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森とみどりのQ&A(環境保全・流域保全)

森とみどりのQ&A(環境保全・流域保全)
環境保全/流域保全
Q1.針葉樹林と広葉樹林では、保水力にどの程度違いがあるのか?
A1.針葉樹と広葉樹では、年樹冠遮断量や年蒸散量の顕著な差は見られませんが(ただし降雪遮断率では違いが見られる)、土壌の浸透能や貯水能力および洪水抑制効果は広葉樹が高いです。ただし流域内の地質構造や土層の分布とその物理性などが保水性に強く影響するため、一概に林相だけで保水力の比較はできません。

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Q2.土地利用別の降水浸透能の違いを知りたい。
A2.地被別に浸透能を比較した例では、針葉樹が211.4mm/h(天然林)と260.6mm/h(人工林)、広葉樹天然林が271.6mm/h、伐採跡地が212.2mm/h(軽度攪乱)と49.6mm/h(重度攪乱)、草地が143.0mm/h(自然草地)と107.3mm/h(人工草地)、崩壊地が102.3mm/h、歩道が12.7mm/h、畑地が99.3mm/hです(村井ら、1975)。畑地ではトラクターの踏圧により1mm/h程度の低い値を示す場合があります。一般に森林では浸透能が高く、草地、裸地、畑地など攪乱を受けた地被では浸透能が低い傾向にあります。

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Q3.河畔林の緩衝機能とはどういうことを指すのでしょうか?
A3.一般的には,河畔林による水質保全機能を指す場合が多く,大きく分けて1.土砂の捕捉,2.窒素やリンなど栄養塩の捕捉,の2つの機能があります。これらは林内に水が浸透することによるろ過,土壌への吸着,植物の吸収などにより発揮されます。
1. 北海道南部の貫気別川の源頭部で畑から流出する細粒土砂の補足を調べた例では,ササの生えるヤナギ林林縁から10mまでで粒径の大きな砂はほとんど捕捉され,微砂や粘土も20mまでで半分以上が捕捉されました。しかし,土砂流出が続いた場合,ろ過効果は減少し,細かい粒子は次第に捕捉されなくなりました。
2. 北海道東部の酪農地帯で草地から流出する栄養塩の捕捉を調べた例では,幅約30mの林帯で流出水中の窒素,リンを約20%減らすことがわかりました。ただし,土壌が凍結する冬季にはこの機能は期待できず,斜面の傾斜や草地面積によっても効果は変わります。

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Q4.河畔林はなぜ必要なのでしょう?
A4.河畔林には,周辺の都市や農地から流れ込む化学物質や土砂などを捕捉する緩衝帯としてのはたらきがあり,日陰をつくり水温を上げない,落ち葉や倒流木の供給により水生生物の餌や住みかを提供するなど生態学的に重要な機能もあるからです。大きくわけて以下のような機能があります。
1. 日射遮断:特に冷温性のサケ科魚類などにとって重要
2. 有機物供給(落ち葉,落下昆虫):川から海まで含めた水生生物の餌として
3. 倒流木供給:河川微地形をつくり河川生物の住みかを提供
4. 細粒土砂の捕捉(濁りの防止)
5. 栄養塩の除去(水質浄化)
6. 野生動物の生息場(哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,昆虫…)

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Q5.春一番に川で見られるのはネコヤナギでしょうか?
A5.必ずしもそうではありません。一般に「ネコ」とよんでいるのは,芽鱗がはずれて綿毛が目立つようになったヤナギの花芽ですが,2月末~3月の早い時期にこの状態になるヤナギにはエゾヤナギ,キヌヤナギ,ネコヤナギ,バッコヤナギなどがあります。このうち本当(正式和名)のネコヤナギは道央以南にはほとんど分布せず,エゾヤナギも道南ではあまりみられません。また,キヌヤナギの「ネコ」は大きさが小さいため,よく札幌の豊平川などで春一番のネコヤナギとしてとりあげられるのは,エゾヤナギかバッコヤナギのことが多いようです。

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