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林業試験場

マツツマアカシンムシ

マツツマアカシンムシ

写真1 老齢幼虫、体長7mm。美唄、街路樹のモンタナマツ。2001/7/14。

写真2 街路樹のモンタナマツの被害。美唄。2001/7/14。

被害の特徴
樹 種 クロマツ、アカマツ、モンタナマツなどマツ属。
部 位 新梢(当年枝)や小さな球果。
時 期 6~7月(幼虫加害時期)。
状 態 枝先が枯れる。内部に幼虫や蛹がみられる。
幼 虫 体長最大約9mm。体は太く、赤茶色。頭部は茶色で小さい。

和名  マツツマアカシンムシ

学名 命名者  Rhyacionia duplana simulata Heinrich

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae


形態  幼虫は上述のとおり(詳細は文献1984)。

寄主  クロマツ・アカマツ(文献1984)、モンタナマツ。幼虫は新梢(当年枝)や小さな球果に食い入る。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985)。年1世代(文献1984)、蛹越冬(文献1985)。 成虫は4月下旬から5月上旬頃に現れる(文献1985)。産卵場所は旧葉の表面で、主に新芽の根元、あるいは球果の芽鱗;通常、1個ずつ産みつけられる(文献1994)。孵化した幼虫は芽鱗の内側に潜り込み新芽を食べる;6月になると伸びてきた当年生枝に潜入する(文献1984・1994)。幼虫は枝内でヤニをかためた繭を作り夏眠する;秋に繭内で蛹になる;一部は幼虫で越冬する(文献1994)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 蛹(休眠・越冬) +++ +++                   ? +++ +++
 成虫・産卵       ◎ ◎◎                         
 幼虫(摂食・成長)          ◆◆ ◆◆◆ ◆                  
 幼虫(夏眠)                 ◇◇◇ ◇◇◇ ?          

分布  北海道・本州・四国・九州。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  マツ属の重要害虫の1つである;被害は新梢に多く、球果には少ない;被害を受けた新梢は先端10cmほどが赤く枯れる;海岸林として植えられているクロマツ幼齢林にしばしば多発する;庭木や生垣にも被害が多い(文献1984)。高さ1~2mまでに被害が多い(文献1994)。
 庭木では夏から冬の間に枯れた枝先を剪定・除去して内部の幼虫や蛹を駆除する。


文献
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129. (分類、形態、生態)
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、被害、カラー写真)
[1994] 山崎三郎, 1994. マツツマアカシンムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 252-253. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除)

2011/6/23