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林業試験場

森とみどりのQ&A(病虫獣害・病害)

 

病虫獣害/病害

Q1.いったん、芽吹いたサクラの枝が夏までに枯れてしまったが、病気だろうか?

Q2.サクラのてんぐ巣病について、サクラの品種とかかりやすさ・感染経路・病原菌の種類・被害木の防除方法を知りたい。

Q3.サクラの枝にたくさんこぶがついて徐々に枯れてくるが、どういう病気か?

Q4.街路樹のナナカマドの太い枝や幹が枯れるが、原因は?

Q5.ハマナスの葉の色が悪くなり、葉の裏にオレンジ色の粉がついているが、病気か?

Q6.サツキの葉にこぶができているが、原因は何か?

Q7.イチイ(オンコ)の葉が、ススがついたように黒く汚くなっているが、原因と対策を知りたい。

Q8.プンゲンストウヒの葉が赤くなって落葉するが、原因と対策を知りたい。

Q9.二葉マツ類(アカマツ、クロマツなど)の枝が枯れるが、原因は?

Q10.シンパク(ミヤマビャクシン)の枝が枯れ込むが、原因は?

Q11.トドマツの葉が「すす」がついたように黒くなっているが、どうしてか?

Q12.バラに発生したさび病を防除する薬剤は?

Q13.カラマツ落葉病の対策を知りたい。

Q14.ミズキの枝の切り口からオレンジ色のものが大量に流れ出ており気味が悪いが、これは一体何でしょう。

Q15.ツツジに薄い緑色のコケがびっしり着き、弱って枝が枯れ込んできますが、何か良い防除法はないでしょうか。

Q16.リンゴ赤星病の予防のため、近くにヒノキ科のビャクシン属の木(シンパクやカイヅカイブキ)を植えてはいけないが、ビャクシン属以外ならヒノキ科の樹木を植えてもいいのでしょうか。

Q17.海岸に自生しているハマナスが衰弱して枯れてくるが病気でしょうか。

Q18.自宅(道南地方)に植栽しているヤクシマシャクナゲ(樹高約1.2m)の枝や幹が黒くなっています。

Q19.公園の藤棚のフジに「こぶ」がたくさんついているが、病気でしょうか。(道南地方)

Q20.街路樹のプラタナスの葉が枯れ、小枝も枯れてきますが、原因は何でしょう。

Q21.スギ幼齢造林地で枝枯れ被害が発生しているので原因を調べてほしい(道南地方)。

Q22.公園に植栽されたセイヨウブナに葉枯れ、枝枯れが目立つのですが原因は?

Q23.港のそばに植栽されているハマナスが全体的に黒っぽくなり、衰弱して枯れてきていますが、原因は?

Q24.1.モンタナマツの枝にこぶがついて枝が枯れました。
2.アカマツの枝にできた「こぶ」からオレンジ色の粉が吹きだしてきました。原因を教えてください。

Q25.実生苗ではなく挿し木苗でヒバの植林を進めているが、挿し穂の切り口から腐朽菌が侵入して、将来褐色腐朽になることはないでしょうか。

Q26.トドマツ人工林で、ほとんどの幹にスポンジ状で焦げたような黒い斑点が無数に付着していましたが、これは何でしょうか。

Q27.道南地方で養成している1~2mのプンゲンストウヒに先枯れ、落葉症状がみられます。

Q28.庭木のゴヨウマツの枝先が枯れるが、原因は?

Q29.スギ幼齢造林地で多くのスギに胴枯れ症状が見られるが、原因は?

Q30.カシワ林の中で1本(直径64cm)だけ樹冠全体の葉がまだら状に変色していますが、原因は?

Q31.石灰硫黄合剤について教えてください。

Q32.3年前に購入したプルーンの葉が黄変して枯死しましたが、枯死原因は?

Q33.アカエゾマツの一部の葉が黄変し、葉には小さくて白い袋状のものがついていますが、何でしょう。

Q34.道央のアカエゾマツ造林地(4年生)で、枯れた針葉には菌糸がからみついていますが、暗色雪腐病ではないでしょうか?

Q35.ジャイアントセコイアの新梢先端部が萎凋、褐変枯死します。

Q36.シャクナゲ(ニッコウシャクナゲ)の葉先が枯れてきました。

Q37.チシマザクラ苗木の枝に黒っぽいこぶ状のふくらみがいくつもみられます。

Q38.天然老木、若い庭木を問わず、イチイの新葉に黒点が生じ、新梢は触れると簡単に落ちてしまうが何でしょう。

Q39.木酢液に殺菌力はあるのでしょうか?

Q40.ヒバ当年植栽木の枯れが目立ちます。

Q41.庭木のクロマツの枝先がたくさん枯れて元気がありません。

Q42.アカエゾマツ苗木の異常原因について

Q43.漁協所有のミズナラ林、町有カシワ林で枝枯れが目立ちますが原因は。

Q44.ソメイヨシノにサクラてんぐ巣病が激発したため断幹しましたが、萌芽枝にもてんぐ巣病が発生してきました。

Q45.スギ幼齢造林地(林齢3年)の被害原因について

Q46.8年生トドマツ造林地でてんぐ巣病と思われる被害が1割程度発生しています。

Q47.イチイに白い「こけ」のようなものがついて衰弱しています。

Q48.サルオガセで木は枯れますか?

Q1.いったん、芽吹いたサクラの枝が夏までに枯れてしまった。病気だろうか?

A1.おそらく、「胴枯病」でしょう。この病気は北海道のサクラの大敵で、各地のサクラの衰退の原因になっています。患部はやや陥没してヤニを生じ、やがて多数の小隆起(病原菌の菌体)が現れます(写真)。
 枯れた枝は病斑を残さないよう健全部を含めて切り取り、切り口には有機銅塗布剤(バッチレート)またはチオファネートメチルペースト剤(トップジンMペースト)を塗っておくとよいでしょう。
 

胴枯病

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Q2.サクラのてんぐ巣病について、サクラの品種とかかりやすさ・感染経路・病原菌の種類・被害木の防除方法を知りたい。

A2.サクラの品種とかかりやすさ・感染経路・病原菌の種類
サクラの種類や品種間で著しい発生程度の差異があります。ソメイヨシノやコヒガンザクラなどは極めて弱く、病樹の退廃が著しいです。病原菌の菌糸は、病枝や冬芽の中で越冬します。病枝の葉は小型化し、開葉後まもなくその裏面に白い粉(胞子)を生じてやがて黒変・萎縮します。この胞子が飛散して新たに感染するほか、枝および冬芽の表面に付着して越冬した胞子も伝染源になります。病原菌はタフリナ菌という糸状菌の一種で、子のう菌類に属します。
・被害木の見分け方・防除時期
 「てんぐ巣病」にかかると、枝が異常に多く分岐して鳥の巣状やほうき状になり、花をつけず(写真)、やがて枯れてしまいます。病枝につく葉は小型で、こうした「てんぐ巣」症状を示す枝の基部はこぶ状にややふくらんでいます。防除は、冬季~早春に行います。芽が開く前に病枝基部のふくれた部分(ここに病原菌が生息する)を含めて病枝を切り取り、切り口に殺菌・癒合促進効果のあるチオファネートメチルペースト剤(トップジンMペースト)を塗ります。切り取った病枝は感染源となるので、サクラの周辺に放置せずにゴミとして処分する必要があります。本病は苗木や幼齢木から発病し、病巣は年々大きくなります。防除の手間および病樹の負担を少なくするためには、病巣が小さいうちにこまめに防除するのがよいでしょう。
 

てんぐ巣病

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Q3.サクラの枝にたくさんこぶがついて徐々に枯れてくるが、どういう病気か?

A3.「こぶ病」と思われます(写真)。「胴枯病」のようにすぐには枯れませんが、こぶがたくさんつくと枝が枯れ込んでくるため、この病気は北海道のサクラの衰退の原因の一つになっています。病原は細菌の一種であることがわかっていますが、病気の生態や効果的な防除法はわかっていません。こぶがついた枝が少ない場合は枝を切り取って焼却するとよいでしょう。しかし、全体の枝にこぶがつくことも多く、この場合は枝を切り取るわけにもいきません。「こぶ病」にかかっていても、木が衰弱枯死するまでには、まだかなりの期間花を楽しめるので、あせって伐採する必要はないでしょう。
 一般に、サクラを新植する場合は、苗木の時点で「こぶ病」や「胴枯病」に罹病していないかどうか確かめることが大切です。

こぶ病

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Q4.街路樹のナナカマドの太い枝や幹が枯れる。原因は?

A4.「レウコストマ胴枯病」ではないでしょうか。本病の場合、患部の樹皮が黒変し、樹皮上には多数の白点(病原菌の菌体の一部)が現れるのが特徴です(写真)。白点部分からは、やがてチョコレート色の粘塊(病原菌の胞子の塊)が噴出してきます。この病気は、北海道ではナナカマドの衰退原因の一つになっていますが、通常、健全なナナカマドには発生しません。
 対策としては、植栽環境を整えて、健全な発育を促すことが必要です。また、枯れ枝は発見次第切除し、切り口にはチオファネートメチルペースト剤(トップジンMペースト)を塗るとよいでしょう。

レウコストマ胴枯病

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Q5.ハマナスの葉の色が悪くなり、葉の裏にオレンジ色の粉がついている。病気か?

A5.「さび病」と思われます。葉のほかに、葉柄、果実、伸長中の当年枝にも発生し、いずれも患部からはオレンジ色の粉(病原菌の胞子)が吹き出します(写真)。秋になるとオレンジ色の胞子は消失し、患部はチョコレート色の粉(病原菌の別の胞子)で覆われます。「さび病」は、ハマナスにふつうに発生しますが、枝や株を枯らすことはありませんので放置しておいても大丈夫でしょう。ただ、毎年、激しく発生するようであれば、株が衰弱する可能性があります。
 チョコレート色の胞子を形成した罹病葉が翌年の感染原になるので、病落葉をていねいに集めて焼却すれば翌年の発生は減るでしょう。
 本病防除のための登録薬剤はありませんが、類似病害であるバラ類さび病の登録薬剤としては、マンゼブ水和剤(ジマンダイセン水和剤)、トリアジメホン乳剤(バイレトン乳剤)があります。

さび病

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Q6.サツキの葉にこぶができているが、原因は何か?
A6.ツツジ類「もち病」と思われます。

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Q7.イチイ(オンコ)の葉が、ススがついたように黒く汚くなっているが、原因と対策を知りたい。
A7.「すす病」と思われます。葉についているススのようなものは黒いカビです。このカビは、イチイに寄生したカイガラムシの排泄物を栄養源にして繁殖しているだけで、イチイに直接、害を与えるわけではありません。カイガラムシを防除すると発生しなくなるでしょう。

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Q8.プンゲンストウヒの葉が赤くなって落葉する。原因と対策を知りたい。

A8.「かさぶた状葉さび病」ではないでしょうか。この病気の場合、罹病した当年葉には、夏~秋にレモン色の退色部が形成され人目を引きます。翌春、プンゲンストウヒが芽吹く頃、黄変した罹病葉の葉裏には橙黄色の隆起(病原菌の菌体)が現れ(写真)、胞子を飛散させたのち落葉します。トウヒ類のなかでも、プンゲンストウヒはこの病気にかかりやすい樹種ですが、罹病の個体差が大きいように見受けられます。激害木は、着葉量が少なくなり、樹形も損なわれてやがて枯死するので、感染源を減らすためにも早期に伐倒除去した方がよいでしょう。
 本病防除のための登録薬剤はありませんが、同じ針葉樹であるビャクシン類のさび病防除にはメプロニル水和剤(バシタック水和剤 75)が登録されています。

かさぶた状葉さび病""

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Q9.二葉マツ類(アカマツ、クロマツなど)の枝が枯れるが、原因は?

A9.「皮目枝枯病」かもしれません。この病気の場合、7~8月になると、枯死枝には肉眼でも容易に観察できる褐色の菌体が多数群生して現れます(写真)。本病はふつう衰弱したマツ類に発生して枝枯れや枯死を招きますが、健全に生育している木には発生しません。乾燥ストレスや根の成長不良などが発生誘因になるので、マツ類の植栽環境を整えて、健全に生育させることが本病発生防止につながるでしょう。なお,枯死枝上に形成される菌体が新たな感染源になるので、枯死枝は早めに切除した方がよいでしょう。
 

皮目枝枯病

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Q10.シンパク(ミヤマビャクシン)の枝が枯れ込むが、原因は?

A10.5~6月にシンパクの枝が枯れる原因の一つに「さび病」があります。枯れ枝上に形成される病原菌の菌体は、水分を吸収すると橙黄色、ゼラチン状に大きくふくらむので、診断は容易です(写真)。
 ところで、シンパクの近くにナシ、ボケ、ナナカマド、リンゴ、ズミなどのバラ科樹木が植えられていないでしょうか?これらの樹木に「赤星病」を起こす病原菌がシンパク当年生針葉に感染し、約半年の潜伏期を経て「さび病」を起こします。
 対策としては、シンパク類とバラ科樹木の混植を避け、感染源を除去するためシンパクの枯れ枝を早春に切除するとともに、初夏からバラ科樹木に発生する「赤星病」の病葉を発生初期に摘み取るとよいでしょう。
 ビャクシン類さび病の登録薬剤には、メプロニル水和剤(バシタック水和剤 75)と石灰硫黄合剤があります。

さび病

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Q11.トドマツの葉が「すす」がついたように黒くなっているが、どうしてか?
A11.「すす病」と思われます。トドマツの葉に付着したアブラムシの排泄物上に黒いカビが繁殖したもので、外見は見苦しいですが、トドマツに直接害を与えるわけではありません。トドマツに寄生するアブラムシを防除すると「すす病」も減ります。

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Q12.バラに発生したさび病を防除する薬剤は?
A12.バラ類さび病の登録薬剤には、マンゼブ水和剤(ジマンダイセン水和剤)とトリアジメホン乳剤(バイレトン乳剤)があります。

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Q13.カラマツ落葉病の対策を知りたい。
A13.カラマツ落葉病は、リン酸、カリ、硝酸態窒素が少ない土壌、落葉の分解が遅く、Ao層の厚い林地で被害が多くなる傾向があります。病落葉が翌年の感染源になりますが、林地での薬剤防除は現実的ではありません。適期の除間伐は、落葉の分解を促進するとともに、土壌に養分を供給してくれる落葉樹の侵入・成長を助けるので被害軽減が期待できます。なお、本病が毎年激発すると成長減退を招く可能性がありますが、それ以外の被害程度であれば、特に対策を講ずる必要はないと思われます。

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Q14.ミズキの枝の切り口からオレンジ色のものが大量に流れ出ており気味が悪い。全体に厚ぼったく表面はでこぼこしている。これは一体何でしょう。

A14.これはミズキの樹液に菌が繁殖したものです(写真)。春先は樹液の流動が活発で、広葉樹では枝や幹に新しい傷があるとそこから樹液が漏れ出します。樹液は養分が豊富なのですぐに菌(カビや酵母)が繁殖しますが、中には赤っぽい色素を出す菌がおり、樹液の流れた部分がオレンジ色の物体で覆われたように見えます。サンプルを顕微鏡で観察したところ、オレンジ色の物体は酵母ではなくカビの一種であるフザリウム(Fusarium)菌の菌体であることが確認されました。この菌も樹液でよく繁殖し、オレンジ色の色素を出すことが知られています。ミズキはその名のとおり樹液が多く春先には傷口から大量の樹液が流下するので、こうした現象はほかの樹種より目につきやすいと思われます。なお、樹液で繁殖した菌が樹木に悪影響を及ぼすことはありません。

カビの一種

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Q15.ツツジに薄い緑色のコケがびっしり着き、弱って枝が枯れ込んできます。何か良い防除法はないでしょうか。

A15.ツツジに着いているのは普通のコケ(蘚苔類)ではなく、地衣類だと思われます(写真)。地衣類は菌類がその体の中に藻類を取り込んだ複合体で、菌類は藻類にすみかと水分やミネラルを与え、藻類は光合成によってできた養分を菌類に与えるといった、持ちつ持たれつの関係(共生)にあります。ですから地衣の体の大部分は菌で構成されていますが、この菌は着生植物から養分を奪わなくても生きていけます。また、地衣を構成している菌が植物体内に侵入している例はほぼ皆無です。地衣体に含まれる水溶性成分が植物に悪影響を与えることを示唆する文献も一部にありますが、一般に地衣類は樹木に対して無害であると考えられています。ツツジが弱るのは病虫害や生育不適な環境条件(特に土壌条件)など様々な原因が考えられます。原因特定のためには詳しい観察が必要です。地衣類を駆除するための登録薬剤は無く、防除の必要性も認められませんが、どうしても気になるならタワシか歯ブラシ、竹べら等でこすり落とすとよいでしょう。

地衣類

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Q16.リンゴ赤星病の予防のため、リンゴの近くにヒノキ科のビャクシン属の木(シンパクやカイヅカイブキ)を植えてはいけないことは知っていますが、ビャクシン属以外ならヒノキ科の樹木を植えてもいいのでしょうか。
A16.リンゴ赤星病菌(Gymnosporangium yamadae)の中間宿主はビャクシン(=カイズカイブキ)、ハイビャクシン、ミヤマビャクシン等のビャクシン属(Juniperus)に限られており、これらに冬胞子世代を形成してビャクシン類「さび病」を起こしますが、その他のヒノキ科樹木への感染は記録されていません(参考文献:"Rust flora of Japan"(1992))。このことから、リンゴの近くにビャクシン属以外のヒノキ科樹木を植栽しても感染は起こらないかと思われます。ただ、リンゴと同様に赤星病が発生するリンゴ属(Malus)のズミには、リンゴ赤星病菌のほかに、もう一種の赤星病菌(Gymnosporangium miyabei)が寄生します。こちらの菌の中間宿主はヒノキ科のヒノキ属(Chamaecyparis)樹木(サワラ、シノブヒバ、ヒムロ)で、これらに「さび病」を起こします。そのため、一般にリンゴ属樹木の近くではヒノキ科樹木の植栽は避けた方が無難でしょう。

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Q17.海岸に自生しているハマナスが衰弱して枯れてくるが病気でしょうか。被害株は成長が悪く、枝が密になり、葉の色も薄い。

A17.「ハマナスてんぐ巣病」(写真)の可能性があります。本病は北海道のハマナス自生海岸では大なり小なり発生が認められます。この病気であれば、次の症状が株全体に現れます。すなわち、開葉間もない葉に橙黄色の斑点が現れ、青臭いにおいがし、初夏になると葉が褐色の粉(病原菌の胞子)で覆われます。枝が密生し、葉の色がうすくなるのもこの病気の特徴です。本病はさび病の一種ですが、中間宿主はありません。登録薬剤がなく、被害も全身性なので防除は困難です。ただ、被害株には大量の胞子が形成されますが、隣接株が健全な場合も多く、実際、被害株は点在し、集中的発生がみられないことから、被害が急速に蔓延する病気のようには思えません。被害株は回復の見込みがなく、いずれ枯死するので、景観上問題になるなら被害株は発見次第抜き取って焼却するとよいでしょう。

ハマナスてんぐ巣病

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Q18.自宅(道南地方)に植栽しているヤクシマシャクナゲ(樹高約1.2m)の枝や幹が黒くなっています。貴重なシャクナゲなので、枯死しないか心配です。 ※掘り取ったシャクナゲを持参
A18.枝や幹は確かに、ススを塗ったように黒くなっていますが、葉、根系、新芽は健全で衰弱の兆候はみられません。樹皮の裂け目には白色綿状のロウ物質が点々と付着しており、その下にカイガラムシが確認されました。これらのことから、シャクナゲの異常は「すす病」と考えられます。カイガラムシの排泄物に黒色のカビが繁殖しているだけなので、「すす病」そのもので枯死する可能性はありません。ぬれたスポンジや柔らかい歯ブラシ等を使って、枝幹のすす状物、綿状のロウ物質をていねいにこすり取って洗い流すときれいになります。ただ、カイガラムシが毎年発生すると徐々に衰弱する可能性があるので、カイガラムシの発生が目立つ場合は防除した方がいいでしょう。

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Q19.公園の藤棚のフジに「こぶ」がたくさんついている。病気でしょうか。(道南地方)

A19.「フジこぶ病」です(写真)。地際から枝先まで大小さまざまなこぶが形成され、枝枯れや樹勢低下を招きます。著名な樹木病害ですが、北海道では極めて珍しい発生事例と思われます。北海道ではフジは自生せず、公園や庭園の藤棚も数が少ないからでしょう。病原は細菌の一種で、ツルや葉柄にできた小さな傷から侵入感染すると考えられます。完全な防除は困難でしょうが、発病初期で患部(こぶ)が少ない場合は、罹病したツルや枝を切り取るか患部を削り取るとよいでしょう。この場合、使用する剪定バサミやナイフは、1回ごとにアルコール等で消毒した方がいいでしょう。

フジこぶ病

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Q20.街路樹のプラタナスの葉が枯れ、小枝も枯れてきます。原因は何でしょう。

A20.被害葉の褐変は葉脈に沿って拡大進行する特徴がみられ、褐変部の葉の表裏には白色~淡褐色の微小な胞子塊が認められます。こうした特徴や胞子の顕微鏡観察結果などから、この被害は「プラタナス炭疽病」(写真)と考えられます。本病は葉枯れや枝枯れを起こし欧米では著名な病害ですが、日本での発生実態は不明です。本病は、気象条件などによって被害の目立つ年があっても数年のうちに回復することが多く、苗木や幼木以外では特別な防除は必要ないと言われています。落葉の除去や罹病枝の剪定は、感染源を減少させるという意味で被害軽減に一定の効果があるでしょう。なお、一般に街路樹や公園に植栽されているプラタナスは本病に抵抗性のスズカケノキ(Platanus orientalis)と感受性のアメリカスズカケノキ(P.occidentalis)の交配種モミジバスズカケノキ(Platanus × acerifolia)で、本病に対する抵抗性の程度は個体によって様々なようです。

プラタナス炭疽病

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Q21.スギ幼齢造林地で枝枯れ被害が発生しているので原因を調べてほしい。(道南地方)

A21.症状は当年伸長枝の枝枯れで、被害部にみられる菌体(分生子)の形態からみて、「スギ軸枯病」(写真)と思われます。本病に関する情報は少ないのですが、凍害などの気象害が誘因になって発生すると考えられており、毎年被害が継続拡大する可能性は小さいと思います。できる範囲で枯死した枝幹を剪定し、しばらく経過観察してはどうでしょう。

スギ軸枯病

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Q22.公園に植栽されたセイヨウブナに葉枯れ、枝枯れが目立つのですが原因は? ※被害枝葉を送付

A22.成熟葉(葉の大きさ、色とも全体的に異常なし)で、葉脈の間が葉表にやや盛り上がり、葉全体として波打っているような葉がありますが、これは「葉ぶくれ線虫病」の可能性があります。今は葉の中の線虫密度が低いせいか、顕微鏡観察ではセンチュウは確認できていませんが、葉脈の間が黄色くなってくれば「葉ぶくれ線虫病」(写真)とみていいでしょう。一部の葉に委縮、黄化症状がみられます。ブナはアブラムシの寄生によってこうした症状が現れることがありますが、アブラムシの痕跡(葉裏の脱皮殻など)は無く、この原因は不明です。葉枯症状を示す葉では、褐変部分すべてにクラドスポリウム(Cladosporium)属の一種と思われる菌がみられます。この属の菌には植物病原菌もありますが、病原性がほとんど無い種類もあり、今回みられた菌が葉の褐変(葉枯れ)の一因かどうかは即断できません。色がうすい新しい葉が今頃展開しています。春に展開した葉が虫害などによって消失した場合などにこのような現象が現れる事がありますが、原因については何とも言えません。以上が送付された被害枝葉についての所見ですが、現地をみないとわからない点も多くあります。なお、被害木にはゴマダラカミキリの穿入口がみられることもあるとのことですが、上記の諸症状はゴマダラカミキリと関わりがあるかもしれません。もう少し詳しく調べてみてください。

葉ぶくれ線虫病

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Q23.港のそばの緑地に植栽されているハマナスが全体的に黒っぽくなり、衰弱して枯れてきています。原因は?
A23.現地を見ました。被害株には新葉の退緑、小形化(線形化)、葉縁からの黒変、新梢の屈曲等の症状がみられます。こうした症状は、個々の葉や小枝に現れるのではなく、株立ちしている個々の幹または株全身にみられます。また、症状が現れた幹は数年かけて徐々に衰弱枯死していくように見受けられます。国内では、ハマナスやバラに本症状に類似した病害は記録されていません。虫害の痕跡は無く、発生状況から気象害、潮害とも思えません。症状からみて、ウイルス病または除草剤などの農薬による薬害の可能性は否定できません。まず、殺虫剤、殺菌剤を含め、農薬散布履歴を調べてみてはどうでしょう。ウイルス病の場合は近隣の健全株に被害が拡大する可能性があり、防除が困難なので、全身症状が現れている株は掘り取って焼却し、新しく植え直すのが賢明かと思います。なお、ハマナス全体が黒くなっているのは、「すす病」が発生しているためですが、ハマナスの衰弱枯死と直接の関係はないと思います。ただ、すす病が目立つ場合は、これを誘発するアブラムシやカイガラムシを防除した方がいいでしょう。

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Q24.1.モンタナマツの枝にこぶがついて枝が枯れました。
  2.アカマツの枝にできた「こぶ」からオレンジ色の粉が吹きだしてきました。原因を教えてください。

A24.「マツこぶ病」(写真)です。橙黄色の粉は病原菌の胞子(さび胞子)で、これが中間宿主であるナラ類の葉に感染して「ナラ類毛さび病」を起こし、ナラ類の葉に形成された胞子(冬胞子-小生子)が今度はマツの枝に感染します。このようにナラ類が中間宿主になるので、近くにナラ類(ミズナラやコナラ)が植栽されていると、被害が拡がる可能性が高いと思われます。罹病枝(こぶから先の部分)は、すぐには枯れませんが、いずれ枯れてしまいます。マツの個体によってこぶ病に対する感受性がかなり違うようなので、近くにあっても今発病していないマツは、たぶん大丈夫でしょう。早期に発見して、枝が細いうちに罹病枝を切除すれば樹形を損ねる程度が少ないので、日頃の観察が大切です。

マツこぶ病

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Q25.実生苗ではなく挿し木苗でヒバの植林を進めているが、挿し穂の切り口から腐朽菌が侵入して、将来の収穫時に褐色腐朽が問題になることはないでしょうか。
A25.ヒバが特に褐色腐朽(根株腐朽のことか?)を起こしやすいということはありません。一般に根株腐朽の有無や程度は立地(地形や土壌条件)に負うところが大きいと思われます。挿し木苗だからといって将来、腐朽の可能性が高まるとは思えません。挿し穂が活着したということは、切り口の細胞の活力が旺盛で、土壌中の病原菌に侵されずに根系を発達させたことを示しており、腐朽菌の侵入に対しても抵抗性があると考えられます。

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Q26.トドマツ人工林で、ほとんどの幹にスポンジ状で焦げたような黒い斑点が無数に付着していましたが、これは何でしょうか。

A26.「トドマツこうやく病」(写真)と思われます。直径数cm~20cmの類円形の菌体が幹に貼り付きます。成長が旺盛な菌体は周縁が白色で全体的に黄土色を呈し、表面は柔軟で比較的なめらかですが、古くなると菌体に亀裂が入り、やがて暗褐色となって剥がれ落ちていきます。菌体に覆われた樹皮の表面には必ず多数のカイガラムシ(トドマツニセカキカイガラムシ)が認められ、菌体に取り込まれたような状態になっています。トドマツこうやく病菌について詳しい情報はありませんが、一般に、こうやく病菌はカイガラムシと共生していると考えられています。こうやく病菌の菌体に覆われることによって、カイガラムシは天敵から身を守ることができ、不都合な環境条件からも保護される安全なすみかを得ることができます。一方、病原菌は菌体に取り込んだカイガラムシの体液や排泄物を利用して養分を安定的に得るほか、胞子がカイガラムシの幼虫によって分散を助けられるというメリットがあります。カイガラムシは菌の寄生を受けても死ぬことなく樹液を吸い続けるようです。トドマツの場合、こうやく病菌が着生した部分の樹皮は荒れてきますが、樹皮下の生きた細胞に病原菌の菌糸は認められていません。樹皮の荒れの原因はむしろカイガラムシの加害によるものでしょう。これらのことから、こうやく病が発生してもトドマツの成長に悪影響が生じるとは考えられません。なお、トドマツこうやく病菌の宿主はトドマツのほか、エゾマツ、ヨーロッパトウヒが知られています。

トドマツこうやく病

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Q27.道南地方で養成している1~2mのプンゲンストウヒに先枯れ、落葉症状がみられます。このような被害は初めてで、被害は夏以降に発生したようです。仲間内では線虫病ではないかと言っていますが原因は何でしょう。 ※被害サンプル持参
A27.線虫がトウヒ類の枝枯れや落葉を起こすという記録はありません。プンゲンストウヒによく発生する「かさぶた状葉さび病」でもありません。一部の枯死枝内部に孔道がみられ、一部虫害の可能性もありますが、一見枯死したようにみえる落葉枝でも芽が生きているものが多いことから、病虫害による枝枯れ(先枯れ)の可能性は小さいと思います。また、枯死枝の多くは先端が下垂していますが、これは、まだ枝が柔らかい時期(初夏?)に被害を受けたことを示しています。症状から見て、乾燥などの気象害、農薬による薬害など一過性の被害である可能性があります。被害が拡大するおそれは少ないと思われるので、当面は防除等を考えず、しばらく様子をみてはどうでしょう。

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Q28.庭木のゴヨウマツの枝先が枯れるが、原因は? ※被害枝持参
A28.持参したのは枯死枝と枯死途上の衰弱枝ですが、診断のポイントとなる健全・罹病境界部分が無いため、診断の決め手に欠けます。ただ、枯死枝基部樹皮下には昆虫の孔道が認められ、まだかろうじて生きている枝の基部にはその痕跡がみられないことから、虫害の可能性があります。一方、病害の可能性も捨てきれないので、現地で健全枝と罹病枝との境界部を観察し、ヤニ滲出の有無やがんしゅ、陥没症状の有無を調べてみてください。今のところ原因は特定できませんが、病害、虫害のいずれにしても、被害の拡大防止のため、枯死枝、衰弱枝は切除焼却した方がいいでしょう。

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Q29.スギ幼齢造林地で多くのスギに胴枯れ症状が見られるが、原因は? ※被害木1本を持参
A29.持参被害木には胴枯れ、枝枯れ症状がみられますが、下枝は生きており、完全枯損には至っていません。根系にはナラタケ菌の根状菌糸束が多数みられますが、根や地際の樹皮下に白色菌糸膜はみられず、被害も「ならたけ病」の症状ではありません。ナラタケ菌は部分的に根腐れに関与している可能性はありますが、被害の主原因とは思えません。枝枯れ症状部には、「フォマ葉枯病」菌がみられますが、本病菌は病原性が弱いとされ、これも被害の主原因とは思えません。一方、胴枯れ部分に病原菌らしきものは認められませんでした。枯損枝幹には、カミキリムシの幼虫、キクイムシの成虫、幼虫がみられますが、これらの昆虫はスギがかなり衰弱または枯死した後に侵入するので被害の主原因とは思われません。以上のことから、本被害に「ならたけ病」、「フォマ葉枯病」が部分的に関与している可能性は否定できませんが、主原因は気象条件、土壌条件など病虫害以外の要因にあると考える方が自然でしょう。

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Q30.カシワ林の中で1本(直径64cm)だけ樹冠全体の葉がまだら状に変色していますが、原因は? ※被害木の写真、被害枝葉を送付
A30.病徴は、①初め葉に数個の小褐斑を生じる、②褐斑は拡大または融合して大褐斑となるが、葉の褐変は主に葉脈間を進行する、③こうした褐斑、葉枯れ症状は全身に現れる、ということになります。褐斑上には時にナラ類葉枯病菌(Monochaetia)がみられ、発病後期の葉裏の病斑部には頻繁にクラドスポリウム(Cladosporium)菌が見られます。しかし、葉枯れ症状が全身的であることから、これらの菌が本被害の原因とは思えません。要するに本被害は個々の葉の病害とは思えません。ナラ類の全身性の病害としては、「半身萎凋病」か、北米で発生している「ナラ類萎凋病」が考えられます。これらの病害であれば枝の断面には年輪に沿った黒いしみが認められます。できれば観察してみてください。被害原因は別にして、全体的な印象から本被害は水分ストレスによる症状と考えられます。周辺木に被害が拡大する恐れは無いと思いますが、被害木は今後、枝枯れ、全身枯損へと進行する可能性があります。

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Q31.石灰硫黄合剤について教えてください。
A31.石灰硫黄合剤は、殺菌、殺虫作用のある農薬で、魚毒性A類の普通物(毒物・劇物でない)です。主に果樹類の病気(黒星病やうどんこ病)や害虫(カイガラムシ類やハダニ類)の防除に用いられます。ただ、一般樹木や庭木に対しては、「ビャクシン類さび病」に登録があるだけで、使用には注意が必要です。なお、農薬の登録状況は日々流動的で、使用可能であった農薬が失効している場合があります。現在の農薬登録状況は、農林水産省HP「農薬コーナー(http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/index.html)」-「農薬情報(農薬一覧、検索、各種基準など)」-「登録速報(新規、適用拡大)、登録情報(農薬の適用作物、使用方法等の検索)」で知ることができます。

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Q32.3年前に購入したプルーンの葉が黄変して枯死しました。跡地にプルーンを植え直したいが、根の病気であれば再発する恐れがあります。枯死原因は?(道南地方)
A32.幹に胴枯れ症状がみられ、患部一面に病原菌の菌体(跡)がみられることから、胴枯性病害の一種による枯死と思われます。根系に異常はみられないので、同じ場所にプルーンを植え直しても大丈夫でしょう。ただ、幹を傷つけたり、気象害(寒さ、乾燥など)等で衰弱すると胴枯性の病害を誘発するので、管理には十分気をつけてください。

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Q33.アカエゾマツの一部の葉が黄変し、葉には小さくて白い袋状のものがついています。何でしょう。 ※被害枝葉送付

A33.「アカエゾマツ葉さび病」(写真)です。白い袋状のものは病原菌の菌体の一部(銹子のう)です。この中には橙黄色、粉状の病原菌の胞子(銹胞子)が形成され、成熟最盛期には少しの動揺で胞子が飛び散ります。一般に本病の被害は軽微です。中間宿主はツツジ類またはシャクナゲ類で、これらに「さび病」を起こします。

アカエゾマツ葉さび病

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Q34.道央のアカエゾマツ造林地(4年生)で、植栽当年から枯死が目立ちます。枯れた針葉には菌糸がからみついていますが、暗色雪腐病ではないでしょうか? 改植の予定ですが暗色雪腐病は大丈夫でしょうか?(6月上旬)

A34.暗色雪腐病(写真)の場合、枯れた葉と土が菌糸でつづられた状態で発見されることが多いと思います。また、この時期にはふつう菌糸は消失しています。発生状況からは、暗色雪腐病とは考えにくいと思います。植栽当初から枯死が発生しているとのことなので、植栽時の苗木の取り扱い、植栽地の立地条件(乾燥、過湿)が原因と考えた方がいいでしょう。従って、改植にあたっては、暗色雪腐病の心配は不要です。

暗色雪腐病

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Q35.ジャイアントセコイアの新梢先端部が萎凋、褐変枯死します。赤枯病の可能性があると思うのですが。 ※サンプル送付
A35.送付標本によれば症状は新梢の「枝枯れ」であり、赤枯病の症状である「葉枯れ」は見られません。また、枯死部に赤枯病菌の菌体がまったく認められないことから、赤枯病とは思えません。国内ではセコイアデンドロン(ギガントセコイア=ジャイアントセコイア)には赤枯病のほかに灰色かび病の発生記録がありますが、灰色かび病の兆候はみとめられません。本樹種原産国の米国で記録されている先枯病(tip blight)という病気(病原菌 Phomopsis juniperovora)に症状が似ていますが、病原菌の菌体は認められませんでした。被害原因が明らかでない現段階では、とりあえず被害枝除去を進めながら被害の推移を見守るということになります。

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Q36.シャクナゲ(ニッコウシャクナゲ)の葉先が枯れてきました。風当たり、日当たりの悪い所に植わっています。診断をお願いします(道北地方)。 ※写真送付
A36.写真を見る限り、枝、葉柄は健全で、1年葉の葉身全体が淡褐色に変色するというのが、症状のポイントのようです。しかも変色葉は散在するのでなく、おもに枝先の葉に集中しています。一般に葉の病気の場合は、褐色の斑点または、部分的な葉枯状褐変が生じます。病気の種類によってはこれらが拡大、融合してやがて葉身全体が褐変枯死するという経過をたどります。「炭疽病」「葉斑病」「ペスタロチア病」等、シャクナゲの葉枯性病害でも同様です。冒頭に記した本件の症状は、病気よりも気象害を疑わせます。立地に問題がないようなら、今冬限りの被害(寒さの害)ではないかと思います。冬芽が健全ならそれほど心配することはないと思うので、しばらく開葉の様子を見守ることにしてはどうでしょう。

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Q37.チシマザクラ苗木の枝に黒っぽいこぶ状のふくらみがいくつもみられます。海外に送付予定の苗木なので心配です。
A37.こぶ状の隆起は、サクラこぶ病ではなく、サクラ類胴枯病の病斑に癒合組織が形成されたもののようです。黒っぽく見えるのは患部から出たヤニが古くなったものです。一部の患部周辺では、正常に見える樹皮の下に胴枯病菌の未熟菌体(分生子殻)が樹皮を透かして認めることができます。これは病気が治癒しておらず、まだ病斑が拡大を続けていることを示しています。こぶのない健全枝では芽吹きが始まっていますが、ヤニを伴うこぶ状隆起のある枝ではまだ芽吹いていません。これらの枝は、すでに枯死しているか近く枯死する枝と考えられるので、病原菌を除去する意味でも直ちに切除した方がいいでしょう。また、切り口にはチオファネートメチルペースト剤(トップジンMペースト)を塗っておくといいでしょう。患部が完全に閉塞し、ヤニも見られない治癒したと思われる患部(こぶ状隆起)には手をつけなくていいと思います(患部が多く、これらの枝まで切除すると大部分の枝が無くなってしまうため…)。

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Q38.天然老木、若い庭木を問わず、イチイの新葉に黒点が生じ、新梢は触れると簡単に落ちてしまう。ウイルス病のようにも思いますが何でしょう。(道東地方) ※標本送付
A38.葉には1mm前後の類円形、黒褐色の斑点が形成され、周囲はわずかに水浸状を呈しています。しかし、病斑の表裏面に菌体は認められず、組織内にも菌糸や細菌塊は認められず、病害の兆候は確認できません。新梢は緑色を保ち、萎凋症状もみられません。折れた新梢基部は外見上特に異常はみられず、菌体もみられませんが、新梢縦断面を観察したところ、基部近くの内部(木部)に褐変がみられました。このことが、新梢の落ちやすさと関係しているかもしれません。イチイで上記の症状を示す病害は、ウイルス病を含め、国内外で記録がありません。また相談者によれば、これまで被害地域周辺でイチイにこのような症状が発生した例は無く、樹冠の片面だけに被害が現れることがあり、被害が拡大している兆候も無いとのことです。以上のことを総合的に判断すると、本被害の原因は病害ではなく、気象がらみの一過性の被害である可能性が高いと思われます。

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Q39.炭焼きをしている人が鶏舎の消毒に木酢液を利用している、との話を聞いたが、木酢液に殺菌力はあるのでしょうか。木酢液は畑などの土壌改良効果があるといわれるが、本当でしょうか?
A39.木酢液は使用者の体験から病害虫防除効果や土壌改良効果があるとされ、様々な製品が市販されています。ただ、原材料となる樹種や製造方法によって木酢液の成分や濃度が異なるため、その効果については一概には言えません。また、品質や効果が安定せず、ホルムアルデヒド(ホルマリン)などの有害成分を含むので、農薬取締法上は、病害虫防除効果や植物の生育促進など、その薬効をうたって木酢液を販売することはできません。ただし、使用者の判断と責任で使用することは禁じられていないようです。なお、木酢液に含まれるホルムアルデヒドは殺菌力があります。木酢液を特定防除資材(特定農薬)として登録しようとする動きはありますが、薬効や安全性に問題があるとされ、現時点では農薬として登録されていません。ちなみに現在(H20.3.7)、特定農薬として登録されているのは、「食酢」、「重曹」、「地場産の天敵」の3種類だけです。

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Q40.ヒバ当年植栽木の枯れが目立ちます。 ※被害苗木5本送付
A40.被害苗のうち4本は、地上部がすべて褐変しており、幹の形成層も地際から頂部まで褐変しています。細根もすべて褐変しており、個体としては完全に枯死しています。残りの1本にはわずかに緑葉が残っており、幹の形成層に褐変は認められないものの、細根がほとんど枯死していることから、枯死途上の苗木と考えられます。幹や枝葉に病斑や病原菌らしきものは認められません。症状からみて、苗木の地上部の褐変枯死は葉枯性または胴・枝枯性病害によるものではなく、根腐れが原因と考えられます。根腐れの原因は不明ですが、枯死木植栽箇所の立地が微地形的に過湿または乾燥条件にないなら、植栽前の苗木自体に問題があったとも考えられます。いずれにしても病虫害の可能性は少なく、今後被害が拡大することはないでしょう。

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Q41.庭木のクロマツの枝先がたくさん枯れて元気がありません。 ※サンプル送付

A41.枯葉や枯死枝には黒く小さな隆起が多数認められます。顕微鏡観察の結果、これらはスファエロプシス(Sphaeropsis)属菌の菌体(分生子殻)であることが確かめられたため、枝枯れの原因は「ディプロディア病」と考えられます(写真)。ふつう、外来のマツ類(特に二葉マツ類)に発生して時に激しい被害を与える病気ですが、国内自生マツ類でも何らかの原因で木が弱ると本病が発生するようです。すでに病原菌の胞子は成熟しており、降雨が胞子の分散を助けるので、できるだけ早く罹病枝を切り取り、落葉と一緒に焼却するとよいでしょう。罹病枝には「すす病」が発生しており、アブラムシの痕跡が認められます。アブラムシの加害がクロマツ衰弱の一因かもしれないので、アブラムシも防除した方がいいでしょう。

ディプロディア病

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Q42.アカエゾマツ苗木の異常原因について ※被害苗送付あり
A42.症状は、一部の枝の当年葉赤変、当年枝先端部の落葉・湾曲です。これら2タイプの症状が同一の原因によるものかどうかは不明です。後者の症状は国外で発生が知られているトウヒ類先枯病(Sirococcus shoot blight:病原菌Sirococcus strobilinus)に似ていますが、患部に病原菌は見あたりません。また、その他いずれの患部にも病虫害の兆候が認められないことから、苗木の異常が病虫害によるものとは思われません。気象害や薬害の可能性がありますが、相談者は現地を見ておらず、被害時期、被害程度についての情報もないことから、現時点では原因の特定・推定は困難です。

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Q43.漁協所有のミズナラ林、町有カシワ林で枝枯れが目立ちますが原因は。(道東地方)
A43.枯れ枝(2~3年生枝)の健全部との境界部に病原菌と思われる菌体(分生子殻)がみられることから、枝枯性の病害と思われますが国内での発生記録はないようです。病原菌はカシワ、ミズナラとも同じで、欧州でナラ類に胴枯れ(bark canker)や枝枯れ(dieback)を起こす菌(Fusicoccum quercus)に似ています。病原菌の同定は今後の課題ですが、欧州では乾燥が本病を誘発し、砂質土壌で被害が出やすいとされています。送付された標本をみると、生きている枝にも、癒合組織の形成によって拡大を阻止された陥没病斑が多数認められます。翌年以降これらの病斑が活性化して枝枯れが増えるかもしれませんが、急激に蔓延して罹病木自体が枯死するとか、隣接木に次々と新たな感染が起こることはないでしょう。

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Q44.ソメイヨシノ(直径約20cm)にサクラてんぐ巣病が激発したため、数年前に地上高約2mで断幹しました。その後、萌芽枝にもてんぐ巣病が発生してきましたが回復の見込みがあるでしょうか。それともあきらめて伐採すべきでしょうか。
A44.てんぐ巣病の病原菌の菌体(胞子)は葉に現れますが、病原菌は菌糸の形で枝に潜在しています。防除法としての患部(枝)の切除も切り方が悪いと菌が枝に残り、てんぐ巣病が再発します。また、ほとんど全ての枝が罹病していたり、幹から直接てんぐ巣が形成されているような場合は、罹病枝を切除しても、病原菌の菌糸が幹に残っている可能性があります。この場合は、断幹してほとんどの病巣を除去したとしても、萌芽枝にてんぐ巣病が再発する可能性があります。今回のように、ほとんどの萌芽枝がてんぐ巣病に罹っているようであれば、幹に病原菌が潜在している可能が高く、罹病枝の切除を繰り返してもてんぐ巣病の完治は困難と考えられます。したがって伐採もやむを得ないと思われます。ただ罹病木であっても、樹勢が強く、健全な(太)枝が残っている場合は、罹病枝の切除に留め、もう一年様子をみるという選択肢もあります。いずれにしても、一括処理ではなく、単木ごとの罹病状況に応じて処置することが望ましいと思います。
 なお、ソメイヨシノはてんぐ巣病に罹りやすいので、伐採して新しいサクラを植える場合は、近隣のサクラを調査し、てんぐ巣病の発生が認められない品種を植栽するといいでしょう。

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Q45.スギ幼齢造林地(林齢3年)の被害原因について ※写真送付

A45.送付いただいた被害標本を顕微鏡観察した結果は次のとおりです。一部の枯死枝には「黒点枝枯病」菌、「軸枯病」菌が認められます。また、Microsphaeropsis属菌?も認められましたが、この菌はスギの病原菌リストには無く、その病原性は不明です。葉枯れ症状の一部には「灰色葉枯病」菌が認められます。被害部に菌がまったくみられないことも多く、枝枯れ、葉枯れ等の症状と患部に認められる病原菌の対応関係が今ひとつはっきりしません。今回の被害は複数の病害による複合被害と見ることもできますが、枯れた枝葉にはいろんな菌(病原性の弱い菌や病原性が無い菌)がつくので、被害の一次的な原因が病害であるとは断定できません。特に症状と存在する病原菌が対応していないことは、病害以外の要因が原因であることを示しているように思えます。今のところ本被害の一次原因を特定することはできませんが、「黒点枝枯病」はスギの重要病害の一つとされており、今回の被害にこの病気による枝枯れが含まれていることは明らかです(頻度は別にして)。本病の防除には雄花の除去に加えて、枯死した枝とそれに隣接する健全部を剪定除去する必要があります。ただ、「黒点枝枯病」は、今回の被害の一部に過ぎず、労力と効果を考えると被害枝のせん定除去は現実的ではないでしょう。

黒点枝枯病

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Q46.8年生トドマツ造林地でてんぐ巣病と思われる被害が1割程度発生しています。放置しておいても大丈夫でしょうか。

A46.トドマツてんぐ巣病(写真)は、さび病の一種で、ハコベやミミナグサの仲間が中間宿主になります。被害率が少々高いように思いますが、林床にこれらの植物が多いのかもしれません。この場合、中間宿主を除去すれば今後の被害は軽減されると思いますが、こうした作業は実際には困難でしょう。てんぐ巣病の罹病枝はいずれ枯れますが、罹病枝数がわずかなら放置しても成長などへの影響は少ないと思います。ただ、幹の直近に患部がある場合は将来材質への影響が懸念されます。感染源を減らす意味でも、こうした患部を優先的に、罹病枝を剪定除去するのが望ましいと思います。

トドマツてんぐ巣病

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Q47.イチイに白い「こけ」のようなものがついて衰弱しています。被害は毎年拡がっているようで、このような状態では売り物になりません。どうすればいいでしょう。 ※被害枝や樹皮を送付
A47.イチイについているものは、「こけ」ではなく、菌類と藻類が合体した「地衣」と呼ばれる生き物です。地衣類の性質については「Q15」の記事を参考にしてください。なお、比較的日当たりが良く、空中湿度が高い(あるいは着生している枝や幹が湿った)環境では、地衣類が繁殖しやすいと考えられるので、思い当たることがあれば、このような環境を改善すると良いでしょう。

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Q48.サルオガセで木は枯れますか?
A48.トドマツやエゾマツの天然林で、枯れ枝にびっしりとサルオガセがからまって垂れ下がっている異様な光景を目にすることがあります。ところが、まだ葉が着いている生きた枝にはサルオガセは目立ちません。こうしたことから、いかにもサルオガセが木を枯らしているように見えます。サルオガセに含まれる水溶性物質は植物の生育を阻害することを示唆する文献もありますが、サルオガセのような地衣類には植物を衰弱させる力は無いというのが、国内外を問わず一般的な考え方です。地衣類は菌類と藻類の共生複合体で、地衣の体の大部分を占める菌類は藻類の光合成産物を利用して生活しています。このため地衣類が繁茂するには必ず光が必要になります。サルオガセが枯れ枝で繁茂しているのは、枯れ枝の方が、葉が茂っている生きた枝よりも日当たりが良いからと考えられます。

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