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トビハマキ

トビハマキ

写真1 終齢幼虫、体長22mm。新得、ミズナラ。1993/6/11。

写真2 雌成虫、体長7mm。写真1の幼虫を飼育。

被害の特徴
樹 種 リンゴ・バラほか様々な落葉広葉樹。
時 期 春~夏。
部 位 葉、果実表面。
状 態 葉が糸で綴りあわされ食べられる。中に幼虫、蛹、蛹殻がみられる。
幼 虫 体長最大22mm前後。緑色で、頭やそのすぐ後の背面に黒点がある。

和名  トビハマキ

学名 命名者  Pandemis heparana (Denis et Schiffermuller)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae、ハマキガ亜科Tortricinae


形態  終齢幼虫は体長22mm内外。アカトビハマキと区別できないといわれている。北海道の個体は頭部と前胸背楯の黒斑がよく発達する点で区別できるかもしれない。なお、これら黒斑の発達程度は多少変異がある。胸脚も全体黒色のものから黄緑色で先端褐色のものまで変異がある。ウスアミメトビハマキにも似るが、頭部と前胸背楯の黒斑の状態が異なる。
 成虫はアカトビハマキに似るが、前翅の2本の横線の状態が異なる。

寄主  ヤナギ科、クルミ科、カバノキ科、ブナ科、ニレ科、カエデ科、バラ科、マメ科、ミカン科、クワ科、シナノキ科、グミ科、モクセイ科、ツツジ科など。

生態  年2~3回発生、若齢幼虫で越冬といわれている。
 北海道では老齢幼虫が低地で5月下旬、低山地で6月上旬に採れ、室内飼育したところ6月中~下旬に成虫になった。幼虫は夏にも発生すると思われるが未確認。幼虫は葉を2数枚糸でつづり合わせて巣を作り中に潜んでいる。刺激するとすぐに飛び出してくる

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島、中国、ロシア、ヨ-ロッパ。

被害など  果樹園のリンゴでは害虫とされ、防除が行われている。
 庭ではバラにときどき発生する。巣や食べ痕を目印に幼虫をみつけ駆除する。その他の樹木では発生量は少なく、防除は普通必要とされない。


文献
[1957] 江崎悌三ほか, 1957. 原色日本蛾類図鑑(上): I-XIX, 1-318, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1969] 一色周知監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): I-VI, 1-237, pls 1-68. 保育社, 大阪.
[1975] Yasuda, T., 1975. The Tortricinae and Sparganothinae of Japan (Lepidoptera: Tortricidae) (II). Bull. Univ. Osaka Pref., ser. B, 27: 79-251.
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1983] 上条一昭・駒井古実・鈴木重孝, 1983. ハマナスを加害する害虫. 光珠内季報, 55: 17-21.
[1986] 山口昭・大竹昭郎(編集), 1986. 果樹の病害虫, 診断と防除. 全国農村教育協会, 東京.(形態、生態、被害、防除)

1993/10/18