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林業試験場

エゾシロチョウ

エゾシロチョウ

写真1 中齢幼虫、体長15~18mm。美唄市、セイヨウナシ。1994/5/14。

写真2 終齢幼虫、体長27mm。美唄市、庭のクロミサンザシ。2001/5/8。

写真3 蛹。写真1の個体群。1994/6/1。

写真4 コマユバチの1種の繭(エゾシロチョウの幼虫の体内を食べた後、外に出て繭になる)。美唄市。2005/6/8。

写真5 成虫。美唄市、庭のクロミサンザシ上。1999/6/21。

写真6 幼虫の越冬巣。美唄市、庭のクロミサンザシ。1997/11/20。

被害の特徴
樹 種 バラ科樹木(リンゴ、ズミ、サクラ、サンザシ、ナシなど)。
部 位 葉・新芽。
時 期 5月と7月~9月(幼虫加害時期、食害が激しいのは5月)。
状 態 葉や新芽が食べられ、なくなる。食害部位やその近くには糸が張り巡らされ、幼虫(写真1~2)や蛹がいる。
夏から秋では葉の表面だけが食べられ、葉が黄色や茶色に変わり(写真4)、葉に糸が張り巡らされる。
幼虫・蛹 幼虫は体長最大約40mm。数十から百頭程度の集団を作る。
背面は黒く、2本の黄褐色の縦縞があり、腹面は灰色(写真1~2)。頭部と胸脚は黒色。白色や黄色の柔らかな毛に被われる。
蛹は地色が黄白色で、黒色の斑点や斑紋がある。

和名  エゾシロチョウ

学名 命名者  Aporia crataegi adherbal Fruhstorfer

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、シロチョウ科Pieridae


寄主  ヤマザクラ・シウリザクラ・エゾノウワズミザクラ・リンゴなどバラ科樹木(文献1985)。幼虫が葉を食べる。

生態  生活環は下表のとおり。年1世代、幼虫越冬;春、芽が開く頃、幼虫は集団で枝上に糸を張りめぐらす(文献1985)。5月末頃に枝上で集団で蛹になる;10日ほどで成虫が羽化する。雌成虫は葉裏に数百個の卵をかためて産む;孵化した幼虫は集団で葉や枝上に糸を張りめぐらす;3齢幼虫は巣を作って越冬する(文献1985)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(休眠・越冬) ◇◇◇ ◇◇◇ ‥                 ‥ ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫(摂食・成長)       ‥ ◆◆◆ ‥   ‥◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ‥      
 蛹          ‥+ ++‥                    
 成虫・卵             ‥◎◎ ◎‥                 

分布  北海道、千島、サハリン、朝鮮半島。

被害  海岸のズミやエゾノコリンゴ、庭のサクラやナシなどで多発することがある。多発生はたいてい1年で終わる。木を枯らした記録はないので、海岸林では多発しても防除は普通必要とされない。
 幼虫集団が大きいため、多発しなくても部分的に食害が目立つことがある。

被害と防除  晩秋から冬に枝に枯れ葉が残っている場合は、幼虫の巣なので取り除く。これが最も簡単で確実な防除方法である。
 被害は5月下旬から6月上旬頃に目につくようになるが、気づく頃にはたいてい枝上で蛹になっている。取り除いて駆除する。蝶の好きな人は少し残しておく。なお、蛹の近くに米粒大の黄色の繭が多数みられることがある。これはエゾシロチョウの天敵なので残す。


文献
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)

2011/3/31