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林業試験場

ナミスジフユナミシャク

ナミスジフユナミシャク

写真1 中齢幼虫、体長9mm。新得、シラカンバ。1992/5/28。

写真2 終齢幼虫、体長18mm。写真1の幼虫を飼育。1992/6/8。

写真3 体長9mm。写真1の幼虫を飼育。

被害の特徴
樹 種 広葉樹。
部 位 葉。
時 期 5~6月。
状 態 葉が食べられる、なくなる。幼虫がみられる。幼虫は葉を糸で綴って、その中にいることが多い。
幼虫 体長最大約20mm。体は緑色で、背中に黄色の縦縞がある。 腹脚は尾端近くに2対。
幼虫はウスバフユシャクなどのフユシャク類に似る。フユシャク類は巣を作らない、また、後から2番目の腹脚の前に小さな腹脚がある。

和名  ナミスジフユナミシャク

学名  Operophtera brumata

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、シャクガ科Geometridae


生態  寄主は様々な広葉樹。
 年1回発生。幹上で卵で越冬する。幼虫は早春に孵化し、新芽や若葉を食べて成長する。5月下旬から6月上旬頃に地上に降りて、落葉中や土の浅いところで繭を作って蛹になる。蛹は10月頃に成虫になる。雌成虫は翅がなく、幹を歩いて登る。

分布  北海道・本州・四国・九州、ユ-ラシア大陸。

被害観察地域(ナミスジフユナミシャクとチャバネフユエダシャク) (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  北海道では被害がハンノキ類、カンバ類、ミズナラ、サクラ類、シナノキ、カエデ類の人工林や天然林でほぼ10年おきに起こっている。被害は従来1~4年で終わっている。ウダイカンバは食害により枯れたり枝枯れを起こす。食害後にキクイムシ類による二次被害が起こり、木が枯れることもある。
 防除方法は確立されていない。9月頃に幹に粘着剤を塗って雌成虫を駆除する方法が考えられる。
 ウダイカンバについては被害発生直後の夏に葉の回復状況を観察する。葉のない枝が多数みられるような木は翌春までに収穫した方がよい。


文献
[1969] 一色周知, 監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): 1-237, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1987] 杉敏郎, 編集, 1987. 日本産蛾類生態図鑑: 1-453, pls 1-120. 講談社, 東京.
[1994] 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 1994. 森林昆虫, 総論・各論: 1-567. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除)
[1995] 原秀穂・東浦康友・洞平勝男・高橋儀昭, 1995. 道北地方の広葉樹林で大発生しているシャクガ類について. 森林保護, 250: 41-43. (ウダイカンバ被害)
[1997] 原秀穂・東浦康友・洞平勝男・高橋儀昭, 1997. ナミスジフユナミシャクの食葉被害によるウダイカンバの枝枯れ・枯損. 森林保護, 257: 7-8.
[1997] 伊藤賢介, 福山研二, 東浦康友, 原秀穂, 1997. 1996年に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 49: 224-227. (ウダイカンバ枯損記録)

1995/6/2