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ドクガ

ドクガ

写真1 老齢幼虫、体長25mm。美唄、庭のタカネナナカマド。1999/6/14。

写真2 老齢幼虫。美唄、庭のバラ。2009/6/21。

写真3 幼虫の越冬巣。美唄、庭木の根元。2004/10/19。

被害の特徴
樹 種 様々な樹種の低木や草本。
部 位 葉、新芽、青枝。
時 期 秋と春(幼虫発生時期)。春の食害が激しい。
状 態 葉がなくなる。幼虫がみられる。
幼 虫 体長最大約4cm。黒褐色でオレンジ色の縞や斑紋があり、多数の暗褐色の長毛を生じる。 胸腹部には多数のコブがあり、そこから長毛を生ずる。 腹部第1~4節の背面には毛束がある。
ドクガ科の幼虫は腹部第6、7各節背面中央に小突起(背腺)がある。

和名  ドクガ
別名 ナミドクガ

学名 命名者・年  Artaxa subflava (Bremer, 1864) (文献2011)
= Euproctis subflava Bremer, 1864

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ドクガ科Lymantriidae


形態  幼虫は上述のとおり(文献1943参照)。

寄主  カラマツ、アカマツ、スギ、ヒバ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、カシワ、クヌギ、サクラ、リンゴ、ウメ、ナシ、スモモ、バラ、キイチゴ、カエデ、ニセアカシア、ヤマウルシ、ヤブデマリ、その他(文献1943、北海道に関係する樹木を中心に記述)。

生態  年1回発生、幼虫越冬;成虫は7月中旬に羽化する;成虫には光に集まる;卵は主に宿主の葉裏に200内外の塊で産み付けられ、卵塊の表面は雌成虫の体毛で被われる;1雌の産卵数は600~700個;卵は14~15日で孵化する;幼虫は群生し、地面に近い葉を摂食する;秋遅くには落葉の下などに粗く糸を張り群集して越冬する;幼虫は翌春から再び樹葉上に現れ、食害し、体長20mmくらいに達するまでは糸を張り群生するが、その後は離散する(文献1943)。なお、年2回発生し、卵越冬という記録もあるが(文献1943参照)、再確認を要する。

分布  北海道・本州・四国・九州・対馬、ロシア南東部、朝鮮半島、中国(文献2011)。

森林被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく、2009年以前)

被害  常緑針葉樹であるアカマツやスギの幼木で大きな被害が発生した記録があり、被害木は枯死することもある(文献1943)。北海道では海岸や市街地などの落葉樹で多発することがあるが、枯死するような被害は記録がないようである。
 毒毛を持つため、衛生害虫として注意が必要である。

防除  幼虫は小さい時は群生するので捕まえて殺す(文献1943)。毒毛を持つのでゴム手袋をする。樹木類のケムシ類に適用できる農薬が各種市販されているので、散布して駆除する。
 海岸林で多発することがあるが、木を枯らすことはほとんどないので防除は普通必要とされない。


文献
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[2011] 岸田泰則, 2011. ドクガ科Lymantriidae. pp. 139-147. 岸田泰則(編)日本産蛾類標準図鑑2. 416 pp. 学研教育出版, 東京.

2013/6/7