森林研究本部へ

林業試験場

マエアカスカシノメイガ

マエアカスカシノメイガ

写真1 幼虫、体長16mm。新得町、ヤチダモ。1991/8/17。

被害の特徴
樹 種 モクセイ科(ヤチダモ、アオダモ、イボタ、ハシドイ、ライラックなど)。
部 位 葉。
時 期 春から秋。
状 態 葉や葉の間に粗く糸が張られる。薄茶色に枯れた葉がある。幼虫がみられる。
幼 虫 体長最大約26mm。体は緑色でつやがある。頭部は黄褐色。前胸背楯(頭部のすぐ後ろ)はたいてい後方と側方で黒く縁取られる。中齢では刺毛基板(体毛の根元付近)が黒点となって現われるが、終齢ではこの黒点を欠くか、あるいは胸部背面両側にのみ現われる。この黒点を欠く個体はトビハマキなどに一見似るが、体のつやが強いことと巣の状態で区別できる。

和名  マエアカスカシノメイガ

学名 命名者  Palpita nigropunctalis (Bremer)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ツトガ科Crambidae


寄主  モクセイ科:ヤチダモ、ハシドイ、ライラック、イボタノキ(文献1985)。

生態  本州では成虫は4~9月に出現、幼虫は5~9月に出現するという。年2~3回発生し、蛹越冬らしいが詳細は明らかにされていない。北海道では年2世代;幼虫または蛹で越冬すると思われる(文献1985)。成虫は7~8月と9~10月に発生。幼虫は糸を吐いて数枚の葉をつづって巣を作り、その中で葉を食べる;老熟幼虫は葉を巻いて、その中で粗い繭を作って蛹になる;夏の蛹期間は10~14日(文献1985)。
 若い幼虫は葉の表面だけけずりとるように食べるので、食害された葉は薄茶色に枯れて目立つ。幼虫は糸を葉表や葉間に粗く張ってその下に潜む。体が隠れるような巣は作らない。幼虫の集団性は報告されていないが、ヤチダモで10頭ほどの幼虫がかたまって食害しているのを観察した。

分布  北海道・本州・四国・九州、サハリン、シベリア南東部、朝鮮半島。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  1978年に全道的に天然林他に大発生して、全葉を食害する被害が発生した(文献1979)。それを除けば、森林での被害は小規模である(樹木害虫発生統計資料を参照)。一般の壮齢林では全葉を食害されても木が枯死することはない(文献1985)。森林では防除は必要ないと考えられる。
 庭木の害虫としても良く知られている。幼苗が加害されると生長が阻害されると考えられる(文献1985)。幼虫を取り除いて駆除する。


文献
[1969] 一色周知監修, 1969. 原色日本蛾類幼虫図鑑(下): I-VI, 1-237, pls 1-68. 保育社, 大阪.
[1977a] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1977b] 小林富士雄, 1977. 緑化樹木の病害虫(下)害虫とその防除: 1-290. 日本林業技術協会, 東京.
[1979] 小泉力 1979. 昭和53年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業 31: 160-164.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)

2011/6/22