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林業試験場

ミダレカクモンハマキ

ミダレカクモンハマキ

写真1 終齢幼虫、体長18mm。新得町、アオダモ。1990/6/15。

写真2 写真1の幼虫の巣。1990/6/15。

写真3 雄成虫、体長8mm。写真1の幼虫を飼育。

被害の特徴
樹 種 リンゴ、ナシ、サクラなど広葉樹、針葉樹、草本。
時 期 6月。
部 位 葉。
状 態 葉が糸でつづられて食べられる。中に幼虫、蛹、蛹殻がみられる。
幼 虫 体長最大約20mm。頭部は茶色。体は濁った緑色。背面には前方に黒い斑点が、後方に白い斑点がある。

和名  ミダレカクモンハマキ

学名 命名者  Archips fuscocupreanus Walsingham

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae、ハマキガ亜科Tortricinae


形態  終齢幼虫は体長約20mm。頭部は褐色、単眼域と後頬が黒い。胸脚は黒色。体は淡い緑色から灰色がかった緑色。前胸背楯(頭部のすぐ後の背面)は黒色、前半中央で褐色、時に全体黒色。肛上板(尾端背面)は黒色または体と同色。刺毛基板は胸部と腹部1節で黒色、腹部2節以降では体より白っぽく、中心が小さく黒い。中齢幼虫は未観察。カクモンハマキやアトボシハマキに似るが、頭部の色彩で区別できる。

寄主  様々な広葉樹、ヤナギ、クルミ、カバノキ、ブナ、ニレ、バラ、カエデ、モクセイ、カキノキ、クワ、マメ各科など、ヨーロッパトウヒ、カラマツ、草本。リンゴ、ナシ、サクラ類が主な食樹といわれる。

生態  年1回発生、成虫は6~8月に出現、幹や枝に産まれた卵で越冬するといわれている。
 北海道の低山地では終齢幼虫が6月中旬に採れ、飼育したところ6月下旬に成虫が羽化した。幼虫は数枚の葉を合わせて巣を作る。

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島、シベリア、千島。

被害と防除  果樹園のリンゴやナシでは主要害虫で、防除が行われている。他の樹種では発生量は少なく、木の成長や景観の面で問題になったことはない。防除は普通必要とされない。


文献
[1957] 江崎悌三ほか, 1957. 原色日本蛾類図鑑(上): I-XIX, 1-318, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1969] 一色周知監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): I-VI, 1-237, pls 1-68. 保育社, 大阪.
[1975] Yasuda, T., 1975. The Tortricinae and Sparganothinae of Japan (Lepidoptera: Tortricidae) (II). Bull. Univ. Osaka Pref., ser. B, 27: 79-251.
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1983] 上条一昭・駒井古実・鈴木重孝, 1983. ハマナスを加害する害虫. 光珠内季報, 55: 17-21.
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129.
[1986] 山口昭・大竹昭郎(編集), 1986. 果樹の病害虫, 診断と防除. 全国農村教育協会, 東京.(形態、生態、被害、防除)

2001/12/22