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林業試験場

カラマツマダラメイガ

カラマツマダラメイガ

写真1 終齢幼虫。帯広市、カラマツ。2010/10/12。

写真2 終齢幼虫。帯広市、カラマツ。2010/10/23。

写真3 被害状況。帯広市、カラマツ。2010/10/12。

写真4 蛹。

写真5 成虫、雄。

被害の特徴
樹 種 カラマツ。
部 位 葉。
時 期 9月~10月上旬。
状 態 林が赤く見える。
葉や枝が糸で綴り合わされ、葉の断片や糞が付着する。幼虫や繭がみられる。
幼 虫 体長最大約14mm。頭部は淡い茶色、複雑な茶色の斑紋がある。胸腹部は背面が広く暗い茶色で、淡い縦縞が数対ある。横の縦縞は太い。腹面は広く淡い茶色。
小さな幼虫は緑色。
繭・蛹 長さ約1cm、白色。繭内の蛹は約7mm、茶色。

和名  カラマツマダラメイガ

学名 命名者・年  Cryptoblabes loxiella Ragnot, 1887
 異名 Cryptoblabes lariciana Mutuura, 1959(無効)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、メイガ科Pyralidae

形態  成虫・幼虫は文献1961に詳述されている。

寄主  カラマツ(葉・球果);他にズミ、ナラ類、クリ、ウルシ類、レンゲツツジ(文献1994参照)。

生態  本州中部山地での観察によれば,年1回発生(2回の可能性もある);成虫は5月下旬~7月上旬に羽化し、雌成虫は針葉を数枚合わせた中に産卵する;幼虫は7月下旬~8月上旬に孵化、初めは短枝葉の裏に糸を張り巡らし、その中で表皮を残して針葉の裏側を食べる;幼虫は10月上旬頃まで食害を続け、糸を引きながら地上に降下し、幹地際近くの樹皮の割れ目、付近の苔や地被物の中などに繭を作り、繭内で蛹になって越冬する(文献1961)。
 道内では7月上旬にミズナラで幼虫が採集され、飼育下で7月末~8月初めに成虫が羽化した記録(文献1984)がある一方で、カラマツ林では被害や幼虫が9~10月に観察されている(文献2012b)。このため、年2回発生の可能性が高い(2012b)。また、繭は地表近くだはなく、糸で束ねられた針葉の中に観察された(文献2012b)。

分布  日本:北海道(文献1984)、本州(文献1961)。マレー、インド。

被害など  被害は1954年に長野県のカラマツ林で初めて確認された(文献1961)。1950年代から1960年代まで長野県や山梨県で大発生がしばしば観察された(文献1994)。北海道内で被害が初めて確認されたのは2010年である(文献2012a、2012b)。被害は十勝中部で発生し、2012年現在継続中である。
 カラマツマダラメイガの被害による枯死木の発生及びカラマツヤツバキクイムシなどの二次被害による枯死木の発生は記録されていない;被害発生時期は秋であるため葉の回復(二次開葉)が極めて少ないが、光合成による養分蓄積の最盛期を過ぎている;また、カラマツヤツバキクイムシの飛翔活動は8月中旬頃に終了する;カラマツに与える食害の影響は比較的小さく,カラマツヤツバキクイムシの二次被害の危険も小さいと考えられる(文献2012b)。


文献
[1961] 一色周知・六浦 晃, 1961. 針葉樹を加害する小蛾類. 47pp.+20pl. 日本林業技術協会, 東京.
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129.
[1994] 山家敏雄, 1994. カラマツマダラメイガ. 小林富士雄・竹谷昭彦, 編集, 森林昆虫, 総論・各論, pp. 319-320.
[2012a] 佐山勝彦・上田明・原秀穂・小野寺賢介, 2012. 2010年に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 64: 133-136.
[2012b] 原秀穂, 2012. カラマツマダラメイガの被害が北海道で発生. 光珠内季報, 166, 1-2.
[2013] 佐山勝彦・尾崎研一・原秀穂・小野寺賢介, 2013. 2011年に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 65: 117-121.

2013/6/4