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林業試験場

エゾミツボシキリガ

エゾミツボシキリガ

写真1 中齢幼虫、体長13mm。新得、ハルニレの若い実。1990/6/4。

写真2 老齢幼虫、体長18mm。新得、ハルニレの若い実。1990/6/15。

写真3 終齢幼虫、体長35mm。1990/6/25。写真2を飼育。

写真4 雄成虫、体長25mm。写真2を飼育。

被害の特徴
樹 種 ハルニレ。
部 位 若い実。
時 期 6月。
状 態 ハルニレの若い実が食べられる、なくなる。若い実が糸で綴り合わされ、中に幼虫がいる。
幼 虫 体長最大約40mm(写真1)。色彩は成長にともない変化する。若い幼虫は独特な色彩で識別は容易。老齢は頭部と尾端背面が体より明るい点でテンスジキリガに似るが、気門線(側面下方の線)が白く明瞭で、中胸、後胸、腹部第2と8節で太まる。終齢は側面の下の方に白い斑点がある。

和名  エゾミツボシキリガ

学名  Eupsila transversa

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ヤガ科Noctuidae


生態  宿主はポプラ、シラカンバ、コナラ、ハルニレ、ズミなど様々な広葉樹(文献1987)。ハルニレの若い実(文献1996)。
 年1化。成虫は9~10月および4~5月に出現、成虫越冬といわれている(文献1958、1982)。北海道の低山地では6月上旬に中~終齢幼虫が採れ、飼育したところ6月下旬~7月上旬に土中で繭となり、9月下旬に成虫になった。中齢幼虫は樹上で若い実を綴って巣を作っていたが、老齢幼虫は樹上にみられなかった。

分布  北海道・本州。

被害  1990~92年十勝新得町でハルニレの実が豊作になったが、昆虫による食害率は毎年90%以上に達した。エゾミツボシキリガは1990年にきわめて個体数が多く、実の食害の主要種と考えられた(文献1992、1996)。


文献
[1958] 江崎悌三ほか, 1958. 原色日本蛾類図鑑(下): I-V, 1-303, pls 65-136. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1987] 杉敏郎(編集), 1987. 日本産蛾類生態図鑑: 1-453, pls 1-120. 講談社, 東京.
[1992] 清和研二, 1992. ハルニレの種子散布と稚苗の出現. 日本林学会北海道支部論文集, 40: 77-79.
[1996] 原秀穂, 1996. ハルニレの種子の害虫. 光珠内季報, 101: 4-7. (被害、生態、形態)

2001/4/9