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林業試験場

カンバミキモグリバエ

カンバミキモグリバエ

写真1 ピスフレック、幹横断面。新得、シラカンバ、1990/2/5。

写真2 幼虫の潜った痕。シラカンバ地際近く、樹皮を剥がしたところ。新得、1991/7/31。

写真3 幼虫、体長19mm。写真2の樹皮下。

写真4 雌成虫、体長4mm。新得、シラカンバ樹冠下の羽化トラップで採集、1990/6/4。

被害の特徴
樹 種 シラカンバなどカバノキ属、ハンノキ属。
時 期 通年。
部 位 材の内部。
状 態 幹の地際の材内に茶色のすじ(ピスフレック)がある。
横断面では斑点として現れる。年輪に沿った細長い形で、長さ最大約4mm。縦断面では縦筋となって現れる。
ウダイカンバでの発生はごく少ないようである
注) カバノキ属にピスフレックを作る昆虫には他にミノドヒラタモグリガがある。この種のピスフレックは断面が直径1~2mmの円形で、幹や枝の中心(髄)近くに発生する。

和名  カンバミキモグリバエ(文献2006)
別名 カバノモグリバエ(文献1994)

学名  Phytobia betulae

分類  ハエ目(双翅目)Diptera、ハモグリバエ科Agromyzidae


寄主  宿主はシラカンバ、ダケカンバなどカバノキ属、ケヤマハンノキ。

生態  年1世代のようである。成虫は6月に出現する。伸び始めた若い枝に卵を1個ずつ産む。幼虫は最初、樹皮下を地際に向かって直進する。地際部では上下に樹皮下を食い進みながら成長する。このため、大きなピスフレックは地際近くに集中する。7月下旬頃には樹皮に穴をを開けて外に出る。土中で蛹になり越冬すると思われる。

分布  北海道、ヨーロッパ。

被害と防除  木を伐倒した際に断面に多数のピスフレックがあり驚くことがある。カンバミキモグリバエのピスフレックはたいてい地上高1m以上ではほとんどみられない。ミノドヒラタモグリガのピスフレックは随の周辺に限られる。このため、地際近くや随の周辺を避けて材を利用する限りは問題とされない。なお、ピスフレックは材の強度にはほとんど影響ないといわれている。特異な外観を呈すので工芸的な利用も考えられる。


文献
[1958] 山林暹, 1958。木材組織学。森北出版、東京。
[1983] 田中潔・松崎清一, 1983. ダケカンバ材のピスフレック. 日本林学会誌, 65: 262-267.
[1984] 久万田敏夫, 1984. 広葉樹のピスフレック形成昆虫. 北方林業, 36: 120-129.
[1990] 原秀穂・矢萩利雄, 1990. シラカンバのピスフレック. 北方林業, 42: 219-224.
[1994] 原秀穂, 1994. シラカンバのピスフレック形成昆虫カバノモグリバエの生活史. 第42回日本林学会北海道支部論文集: 162-164. (生態)
[2006] 日本応用動物昆虫学会(編集), 2006. 農林有害動物・昆虫名鑑, 増補改訂版. 387pp. 日本応用動物昆虫学会, 東京.

2007/3/31