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林業試験場

モミコスジオビハマキ

モミコスジオビハマキ

写真1 幼虫。余市町、トドマツ。1985/6。

写真2 成虫。1968/7。

写真3 トドマツ被害。当麻町。1966/6/23。

写真4 食害、トドマツ。美唄市。1975/6。

被害の特徴
樹 種 トドマツなどモミ属。まれにトウヒ属、カラマツ。
部 位 新葉。
時 期 5~6月。
状 態 新芽が糸で綴られ食べられる。中に幼虫、蛹、蛹殻がみられる。
幼 虫 体長最大約20mm。体は黄色から黄緑色、背中に小さな黒点がある。頭とそのすぐ後は黒い。尾端背面はオレンジ色。
トドマツ林ではマツアトキハマキ、タテスジハマキ、クロタテスジハマキなども多発するが、これらの終齢幼虫は体が緑色で、黒い点がない。

和名  モミコスジオビハマキ(文献1984)

学名 命名者  Choristoneura jezoensis Yasuda and Suzuki, 1987

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae

 文献1984より前の論文・報告ではコスジオビハマキと混同されていた。


形態  概要は上記のとおり。詳細は文献1984、1987参照。

寄主  モミ属・トウヒ属・カラマツ(まれ)(文献1984)。トドマツ・エゾマツ(文献1987)。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985)。年1世代、2齢幼虫で越冬;芽が膨らみかけたころ、芽に食い入る;その後は新葉を綴って食べる;摂食部位で蛹になる(文献1984)。卵は葉にまとめて産みつけられる;孵化幼虫は枝の裂け目などに移動し、糸で越冬巣を作り、中で脱皮して越冬する(文献1987)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(休眠・越冬) ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇        ‥ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫(摂食・成長)         ◆◆◆ ◆◆◆                    
 蛹               + ++                 
 成虫・卵                 ◎◎◎                

分布  北海道(文献1984、1987)、本州(文献1984)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害など  トドマツ林でしばしば大発生し、とくに壮齢林に多い(文献1984)。人工林で大発生しても天然林では個体数が少ない;天然林では天敵の寄生蜂の個体数が多い(文献1979b、1991)。
 食害により木が枯れた記録はないが、何年も続くと枝枯れを起こすことがある。防除は普通必要とされない。


文献
[1970] 上条一昭・鈴木重孝, 1970. トドマツ造林地におけるハマキガの大発生とその防除. 森林防疫, 19: 79-83. (大発生要因、被害、防除)
[1971] 上条一昭・ 鈴木重孝, 1971. トドマツの大害虫コスジオビハマキ. 光珠内季報, 7: 2-14.
[1973] 上条一昭, 1973. コスジオビハマキの寄生性昆虫. 日本応用動物昆虫学会誌, 17: 77-83. (天敵)
[1979a] 鈴木重孝, 1979. コスジオビハマキの予察と防除. 森林防疫, 28: 33-37. (生態、天敵、天然林と単純林とでの発生の違い、予察)
[1979b] 鈴木重孝, 1979. 混交林と単純林とではハマキガとその天敵がどう違うか. 光珠内季報, 39: 18-22.
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)
[1987] Yasuda, T., & S. Suzuki, 1987. A new species of Choristoneura (Lepidoptea, Tortricidae) on conifers from Hokkaido. Konty?, 55: 232-239.(原記載、コスジオビハマキとの区別点)
[1991] Higashiura, Y., 1991. Pest control in natural and man-made forests in northern Japan. Forest Ecology and Management, 39: 55-64.

2011/3/31