風林は広葉樹の防風林より落葉量が少ないように思えるが、事実か?

Q19.クロマツ海岸林を造成する際に肥料木も植える必要があるでしょうか?

Q20.波がかぶるようなところに海岸林が造成されていて,枯れているようですが?

Q21.ニセアカシアは侵略的外来種だといわれますが、何が問題なのでしょう?

Q1.林帯によって騒音を緩和できるか?
A1.防音機能を林帯が発揮するには、少なくとも林帯の幅は20m以上は必要です。樹種は、特に限定する必要はありませんが、年間を通して効果を期待するなら常緑樹が良いでしょう。

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Q2.養豚場の悪臭を樹林帯で防止できないか?
A2.樹林帯を造成し養豚場を見えなくすることによって、精神的に受ける効果は考えられますが、特に顕著な防臭効果は期待できません。

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Q3.家畜糞尿堆積地の遮蔽緑化はできるか?
A3.糞尿の集積地付近に直接植栽できる樹木・果樹は見あたりませんが、側溝などを設けて糞尿や排出液が根系に触れないようにすれば、植栽が可能です。

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Q4.糞尿堆積地跡にアカエゾマツを植栽したが枯損した。土壌を改良する良い方法はないか?
A4.深土耕転、客土、排水溝を掘り放置して窒素成分を減少させるなどが考えられます。

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Q5.ドロノキ、オオバヤナギの生育地は?
A5.どちらも全道的に分布し、玉石がごろごろあるような河畔砂礫地に生えます(河川の上~中流,扇状地)。オオバヤナギは河畔のみですが、ドロノキは火山山麓(有珠山など)にも生育します。

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Q6.ドロノキ、ケショウヤナギ、オオバヤナギの種子散布時期は?
A6.ドロノキは7月上旬~8月、ケショウヤナギは7月上旬で、種子散布期間は1~2週間と短いため、時期を逸しないよう注意が必要です。オオバヤナギは地域による個体差があり、大体8上旬~9月下旬です。1本の木が8月~10月と長期間に少しずつ散布することが多いです。

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Q7.オオバヤナギとバッコヤナギの違いは?
A7.オオバヤナギは砂礫の多い河岸に、バッコヤナギは堤防や山腹法面など比較的乾燥地に生育します。葉はどちらも長だ円形で似ていますが、オオバヤナギは先が尾状にとがり、成葉には毛がほとんどありません。バッコヤナギは葉裏に毛が密生します。冬芽はバッコヤナギでは卵形で大きく、オオバヤナギはアヒルのくちばし状につぶれます。バッコヤナギの果(花)穂、葉は上にのびますが、オオバヤナギでは垂れ下がります。寿命はバッコヤナギは約50年、オオバヤナギは100年前後です。直径1m近い大木になり、まな板に重用されるのはオオバヤナギです。

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Q8.タチヤナギとエゾヤナギの見分け方は?
A8.エゾヤナギは心臓形の托葉が目立ち、葉は紙質でやや薄く、先が尾状にとがります。タチヤナギには托葉はなく、若葉は褐色を帯びます。エゾヤナギは河川の中~上流の砂礫質の河原に生育し、タチヤナギは下流域や沼地など水はけの悪い場所に生育します。タチヤナギは低木で、株立ちする場合が多いですが、エゾヤナギは直径50cm以上の大木になります。

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Q9.ヤナギの耐水性
A9.川沿いに生えるヤナギは10種類程あり、葉の細長いヤナギは耐水性が強く、融雪時期の2ヶ月間の水没にも耐えます。挿し木や編柵に使用するのはこのタイプのヤナギです。葉の丸いエゾノバッコヤナギ、オオバヤナギ、ドロノキ(ドロヤナギ)は水没には弱く、バッコヤナギ、オオバヤナギは挿し木ができません。

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Q10.シダレヤナギの挿し木方法
A10.なるべく元気のよい若枝(1~3年位)を選び、20cm程度の長さに切って、現地あるいは挿し床に挿し木にします。挿しつけ時期は成長のとまった秋、芽吹き前の春がよいでしょう。挿し床が乾燥したり、枝が浮いたりしないように注意します。地上に見える部分は2cm程度でよいです。長さ1m程の枝(幹)を先端部のみ地上に出して斜めに埋める方法(埋幹)もあります。

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Q11.湿地への直ざしに適した樹種は?
A11.タチヤナギ、イヌコリヤナギ、ナガバヤナギなど水はけの悪い場所にも強いヤナギを使用します。挿し木でなく苗の植栽ならば、ハンノキ(河岸ならばケヤマハンノキ)、ヤチダモなども利用できます。ドロノキ、ハルニレは河畔性の樹種ですが、湿地のように水が停滞する場所には向きません。

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Q12.溪畔に適する樹種は?
A12.立地条件(水に浸る頻度や期間,排水性)と樹種の耐水性を考慮して、樹種を選定します。毎年融雪で冠水するような場所には、ヤナギ類、ハンノキ類を利用します。年に数回程度の冠水ならば、ヤチダモ、ハルニレ、オニグルミ、サワグルミ(道南のみ)なども利用できます。水はけの良い溪畔斜面にはカツラ、オヒョウ、シウリザクラ、イタヤカエデ、トチノキ(道南)などを利用するとよいでしょう。

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Q13.オヒョウの樹種特性、育苗方法は?
A13.ハルニレによく似ており溪畔に混生することもありますが、オヒョウは冠水(特に停滞水)には弱いです。このため水はけのよい溪畔や湿性斜面に適します。種子はハルニレよりも休眠性が強いため、普通に播くと発芽が1年遅れることがあります。播種年に発芽させるためには2週間程度の低温湿層処理が有効です。当年発芽(6月中~下旬)苗は、苗畑では秋までに20cm程度に成長し、25本/m2程度に床替えすれば、2年目には50~80cmになります。滞水に弱いため、冬期の仮植場の水はけには注意しましょう。

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Q14.よい河畔林とは?
A14.何をよいとするかが難しいが、生物的な豊かさを指標にするならば、様々な樹種、樹齢の樹木が、河畔に広く共存していることがよいと考えられます。このためには、川が自然の姿で氾濫などが起こり、様々な地形、立地環境が繰り返し形成される必要があります。川の生き物への影響面からみると、サケ科魚類など冷温性の魚にとっては水温上昇を防いだり、隠れ場をつくるための河畔林が重要であり、落葉などの有機物を餌とする水生昆虫や、昆虫類を食べる魚にとっても、餌を供給する樹木が川沿いに生育することが必要です。このような面から、水辺に張り出すヤナギやケヤマハンノキに加え、その背後にはヤチダモやハルニレ、オニグルミ、カツラ、など多様な溪畔性樹種の大木が生えるような林が理想的です。大木は鳥獣の生息にも重要です。

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Q15.道内に生育する樹木で、大気汚染(SOx、NOx)の指標になる樹種を知りたい。
A15.指標植物とは、ある特定の環境条件に対しとくに敏感な植物を指します。
 イオウ酸化物(SOx)は亜硫酸ガス(SO2)、SO3などイオウを燃焼してできる物質の総称です。大部分は二酸化イオウです。鉱石の製錬所、重油を燃料とする火力発電所・ビルの暖房などが発生源です。脱硫装置の設置や低イオウ燃料の使用により減少可能です。
窒素酸化物(NOx)は一酸化窒素や二酸化窒素など、空気中の窒素が酸化されて発生します。自動車の排気ガス、工場・ビル暖房の排煙中に含まれるものが主体です。通常大気中で樹木の成長に影響するほどの高濃度にはならず、むしろ光化学スモッグの発生源として問題となります。
 以上から大気汚染の指標として、おもに亜硫酸ガス(SO2)を接触させ樹木の反応(葉斑形成,葉の変色・萎縮,落葉,枝幹剥被など)のしかたにより感受性を求めています。これまでの調査から、ストローブマツ、カラマツなどの針葉樹は感受性が高く、また広葉樹のうち果樹類(リンゴ、ナシなど)は感受性が高いことがわかっています。そのほか指標植物として利用が可能な樹種はドロノキ、ケヤキ、ヤチダモなどがあげられます。
 反対に、遮断緑地への植栽には耐性や葉中のイオウ蓄積能の高い樹種がよく、ニセアカシア、シダレヤナギ、プラタナスなどが適当です。

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Q16.カラマツ以外で、耕地防風林に適した樹種は? 特に広葉樹では?
A16.耕地防風林に適する樹種の条件として,移植・活着が容易、成長が早い、枝葉が密生する、耐風性が高い、苗木の入手が容易等があげられます。広葉樹の場合着葉期間が限られており、いつ防風効果を必要とするかも樹種選択の要件となります。十勝など道東の畑作地帯では春先の播種、移植時期に効果が期待され、特に、幅の狭い耕地防風林ではできるだけ常緑樹針葉樹か開葉時期の早い樹種が選択の要件となります。これらの要件を満たす樹種として、常緑樹ではトドマツ、アカエゾマツなどの郷土種やヨーロッパトウヒなど、広葉樹ではシラカンバ、ハンノキ類、ヤナギ類などがあげられます。

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Q17.防風林に広葉樹を植えたい。シラカンバ以外ではどんな樹種がよいか?
A17.開葉の早さや成長、苗木の入手のしやすさを考慮するとシラカンバがもっとも適当です。他に開葉の早い樹種としては、ケヤマハンノキ、ハンノキ等のハンノキ類、エゾヤマザクラ、ナナカマドなどがあげられるがハンノキ類以外は補完的に他の樹種との組み合わせで用います。開葉がやや遅いハルニレ、ヤチダモ、カシワなどは列数が少ないと春先の防風効果が劣るが、常緑樹や開葉の早い樹種と組み合わせたり、林帯幅が確保できる場合にはよいでしょう。

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Q18.針葉樹の防風林は広葉樹の防風林より落葉量が少ないように思えるが、事実か?
A18.常緑針葉樹は広葉樹林よりも落葉量が少ないように思われますが、ヨーロッパトウヒは広葉樹のシラカンバや落葉針葉樹のカラマツなどよりも年間の落葉量は多くなっています。ヨーロッパトウヒ、カラマツ、シラカンバ、ヤチダモ4種の防風林で年間の落葉量を調べた例では、ヤチダモ>トウヒ>カラマツ>シラカンバの順になりました。ヤチダモとシラカンバは9月から10月にかけ、またカラマツは10月から11月にかけて集中して落葉します。一方、トウヒは夏から秋にかけてやや多く落葉しますが、集中して落葉しないため、広葉樹に比べ落葉量が少ないと思われる原因となっています。トウヒと同じ仲間のアカエゾマツはトウヒと同様の落葉パターンを示すと思われ、1年を通して葉の一部を付け替えています。葉の寿命は最大で8~9年であるが、成木の葉の回転期間(全葉量/当年葉量)は約4.8年です。

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Q19.クロマツ海岸林を造成する際に肥料木も植える必要があるでしょうか?
A19.肥料木は必要ありません。もともとクロマツは貧栄養土壌に適応した樹種で,肥料分をほとんど必要としません。これは、根で菌根菌と共生して効率良く土壌中の栄養を吸収しているためです。栄養条件が良くなると,かえって菌根菌との共生関係が崩れてしまうという報告があります。ちなみに道外では,それにより松枯れ病に対する抵抗性が低下しているのではないかと考えている研究者もいます。

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Q20.波がかぶるようなところに海岸林が造成されていて,枯れているようですが,植えるところが悪いのでは?
A20.現在,北海道のみならず,日本の至るところで砂浜が浸食されてなくなっています。多くの場合,漁港の建設による沿岸漂砂の遮断,河川でのダム設置や浚渫による海への土砂供給量の減少によるものです。波をかぶっているような海岸林は,もともとは汀線よりもずっと内陸にありましたが,海岸浸食によって波をかぶるようになってしまいました。今後,海岸林の管理は,河川や港湾の管理と一緒に考える必要もあるでしょう。

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Q21.ニセアカシアは侵略的外来種だといわれますが、何が問題なのでしょう?
A21.じつは調査事例がほとんどないために,良く分かっていないのが現状です。本州の,希少植物が生育しているような河川敷で繁茂するようになってから,大きな関心が払われるようになってきました。しかし,北海道で調査された事例では,林内に多様な在来植物が生育していることが報告されています。今一度,しっかりと調査して問題の真偽を確認しなくてはなりません。

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