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林業試験場

マツアトキハマキ

マツアトキハマキ

写真1 モンタナマツの被害。美唄、2005/6/16。

写真2 終齢幼虫。写真1の被害木から採集。2005/6/16。

写真3 雌成虫。トドマツ上。1968/7。

被害の特徴
樹 種 イチイ、トドマツ、マツ属、ヒノキなど常緑針葉樹。
部 位 葉。
時 期 春。(夏~秋にも葉を食べるが、幼虫が小さく、目立たない。)
状 態 葉が糸でつづられて食べられる。中に幼虫、蛹、蛹殻がみられる。
幼虫・蛹 終齢幼虫は体長最大約22mm。頭部はつやのある茶色または黒色。胸腹部は灰色がかった緑色。胸部第1節の背面は黒色または茶色。尾端背面は淡い黄褐色。尾叉を有する。
頭部の地色が濃い場合、タテスジハマキやクロタテスジハマキと区別が困難である。
葉を糸で束ねて中で焦げ茶色の蛹になる。蛹は長さ約10mm。

和名  マツアトキハマキ

学名 命名者  Archips oporanus (Linnaeus)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae


形態  上述のとおり(詳細は文献1984)。

寄主  モミ属・トウヒ属・マツ属・カラマツ・イチイ・ツガ・スギ・ヒノキ・ヒマラヤスギの葉、トドマツ・アカエゾマツ・ストローブマツの球果(外部から摂食)、マツ属の新梢(外部 から摂食)(文献1984)。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985)。北海道のトドマツでは年1世代が普通で、条件によりまれに一部が2化する;若~中齢幼虫が葉をつづり合わせた中か、まれに1葉に潜入して越冬する;4月下旬越冬場所近くの旧葉に潜入して摂食を始め、新葉が出るとそれを集中的に食べる;終齢になると葉をつづり、その中で蛹化する(文献1984)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(休眠・越冬) ◇◇◇ ◇◇                    ? ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫(摂食・成長)       ◆ ◆◆◆ ◆◆◆                    
 蛹             +++ +                  
 成虫・卵               ◎ ◎◎                 
 幼虫(摂食・成長)                 ◆◆◆ ◆?             

分布  旧北区(文献1984)。

被害と防除  モミコスジオビハマキと混じってトドマツ林で多発するほか、庭のイチイや苗畑のトドマツチ苗木で被害記録がある(樹木害虫発生統計資料を参照)。また、庭木のマツ(写真1)やヒノキで多発することがある。
 林地では食害により成長が低下したり木が枯れた記録はないため、普通、防除は必要ない。
 庭木で多発した場合、被害に気づく頃はたいてい葉を糸でつづり合わせて中で蛹になっている。幼虫や蛹を取り除いて駆除する。


文献
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)

2011/6/20