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林業試験場

ミノドヒラタモグリガ

ミノドヒラタモグリガ

写真1 ピスフレック、シラカンバ幹の横断面。芦別、1990/2/5。

写真2 幼虫の潜孔痕、シラカンバ樹皮下。新得、1990/6/4。

写真3 幼虫、シラカンバ樹皮下。新得、1990/6/4。

写真4 幼虫、シラカンバ樹皮下。新得、1990/6/4。

写真5 成虫、5mm、シラカンバ葉上。新得、1990/7/21/AM10:00。

写真6 卵、シラカンバ葉裏。新得、1992/8。

被害の特徴
樹 種 シラカンバ、ダケカンバ。
時 期 通年(食痕観察時期)。
部 位 幹や枝の材部。
状 態 材の横断面に小さな丸い褐色の斑点がある。最大径約1.5mm。縦断面では細い筋として現れる。
材の横断面では中心近く(髄から4cmまでの範囲)に発生する。
注) シラカンバではカンバミキモグリバエのピスフレックもよくみられる。カンバミキモグリバエのピスフレックは地際近くに集中し、材の横断面では年輪に沿った細長い形をしている。

和名  ミノドヒラタモグリガ

学名 命名者  Opostegoides minodensis (Kuroko)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ヒラタモグリガ科Opostegidae


形態  成虫は白色、体長5mm。
 幼虫はとても細長く、透明感の強い白色、終齢で体長20mm。胸脚・腹脚はない。頭部には1対の褐色の縦筋(硬化の強い部分)がある。ピスフレックの横断面は不整円形、直径0.1~1.3mm、大きなものは春材部に現われる(文献1984)。

寄主  シラカンバ(文献1984)やダケカンバ。ウダイカンバでの発生は観察していない。

生態  成虫は7月に出現し、日中は下草などの葉上でじっとしている(未発表資料)。卵は葉裏に1個ずつ産み付けられる;幼虫は8月頃に孵化、葉内を潜って枝に侵入する;幼虫は形成層やその周囲を食べながら、枝や幹の基部に向かい1mほど直進する(文献1990b)。ついで細長い楕円(長計10~20cm)を4~5回描きながら潜孔する(文献1984、1990b)。6月下旬~7月上旬に樹皮に穴をあけ、地面に落下し繭を作って蛹になる(文献1990b)。幼虫越冬(文献1984、1990b)。

分布  北海道・本州、ロシア。

被害  ピスフレックは材に汚れた感じを与えるが、材の強度にはほとんど影響がない(文献1958)。ミノドヒラタモグリガのピスフレックは樹幹では地際から先端まで見られ、髄から4cmまでの間に集中して発生する(文献1990c)。この部分を除去すればよい(文献1990a)。一方、ピスフレックは特異な外観を呈することから工芸的利用の可能性が示唆されている(文献1958、1983、1984)。


文献
[1958] 山林暹, 1958。木材組織学。森北出版、東京。
[1983] 田中潔・松崎清一, 1983. ダケカンバ材のピスフレック. 日本林学会誌, 65: 262-267.
[1984] 久万田敏夫, 1984. 広葉樹のピスフレック形成昆虫. 北方林業, 36: 120-129.
[1990a] 原秀穂・矢萩利雄, 1990. シラカンバのピスフレック. 北方林業, 42: 219-224.
[1990b] 原秀穂・矢萩利雄, 1990. シラカンバの形成層潜孔虫ミノドヒラタモグリガの産卵部位および幼虫の潜孔習性について. 日本応用動物昆虫学会誌, 34: 283-287.
[1990c] 矢萩利雄・原秀穂, 1990. シラカンバにおける形成層潜孔虫ミノドヒラタモグリガによるピスフレックの発生部位. 日本林学会誌, 72: 508-512.

2011/3/31