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林業試験場

写真1 蓑。1961/5/18。

写真2 食害葉。。虻田、1980/6。

写真3 食害。虻田、1980/6。

樹種カラマツ。
部位葉。
時期早春。
状態葉先が赤く枯れる。葉に薄茶色の蓑虫がいる。蓑は最大長約7mm。
被害の特徴

 寄主であるカラマツ属は北海道には自生しないため、北海道では外来種と考えられる。


 

和名  カラマツツツミノガ

学名 命名者・年  Coleophora longisignella Moriuti, 1972

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ツツミノガ科Coleophoridae


 

寄主  カラマツ(文献1984)。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985)。年1世代;幼虫越冬(文献1984)。幼虫は落葉期に枝先や幹枝の鶴などの巻きついた部分などに集まり、蓑を固定して越冬する(文献1985)。幼虫は中を食べて空にした葉を蓑にして、それを身にまとう;体の前半部をのりだして、葉の内部を食べる(文献1984)。老熟した幼虫は葉に蓑を直立させて固着し、蛹になる(文献1985)。成虫は6月に出現;卵から孵化した幼虫は最初、潜葉性である(文献1984)。

 発育ステージ~3月  4   5   6   7   8   9  10  11~
 幼虫(休眠・越冬)◇◇◇◇◇◇◇       ?◇◇◇◇◇◇
 幼虫(摂食・成長)   ◆◆◆       
 蛹    +++      
 成虫・卵   ◎◎◎     
 幼虫(摂食・成長)     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆?  

分布  北海道・本州(文献1984)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害など  カラマツ林で大発生する(文献1984・1985)。通常、1~2年で終息に向かう(樹木害虫発生統計資料を参照)。被害は5月頃に目立ち、林全体が赤くなる(文献1985)。しかし、1ヶ月足らずで緑に戻る。食害時期が葉の伸長初期なので、その後、食べ残された根元の緑の部分が伸びてくる。また、5月末からは長枝葉が展開する。 
 食害による木の著しい衰弱や枯れは例がない。また、穿孔虫などによる二次被害の記録もない。森林では防除は必要ない。


 

文献 
[1928] 相沢保, 1928. 落葉松林の被害と其防除法に就て. 北海道林業會報, 26(8): 512-526. 
[1984] 鈴木重孝・駒井古実, 1984. 北海道における針葉樹を摂食する小蛾類. 北海道林業試験場報告, 22: 85-129. [1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真) 
[1991] 東浦康友, 1991. カラマツツツミノガが札幌に発生. 光珠内季報, 84: 20-21.(過去の被害記録、生態や被害などの概要) 
[1994] 山家敏雄, 1994. カラマツツツミノガ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 320-321. (形態、生態など)

2011/6/21