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ニホンキバチ

ニホンキバチ

写真1 スギ材横断面の星形変色。1996/11/27。

写真2 雌成虫。松前(文献1997で捕獲された個体)。

被害の特徴
樹 種 トドマツ、モミ、ウラジロモミ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキ、サワラ。
部 位 幹(材)。
時 期 通年(幼虫食害時期)。
状 態 幹の横断面に星形の変色が現れる(写真1)。
丸太や衰弱木の幹に直径5~8mmの円形の穴が開く(成虫の脱出孔)。幼虫が食害中の木を外見から判断することは難しい。
樹皮に成虫がいる(写真2)。翅は黄色で、外縁明らかに曇り暗色である。腹部第3~7節は常に黒い。成虫は7~10月に羽化する。
幼 虫 体長最大23mm。全体黄白色、頭部に斑紋はなく大あごは黒褐色、尾節の背面の凹陥部は淡褐色で、尾端突起の基部近くに淡褐色の横紋がある。肛門上片はやや黄色を帯び,尾端突起は黒褐色である。触角は1節。
キバチ科は胸部と腹部はほぼ同じ太さ、触角は1~2節、頭頂に溝はなく、胸部第3節の気門は腹部の気門とほぼ同大。
注) 丸太に直径5~10mmの円い穴を開ける昆虫として他にオオゾウムシがあるが、この種は伐根や湿気が多い場所の丸太に発生し、穴から大量の木くずが出る。

和名  ニホンキバチ
別名 ヒメキバチ(文献1912)。

学名 命名者・年   Urocerus japonicus (Smith, 1874)

分類  ハチ目(膜翅目)Hymenoptera、ハバチ亜目(広腰亜目)Symphyta、キバチ科Siricidae


形態  幼虫は上述のとおり(詳細は文献1959、1962)。成虫については文献1938・1988が詳しい。

寄主  アカマツ(文献1967)、カラマツ・ヒノキ(文献1967、引用元不明)。トドマツ、モミ、ウラジロモミ、クロマツ、スギ、サワラ(文献1996)。

生態  道南では8~9月に成虫が出現する(文献1997)。生態は文献1989bに記述されている。

分布  北海道・本州・四国・九州(文献1938)、屋久島・朝鮮半島(文献1989a)。

被害  幼虫が材内を食べるため、材の品質を低下させる。共生菌により材に変色が生ずる。


文 献
[1912] 松村松年 1912. 續日本千蟲図解, 4: 1- 247; Tab. 42-55. 警醒社, 東京.
[1938] Takeuchi, K., 1938. A systematic study on the suborder Symphyta (Hymenoptera) of the Japanese empire (I). Tenthredo, 2: 173-229.
[1959] 奥谷禎一・石井梯・安松京三, 1959. 膜翅目. 江崎悌三・石井梯・河田党・素木得一・湯浅啓温(編), 日本幼虫図鑑: 546-590. 北隆館, 東京.
[1962] 奥谷禎一, 1962. キバチ科の幼虫について. 第72回日本林学会大会議演集: 342-343.
[1967] 奥谷禎一, 1967. 日本産広腰亜目(膜翅目)の食草(I). 日本応用動物昆虫学会誌, 11: 43-49.
[1988] 奥谷禎一, 1988. 木材に穿孔するキバチとクビナガキバチについて. 日本家屋害虫学会(編), 家屋害虫2: 215-225. 井上書院, 東京.
[1989a] 阿部正喜・富樫一次, 1989. ハバチ亜目. 平嶋義宏(監修), 日本産昆虫総目録: 541-560. 九州大学農学部昆虫学教室, 福岡.
[1989ba] 奥田素男, 1989. ニホンキバチ. 林業と薬剤, 108: 1-8.
[1996] 佐々木克彦, 1996. キバチとその共生菌と林木被害. 北方林業, 48: 265-269.
[1997] 館和夫・原秀穂, 1997. スギ造林木を加害するキバチ類の捕獲調査結果について. 平成8年度北海道林業技術研究発表会大会論文集: 112-113. 北海道林業改良普及協会, 札幌。

2010/3/31