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林業試験場

カクモンハマキ

カクモンハマキ

写真1 中齢幼虫、体長13mm。新得町、ハルニレ、1992/6/27。

写真2 終齢幼虫、体長17mm。写真1を飼育。1992/7/3。

写真3 雄成虫、体長7mm。写真1を飼育。

写真4 幼虫の巣。新得町、ケヤマハンノキ、1990/6/15。

被害の特徴
樹 種 リンゴ、ナシ、クリなど広葉樹。
部 位 葉。
時 期 6月(幼虫加害時期)。
状 態 葉が先端から筒状に巻かれ、糸でつづられ食べられる。中に幼虫、蛹、蛹殻がみられる。
幼 虫 体長最大約20mm。頭部と胸脚は黒色。胸腹部は灰色あるいは灰緑色。胸腹部の背面の斑点は黒く、後方では小さい。

和名  カクモンハマキ

学名 命名者  Archips xylosteanus (Linnaeus)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae


形態  幼虫は終齢で体長18~20mm。頭部と胸脚は黒色。胸腹部は灰色あるいは灰緑色。前胸背楯は黒色、前半中央で褐色。肛上板(尾端背面)は黒色。刺毛の基板は胸部と腹部1節で黒色、腹部2節以降では中心が黒く周囲が環状に淡くなる。
 葉を横のロール状に規則的に巻く点で他のハマキムシから簡単に識別できる。幼虫はムラサキカクモンハマキに似るが、この種では刺毛基板の周囲が淡くなることはない。また、葉を縦にロール状に巻く。

寄主  ヤナギ科、カバノキ科、ブナ科、ニレ科、バラ科、ミズキ科など様々な広葉樹。

生態  年1回発生、卵越冬といわれている。北海道の低地では終齢幼虫が6月中から下旬に採れ、飼育したところ7月上から中旬に成虫が羽化した。

分布  北海道・本州、朝鮮半島、中国、ロシア、ヨ-ロッパ。

被害と防除  リンゴ、ナシ、クリの害虫といわれる。他の樹木では発生量は少なく、防除は必要とされない。北海道ではクリで多発した記録はないようである。


文献
[1957] 江崎悌三ほか, 1957. 原色日本蛾類図鑑(上): I-XIX, 1-318, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1969] 一色周知監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): I-VI, 1-237, pls 1-68. 保育社, 大阪.
[1975] Yasuda, T., 1975. The Tortricinae and Sparganothinae of Japan (Lepidoptera: Tortricidae) (II). Bull. Univ. Osaka Pref., ser. B, 27: 79-251.
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129.
[1986] 山口昭・大竹昭郎(編集), 1986. 果樹の病害虫, 診断と防除. 全国農村教育協会, 東京.(形態、生態、被害、防除)

2001/8/22