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林業試験場

クロエゾマツハバチ

クロエゾマツハバチ

写真1 被害枝。1992/7/4。

写真2 亜終齢・終齢幼虫、体長最大12mm。1992/6/10。

写真3 写真2の拡大。

写真4 雌成虫、体長6.5mm。1992/5/10採集。

写真5 卵。1992/5/20。


写真1~5 新得の庭のエゾマツ低木に多発した個体群。

被害の特徴
樹 種 エゾマツ、ヨーロッパトウヒ(少ない)。
部 位 新葉(当年生葉)。
時 期 5月下旬~6月中旬(幼虫食害時期)。
状 態 幼虫は葉を先端から食害する。 食害部位に幼虫や幼虫の脱皮殻が見られる(写真1~2)。 糸、蛹、蛹の抜け殻はみられない。 被害木下の落葉層中に繭や繭殻がある。
幼 虫 体長最大約12mm。 胸腹部は淡い黄緑色で(写真1~2)、終齢では背面に3本の暗色の縦縞があり、側面下方に黒斑が現れる(写真2)。頭部は亜終齢では淡黄褐色、終齢では淡黄緑褐色。 単独性または集団性。
ハバチ科では腹部に体液の分泌腺はなく、胸脚の爪に付属物はない。
ハバチ亜目では眼(側単眼)は左右に各1個、脱皮殻は頭部から腹部までつながり、頭部が縦中央で割れる。
注) トウヒ属の新葉を食べるハバチは他に数種あるが、体色等で区別できる。アカエゾマツにはよく似たアカエゾマツハバチが発生する。

和名  クロエゾマツハバチ(仮称)

学名   Pristiphora sp. (種名未確定)

分類  ハチ目(膜翅目)Hymenoptera、ハバチ亜目(広腰亜目)Symphyta、ハバチ科Tenthredinidae


形態  幼虫は上述のとおり(文献1993)。
 Pristiphora属の幼虫は触角が4節、頭楯刺毛が2対、大顎刺毛が各1本、腹部第1~8節背面の小環節数が各6、第2・4小環節に微毛を有し、胸腹部に突起はない。

生態  寄主はエゾマツ、ヨーロッパトウヒ(少ない);年1回発生;エゾマツの芽が開く頃(5月上中旬)に成虫が現れる;雌成虫は開いたばかりの新芽の葉に卵を1個ずつ産み付ける;産卵は特定の新芽に集中する傾向があり、幼虫は集団でいることが多い;6月中旬には十分成長し、地上に降りて落葉中で繭を作る;繭内で越冬する(文献1993)。

分布  北海道(文献1993)。

被害  庭のエゾマツ低木で激しい食害を1例観察している(文献1993)。

防除  食害により枝枯れが生ずる場合があるので、幼虫をみつけたら取り除く。 “まつ類”の“ハバチ類”に適用可能な農薬としてMEP乳剤(商品名スミパイン乳剤・普通物・魚毒性B)及びジフルベンズロン水和剤(商品名デミリン水和剤・普通物・魚毒性A)がある(2009年10月時点)。


文 献
[1993] 原秀穂, 1993. トウヒ属を加害するハバチ科Pristiphora属3種の区別点と生態について. 第41回日本林学会北海道支部論文集: 85-87.

2010/3/31