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スギノハダニ

スギノハダニ

写真1 スギノハダニによると思われる被害。函館、1977/8/2。

被害の特徴
樹 種 スギ。
部 位 葉。主に苗木。
時 期 春~秋(加害時期)。
状 態 全体がかすんだように褐色に変わる。針葉の四隅を除くすべての部分に被害が現れ、最初はすじ状の白~黄斑が生じ、やがて褐色になる。
ルーペで観察すると微細な糸、点状の黒い糞、ごく微小なダニがみられる。
ダニは最大長約0.45mm。濃緑色、または前方が橙色で後方が赤褐色。背毛の根元はこぶ状にならない。スギにはエゾスギツメハダニも寄生するが、この種では背毛の根元にこぶがある。

和名  スギノハダニ(文献2007など)

学名 命名者・年   Oligonychus hondoensis (Ehara, 1954)

分類  ダニ目Acari、ケダニ亜目Prostigmata、ハダニ科Tetranychidae


形態  文献1993、1994、2007を参照。カラー写真が文献1993にある。

寄主  スギ(文献1993、2007)。

生態  葉から樹液を吸収する。被害は針葉の四隅を除くすべてに現れる;卵越冬;休眠卵は濃赤色で、針葉の裏側や枝に産まれる(文献1993、2007)。

分布  北海道南部・本州・四国・九州・沖縄本島、韓国、中国、アメリカ(文献1993)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害  1950年台後半に九州を中心に全国各地の造林地に大発生して問題になった;法定森林害虫の一つに指定されている(文献1994)。北海道では1977~1979年に道南で大発生した(文献1978、1979、1980)。1~2年目の枝や苗木が被害を受けやすく、苗木では枯死することもある;被害木はかすんだように全体が褐変するため、遠くからでもわかる(文献1993、2007)。被害により成長量は減少し、激害の場合は立木の梢端部が枯れることもあるが、立木が枯死することはほとんどない(文献1994)。

防除  木が枯死することはほとんどないため、森林では普通、防除の必要はないと考えられる。苗畑で駆除が必要な場合はハダニ用の農薬を散布する。


文 献
[1978] 小泉力 1978. 昭和52年度に発生した森林害虫. 北方林業 30: 162-165.
[1979] 小泉力 1979. 昭和53年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業 31: 160-164.
[1980] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1980. 昭和54年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 32: 159-163. [1993] 江原昭三(編), 1993. 日本原色植物ダニ図鑑. 298 pp. 全国農村教育協会, 東京.
[1994] 西村正史, 1994. スギノハダニ. 小林富士雄・竹谷昭彦, 編集, 森林昆虫, 総論・各論: 448-450. 養賢堂, 東京.
[2007] 江原昭三・後藤哲雄・上遠野富士夫・岡部貴美子, 2007. 植物ダニ類の見分け方. 120pp. 日本植物防疫協会, 東京.

2010/3/31