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ナラムレナメクジハバチ

ナラムレナメクジハバチ

写真1 幼虫の食害状況。上川、ミズナラ、2008/8/29。

写真2 亜終齢幼虫、体長最大12mm。写真1の葉裏。

写真3 亜終齢幼虫。写真2の幼虫の側面。

被害の特徴
樹 種 ミズナラ。
部 位 葉。
時 期 7月~8月(幼虫食害時期)。
状 態 葉が透けたり、茶色になる(写真1)。 変色部位は葉の裏側が削り取られ、表側の表皮だけが残る。 食害部位やその近くの葉の裏側に幼虫や幼虫の脱皮殻が見られる(写真2-3)。 糸、蛹、蛹の抜け殻はみられない。 秋から翌春までは、被害木根際の土中にもろい繭がある。
幼 虫 体長最大12mm。 胸腹部は粘質物におおわれ、光沢のある濁った黄色から淡い灰色にみえる(写真2-3)。 頭部はほぼ黄色。胸部が少し膨らむ。 集団性で、互いに体を接触させる。 繭内の老熟幼虫は粘質物がなくなり、鮮やかな黄色で単眼のみ黒色。
ナメクジハバチ属では胸腹部は粘質物におおわれ、前胸脚基部に前方に延びる肉状突起がある。ハバチ科では腹部に体液の分泌腺はなく、胸脚の爪に付属物はない。
ハバチ亜目では眼(側単眼)は左右に各1個、脱皮殻は頭部から腹部までつながり、頭部が縦中央で割れる。
繭は長さ7mm、土に覆われ、もろく崩れやすい。
コナラ属を食べるナメクジハバチ属は他に数種知られているが、この種は集団性で葉を一枚ずつほぼすべて食べつくしながら移動する点が特徴。

 2000年代に入って青森県のミズナラ林で被害が発生している(文献2011)。


和名  ナラムレナメクジハバチ(文献2011)

英名  oak gregarious slug sawfly(文献2011)

学名 命名者・年   Caliroa nara Hara, 2011

分類  ハチ目(膜翅目)Hymenoptera、ハバチ亜目(広腰亜目)Symphyta、ハバチ科Tenthredinidae


形態  種の特徴は文献2011、ナメクジハバチ属の特徴については文献1965、1971に記述がある。

寄主  ミズナラ(文献2011)、モンゴリナラ(文献2000)。

生態  北海道では年1回発生、幼虫は8月に観察されている;青森県では年2回発生、幼虫が7~8月と9月下旬~10月に観察されている(文献2011)。韓国では年1回発生(文献2000)。
 卵は葉裏の主脈や側脈のそばに並べて産みつけられる;幼虫は集団で、葉裏を食べ、表側の表皮を残す;老熟すると、脱皮し土に潜り繭になる;繭内で越冬(文献2011)。

分布  北海道・本州、韓国(文献2011)。

被害  韓国では1996~2000年に大発生したが、枯死木の発生は観察されていない;国内では青森県で2004年に被害が発生し、その後も被害が観察されている(文献2011)。北海道ではこれまで激しい被害は報告されていない。

防除  殺虫剤による駆除効果は極めて高い(文献2000参照)。


文 献
[2000] Kim , C.-S., J.-D. Park, Y.-S. Park, S.-G. Lee and S.-C. Shin, 2000. Ecology and chemical control of Caliroa carinata (Hymenoptera: Tenthredinidae). Journal of Korean Forestry Society, 89: 685?690. (韓国語、英文要約;被害、生態、殺虫剤の効果)
[2011] Hara, H., 2011. A new slug sawfly, Caliroa nara sp. nov. (Hymenoptera, Tenthredinidae), infesting oak trees, with taxonomic notes on C. angustata and C. annulipes. Japanese Journal of Systematic Entomology, 17: 369-383. (原記載、形態、生態、被害)

2012/1/12