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林業試験場

ホシシャク

ホシシャク

写真1 中齢幼虫、体長9mm。芦別市、ヤチダモ。1992/ 6/15。

写真2 終齢幼虫、体長24mm。1992/6/25。写真1の個体を飼育。

写真3 蛹、体長15mm。1992/7/10。写真1の個体を飼育。

写真4 雌成虫、体長15mm。写真1の個体を飼育。

被害の特徴
樹 種 イボタ、ヤチダモ、ハシドイなどモクセイ科樹木。
部 位 葉。
時 期 5~6月。
状 態 葉が食べられる、なくなる。葉間に糸が張り巡らされる。幼虫や蛹がみられる。
幼虫・蛹 幼虫は体長最大約30mm。体は黒色、黄褐色の縦線が背面中央に一対、各側面の気門のところに1本ある。体毛は白く長い。老齢幼虫は黄褐色の細線が腹部後半の背面に網目状に現われ、また、各関節後方を横に走る。類似した幼虫はない。
蛹は体長15mm。茶色みを帯びた白色で、小黒点がある。

和名  ホシシャク

学名  Naxa seriaria

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、シャクガ科Geometridae


寄主  イボタ、ヤチダモ、ハシドイなどモクセイ科樹木。

生態  年1世代。成虫は6月中旬~7月中旬に羽化、昼飛性、越冬態は中齢幼虫、幼虫は集団で葉間に糸を張って食害、この糸の中で越冬および蛹化し、産卵も糸上に行なわれるという。北海道では6月下旬に蛹化、7月中旬に成虫が羽化し、幼虫は林床の落葉層に降りて越冬するらしい。

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島、シベリア南東部、中国。

被害と防除  本州などではイボタ、ネズミモチの害虫として知られる。北海道では空知芦別のヤチダモ人工林で1991~92年に多発した(文献1992、1993;写真の個体群)。この際、ハシドイの食害も観察された。食害された木の著しい衰弱や枯死は観察されていない。
 駆除には越冬中の幼虫集団の除去がよいといわている。


文献
[1969] 一色周知, 監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): 1-237, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1977] 小林富士雄, 1977. 緑化樹木の病害虫(下)害虫とその防除. 290pp. 日本林業技術協会, 東京.
[1979] 中島秀雄, 佐藤力夫, 1979. 日本産シャクガ科食草目録. Ⅱカバシャク亜科・ホシシャク亜科・アオシャク亜科. 蛾類通信, 100: 663-680.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1987] 杉敏郎, 編集, 1987. 日本産蛾類生態図鑑: 1-453, pls 1-120. 講談社, 東京.
[1992] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1992. 平成3年度に北海道に発生した森林昆虫. 北方林業, 44: 271-274. (ヤチダモでの被害記録)
[1993] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1993. 平成4年度に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 45: 291-294. (ヤチダモでの被害記録)
[1993] 吉田信行ほか, 1993. ホシシャクの生態とくん煙による防除試験. 平成4年度林業技術研究発表大会論文集: 152-153. 北海道林業改良普及協会, 札幌.

1994/5/1