森林研究本部へ

林業試験場

クワゴマダラヒトリ

クワゴマダラヒトリ

写真1 老齢幼虫、体長29mm。2001/5/26。

写真2 若齢幼虫、体長7mm。滝川、クワ。2001/9/3。

写真3 若齢幼虫の巣(写真2の巣)。

被害の特徴
樹 種 クワやニセアカシアの他、各種広葉樹。
部 位 葉。
時 期 春と秋(幼虫加害時期)。
状 態 葉が食べられる、なくなる。枝や葉上に幼虫がみられる。被害木の下の地面に虫糞がある。 秋は主にクワに発生し、葉は黄色になり、糸が密にからむ。幼虫は春には分散して様々な植物を食害するが、糸は張らない。
幼 虫 体長最大約50mm。体は地色が黒く、青光りするコブと茶色のコブがあり、背中に白い線が走る。黒い毛と白い毛が混じる。小さな幼虫は黄色。頭部は黒色。幼虫はある程度成長すると体に青く光るコブが現れる。
クロバネヒトリやカクモンヒトリにやや似るが、これらでは頭部は赤褐色。
蛹は黄色、葉の中にみられる。

和名  クワゴマダラヒトリ

学名 命名者  Thanatarctia imparilis (Butler)
= Spilosoma imparilis (Butler)(文献1985)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ヒトリガ科Arctiidae


寄主  クワ、クリ、ミズナラ、カシワ、ヤナギ、サクラ、ウメ、スモモ、ウツギなど(文献1985)。秋はクワに多い。ハンノキ、ヤチダモ、ニセアカシアでも被害記録がある(樹木害虫発生統計資料参照)。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985を一部改変)。年1世代、幼虫越冬;春に新葉の展開とともに葉を食べ始める;雌成虫は卵を塊で産み腹部の毛でおおう;孵化した幼虫は集団で葉を網目状に食べる;10月に根ぎわに膜を張って越冬に入る(文献1985)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(越冬) ◇◇◇ ◇◇◇ ◇                 ‥ ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫(摂食・成長)         ◆◆◆ ◆◆◆        ‥ ◆◆◆ ◆‥     
 蛹               + +++                
 成虫・卵                  ◎◎ ◎◎◎            

分布  北海道・本州・四国・九州、台湾、中国。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  秋には主にクワで被害が発生する。翌春は周囲の様々な植物を加害する。市街地や海岸近くなど開けた場所でときどき多発する。たいてい1年ほどで終息する(樹木害虫発生統計資料参照)。食害された木が枯れた記録はない。
 秋に幼虫の巣を取り除いて駆除する。触ると体毛が皮膚に刺さることがあるので、ゴム手袋をすること。幼虫の巣は糸がびっしりと張り巡らされているので見つけやすい。


文献
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)

2011/3/31