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林業試験場

クスサン

クスサン

写真1 若齢幼虫、体長8mm、美唄、クリ、1994/5/28。

写真2 中齢幼虫、体長23mm、1994/6/7。写真1を飼育。

写真3 写真3 終齢幼虫、体長70mm、1994/6/22。写真1を飼育。

写真4 雌成虫、体長30mm。写真1を飼育。

写真5 卵塊。美唄、クリの幹上、2000/4/30。

写真6 繭。美唄、ウダイカンバ幹上、2001/8/1。

写真7 ウダイカンバの被害。美唄、2001/8/1。

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写真8 照明に飛来した成虫。美唄、2007/9/3。
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      <!-- 表写真終了 -->
      <!-- 表1 -->
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被害の特徴
樹 種 落葉広葉樹(クルミ、クリ、トチノキ、ウダイカンバなど)。
部 位 葉。
時 期 5月~7月(幼虫加害時期)。
状 態 葉が縁から食害される。 太い葉脈が残ることが多い。
食害部位や周辺に幼虫(写真1~3)がいる。糸はみられない。 食害木や周辺に繭(写真6)が見られる。
被害部位の下に虫糞がある。 幹上に卵や卵の抜け殻がある(写真5)。
幼虫 体長は最大約8cm。小さなうちは数頭から十頭程度の集団でいることが多いが、成長すると単独でいる。
小さな時は黒色(写真1)。成長すると腹部の側面下方が黄色になる(写真2)。 老齢幼虫は胸腹部背面が水色で、水色の柔らかな長毛が密生する(写真3)。
繭は茶色で網目状。中の蛹がみえる。

和名  クスサン(文献1929ほか)
別名 クリケムシ、シラガタロウほか(文献1929)

学名 命名者・年  Caligula japonica (Moore, 1872)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ヤママユガ科Saturniidae


寄主  クリ、クスノキ、クルミ、ウルシ、ギンドロ、リンゴ、サクラ、ケヤキなど20種(文献1929)。イチョウ、ヤナギ科、クルミ科、ウダイカンバ、ブナ科(クリなど)、ニレ科、バラ科(ウメ、サクラなど)、ミズキ、ヌルデ、トチノキなどアンズ、ウメ、カイドウ、サクラ、スモモ、バラなどのバラ科樹木、ヤナギ類、ミズナラ、クリなど各種の広葉樹。

生態  年1 回発生。卵越冬。幼虫は早春に孵化する。小さなうちは集団でいる。成長すると単独で葉を食害する。7月頃に樹上や下草上で茶色の網目状の繭を作り蛹になる。8月下旬~9月に成虫が羽化する。雌成虫は数十から数百個の卵を幹上にまとめて産む。夜間、照明に飛来し、周辺に産卵することもある。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 卵 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇‥           ‥ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫          ‥◆ ◆◆◆ ◆◆‥                
 蛹                  ‥+ +++ +‥         
 成虫                      ‥◎ ◎◎◎ ‥      

分布  北海道・本州・四国・九州・対馬、シベリア南東部。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)
 2009~2010年には空地中部や上川南部地方で照明への成虫の大量飛来が観察されている(新聞報道、林業試験場への相談)。

被害  日本では古くからクリの害虫として知られ、明治・大正時代にも各地で被害が発生した(文献1929参照)。
 森林や街路樹のトチノキ、クリ、クルミにしばしば多発する。北海道では近年、森林のウダイカンバで多発するようになった(文献1992)。食害後1ヶ月もすれば再び葉を開き回復する。ただ、ウダイカンバでは被害が数年続き、枯死木が発生する例が観察されている。

被害対応・防除  ウダイカンバ林で被害が発生した場合は、被害状況を継続的に観察し、枯死木が発生するようであれば、収穫・利用を検討する。
 幼虫・成虫に毒性は知られていない。照明に集まった成虫を集めて処分する場合は、鱗粉が舞うため、マスクとゴーグルを着用する。照明の近くの卵塊は美観を損ねるが、放置しても問題ない。この場合、翌春、幼虫が孵るが、餌がないため死滅する。
 庭木や街路樹では秋から早春に幹上の卵塊をみつけて取り除くか、木槌などで叩きつぶす。小さな幼虫は木の下の方の葉に集団でいることが多いため、見つけて処分する。
 樹木類のケムシ類に適用できる農薬が各種ある。


文献
[1929] 名和梅吉, 1929. クスサン(樟蠶)の大発生と被害植物について. 昆虫世界, 33: 222-227, pl. 1. (この時点での加害樹種のとりまとめ、明治・大正時代の被害の概要や文献)
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑, Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1987] 杉敏郎, 編集, 1987. 日本産蛾類生態図鑑: 1-453, pls 1-120. 講談社, 東京.
[1992] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1992. 平成3年度に北海道に発生した森林昆虫. 北方林業, 44: 271-274. (ウダイカンバで初めての多発記録)
[1994] 福山研二, 1994. 北海道でウダイカンバとトチノキに同時代発生したクスサン. 森林防疫, 43: 69-73. (上記被害の詳細)

2012/6/21