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林業試験場

森とみどりのQ&A(造林・保育)

森とみどりのQ&A(造林・保育)
造林/保育
Q1.トドマツやカラマツの造林地を所有しているが枝打ちをした方が良いか? また、枝打ちをする場合、樹高の何割までなら成長に影響がないのか?
A1.
 (結論)
  1. 死に節のない良質材を作りたいのであれば生枝打ちは絶対に必要です。
  2. 閉鎖直後の林分で、梢端から5mの位置までの枝を残して、これより下の枝を落とす枝打ちを行うと成長に影響がありません。

(解説)
トドマツやアカエゾマツと違って、カラマツは枯れ上がりやすい樹種として知られてます。そのようなカラマツでさえ、狩勝峠の旧鉄道防風林で伐採された60年生の事例では地上高2~3mの位置の幹にも枯れ枝が着いていました。このような枯れ枝の落ち残りは製材された場合に死に節となります。したがって、(死に)節のない材を作るには枝打ち(生枝打ち)がどうしても必要になります。一方、トドマツやアカエゾマツは、枯れ上がりが遅く自然落枝はほとんど期待できないこと、4、5本の太い枝(輪生枝)が集まって幹に付くので死に節になると致命的な欠陥になることなどから、良質材生産を目指す場合には生枝打ちは不可欠です。
 葉の着いている生枝を落とすような枝打ちでは、(植物は葉の光合成によって成長しているので、)当然、成長に影響することが予想されます。葉の量を多く落とせば、その分だけ成長が落ちることは容易に想像されます。しかし、同じ葉の量でも、幹の上部の枝に着いている葉と、幹の下部の枯れ枝近くの枝に着いている葉とでは、光合成の能力が極端に異なるのです。カラマツの幹の下部に着く枝の成長を調べたところ、葉を付けているにもかかわらず年輪を形成していない枝(生長を停止している枝)が多かったです。このような枝はいくら落としても幹の成長に影響はほとんどないのです。このような枝は、私たちの試験結果から、カラマツでは第5枝階以下、トドマツやアカエゾマツでは第9枝階以下の枝であることが分かってます。ただし、それらは閉鎖直後の成長が旺盛な若い林分であることが前提条件です。このような時期の樹高成長量はカラマツでは1年間に80cm、トドマツやアカエゾマツでは50cmと仮定すると、残さなければならない枝は、カラマツでは梢端から4m、トドマツやアカエゾマツでは4.5mとなり、安全を見込んで5mとするのが適当です。したがって、閉鎖直後の樹高が10m程度の林分では、一般的に言われているような樹高の1/2の枝打ちが適当でしょう。しかし、樹高がまだまだ10mに届かない林分では樹高の1/2は強度の枝打ちであり、10mをはるかに越える林分では弱度の枝打ちとなるでしょう。

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Q2.ミズナラの造林をしていますが、活着が悪かったり幹が通直に育たなかったりで困っています。ミズナラ人工林の造成に関するマニュアルがあれば教えてください。
A2.いわゆるマニュアルではありませんが、「広葉樹育成ガイド-ミズナラ林の造成技術-」(北海道立林業試験場監修、北海道林業改良普及協会発行 1998)が参考になると思います。この本は、ミズナラ林を造成する上で重要な生態的特性やその育苗・造林技術、さらに病虫獣害や気象害などに対する対策について、当林業試験場の研究員がこれまでの研究成果を中心にとりまとめて執筆したものです。

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Q3.広葉樹萠芽更新のための台切りはいつ実施するとよいか?
A3.一般に、生育期間中の伐採は、伐根中の養分量が少ないために株の生残率が低下する傾向にあります。したがって、根や幹に貯蔵養分が多い生育休止期間中に伐採した方が望ましいでしょう。

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Q4.密度管理図の使い方を知りたい。
A4.使用方法について具体的な例を挙げてみます。お手元に『トドマツ密度管理図』をご用意ください。
 「現在の上層高が15mでha当たり本数が1,000本の林分」の成績判定をします。横軸の「ha当たり本数」1,000本の線と「等平均樹高曲線」の15m交点の位置で、横軸に示されている「幹材積」を読むと200m3/haと読みとれます。また、その交点の位置は18cmと19cmの「等平均直径曲線」の間にあり、平均直径は18.7cmと読みとれます。
 このほかにも、仕立て目標(疎・密仕立ての別や伐期ha当たり本数、伐期平均直径など)を決定することで間伐前または後の林分の密度管理が行えるため、間伐設計に使用することができます。

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Q5.かき起し後に発生したカンバ類若齢林の除伐方法を知りたい。
A5.まだ、定番の対処法は確立されていません。若いときに強度に間伐する方がよいという考え方と、しばらく高密度で成長させてから除伐する方がよいという考え方があります。若齢時に本数で90%を除伐した実験例がありますが、その後の成長は順調なようです。

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Q6.広葉樹を育てる場合、枝下高をどのように考えればよいか。
A6.広葉樹の枝打ちはほとんど行われていませんので、広葉樹の枝下高は、林分の密度管理を考えるときに、考慮されなくてはなりません。一般に密度を高く保つと枝下高も高くなり、間伐をして密度を低くすると枝の枯れ上がりは進まなくなります。この関係は樹種によって相違があります。さらに、ナラ類は間伐後に後生枝が発生することがあるので注意が必要です。

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Q7.ヒバの造林技術に関する情報を得たい。
A7.ヒバの造林技術についてまとまった報告はあまりありませんが、森林総合研究所東北支所から1988年に発行されている「ヒバに関する文献レビュー」に個々の技術に関する報告がまとめられています。

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Q8.広葉樹(ミズナラ、ハンノキなど)の秋植えは可能でしょうか。活着率などのデータもあれば教えてください。
A8.一般的には春植えが安全です。秋植えも可能ですが、かならず苗木の落葉後に植栽することが重要です。また、植栽当年の冬は植栽木の根系が発達していないため、道東地方などの雪の少ない地方では凍上による枯損の恐れがありますので、秋植えは極力避けたほうがよいでしょう。多雪地でも雪圧によって傾斜や倒伏の危険があり、5㎝程度深植えすることが推奨されています。
 秋植えの活着率に関しては、足寄町の九州大学演習林でミズナラ秋植えの植栽時期別試験例が報告されています。その試験によると、10月以降に植栽したミズナラの活着率は88%以上でした(今田 1976)。道東地方での秋植えでもこのように高い活着率を示すことがありますが、やはり気象条件次第ではかなりのリスクがあることに留意してください。

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