ハリエンジュハベリマキタマバエ
ハリエンジュハベリマキタマバエ Obolodiplosis robiniae
写真1 被害。札幌、ハリエンジュ、2007/8/21。 |
写真2 虫こぶ。写真1の被害木の一部。 |
写真3 幼虫。写真2の虫こぶ内部。 |
| 樹 種 | ハリエンジュ（ニセアカシア）。 |
| 部 位 | 葉。 |
| 時 期 | 6～9月。 |
| 状 態 |
葉の縁が巻かれるように膨らむ。長さは1cm前後。中に幼虫・蛹がいる。
幼虫は体長最大約4mm、乳白色。頭部が不明瞭で、胸脚・腹脚はない。 |
北米原産の種で、日本では侵入種と考えられる（文献2003）。2000年代に突然、日本・韓国・中国及びヨーロッパで発生した（文献2008a）。北海道では2007年に確認された（文献2010）。
寄主が北米原産のハリエンジュだけであるため、生態系への影響はほとんどないと考えられる（文献2010）。
和名 ハリエンジュハベリマキタマバエ（文献2005）
学名 命名者・年 Obolodiplosis robiniae (Haldemann, 1847)
分類 ハエ目（双翅目）Diptera、タマバエ科Cecidomyiidae
形態 成虫は文献1981・2003、蛹は文献2005に詳述されている。幼虫の概観は上述のとおり（文献2010参照）。
寄主 ハリエンジュ（ニセアカシア）（文献1988）。
生態 本州や九州では6～12月まで新しい虫こぶが見られることから、ハリエンジュの開葉する頃から成虫が羽化・産卵し、利用可能な新葉がある限り発生すると考えられている（文献2005）。 成虫は新芽先端に産卵する（文献2008a）。 幼虫は虫こぶの中で蛹になり、そこから成虫が羽化する；成虫が羽化すると間もなく虫こぶの付いている小葉は落下する（文献2005）。 ヨーロッパでは越冬の際には十分成長した幼虫が土中に潜り繭になるという報告がある（文献2005参照）。北海道で新鮮な虫こぶを確認しているのは6月中旬～9月上旬であるが、本州・九州同様に開葉頃に成虫が羽化産卵し、その後、新葉がある間に数世代繰り返していると考えられる（文献2010）。
分布 北海道（文献2010）、本州・四国（文献2005）、九州（文献2003）。韓国（文献2003）、中国、ヨーロッパ（文献2008a）。
発生観察地域 （文献2010）
被害 被害により多くの葉が変形・変色または脱落し木の外観が悪化する。葉が脱落しても通常、新しい枝が伸びる；激しい被害は例がなく、木が枯死することはないようである（文献2008a）。札幌市の発生では被害木下の道路に多数の幼虫が落下してうごめき、飲食店のある道路沿いの街路樹であったため不快害虫としても問題になった（文献2010）。
防除 発生量は全般に少なく、防除は必要ない；観賞用の木では虫こぶを取り除く（文献2010）。2010年現在、このタマバエの防除用に登録された農薬はない。
文献
［1981］ Gagne, R. J., 1981. Cecidomyiidae. pp. 257-292. In McAlpine, J. F., B. V. Peterson, G. E. Shewell, H. J. Teskey, J. R. Vockeroth and D. M. Wood (eds.), Manual of Nearctic Diptera, 1. Research Branch Agriculture, Canada.
［1988］ Johnson, W. T., and H. H. Lyon, 1988. Insects that feed on trees and shrubs. Second edition. 556pp. Cornel University Press, New York.
［2003］ Kodoi, F., H.-S. Lee, N. Uechi and J. Yukawa, 2003. Occurrence of Obolodiplosis robiniae (Diptera: Cecidomyiidae) in Japan and South Korea. Esakia, (43): 35 - 41.
［2005］ 上地奈美・湯川淳一・薄葉重, 2005. 最近各地で発見されている侵入害虫ハリエンジュハベリマキタマバエOtiorhynchus robiniae （ハエ目：タマバエ科）の分布情報と蛹の形態記載. 九州病害虫研究会報, 51: 89-93.
［2008a］ European and Mediterranean Plant Protection Organization, 2008. EPPO Reporting Service, (10). 30pp.
［2008b］ Buhl, P. N., and C. Duso, 2008. Platygaster robiniae n. sp. (Hymenoptera: Platygastridae) Parasitoid of Obolodiplosis robiniae (Diptera: Cecidomyiidae) in Europe. Annals of the Entomological Society of America, 101: 297-300.（寄生蜂の記載。）
［2010］ 原秀穂, 2010. 最近、北海道で樹木被害が確認された外国からの侵入害虫. 光珠内季報, 159: 13-17.