トドマツノキバチ
トドマツノキバチ Xoanon matsumurae
写真1 雌成虫。むかわ、1984/5。 |
|
|
| 樹 種 | トドマツ、モミ、エゾマツ、カラマツ。 |
| 部 位 | 幹（材）。 |
| 時 期 | 通年（幼虫食害時期）。 |
| 状 態 |
丸太や衰弱木の幹に直径5～8mmの円形の穴が開く（成虫の脱出孔）。幼虫が食害中の木を外見から判断することは難しい。
樹皮に成虫がいる（写真1）。体長20～40mm、体は黄色で黒い縞模様がある。春から夏に出現する。 |
| 幼 虫 |
種の特徴は不明。
キバチ科は体長最大25mm、全体黄白色、大あごは黒褐色、腹部末端には褐色の尾端突起を持つ。胸部と腹部はほぼ同じ太さ。触角は1～2節。頭頂に溝はない。胸部第3節の気門は腹部の気門とほぼ同大。 |
| 注） |
他のキバチとの区別点は不明だが、本種による成立木の材の変色は確認されていない。
丸太に直径5～10mmの円い穴を開ける昆虫として他にオオゾウムシがあるが、この種は伐根や湿気が多い場所の丸太に発生し、穴から大量の木くずが出る。 |
和名
トドマツノキバチ
別名 マツノオオキバチ（文献1912）。
学名 命名者・年 Xoanon matsumurae (Rohwer, 1910)
分類
ハチ目（膜翅目）Hymenoptera、ハバチ亜目（広腰亜目）Symphyta、キバチ科Siricidae
本種は文献1910において札幌の標本に基づき新種記載された。
形態 幼虫は上述のとおり（文献1962参照）。成虫については文献1938、1988を参照。
生態
宿主はエゾマツ・トドマツ（文献1912）、モミ・カラマツ（文献1967、引用元不明）。
2～3年で1世代といわれている；成虫は5～8月に出現；成虫は樹皮表面から細長い産卵管を差し込み材内に産卵する；幼虫は材を食べて成長し、材内で蛹になり、羽化した成虫は穴を開けて外に出る（文献1985）。
担子菌の1種が体内から分離されたが、変色を起こすのか分かっていない（文献1996）。
分布 北海道・本州・四国・九州・千島・サハリン・東シベリア・中国・朝鮮半島（文献1989）。
被害 幼虫が材内を食べるため、材の品質を低下させる。また、新築住宅の柱や板から成虫が出てきて問題にされた例もある。なお、成虫は蜂だが人を刺すことはない。また、樹皮のない木には産卵しないので、家屋内で増殖することはない。
防除 材製品の十分な殺虫処理や検査が必要である。
文 献
［1910］ Rohwer, S. A., 1910. Japanese sawflies in the collection of the United States National Museum. Proceedings of the United States National Museum, 39: 99-120.
［1912］ 松村松年 1912. 續日本千蟲図解, 4: 1- 247; Tab. 42-55. 警醒社, 東京.
［1938］ Takeuchi, K., 1938. A systematic study on the suborder Symphyta (Hymenoptera) of the Japanese empire (I). Tenthredo, 2: 173-229.
［1962］ 奥谷禎一, 1962. キバチ科の幼虫について. 第72回日本林学会大会議演集: 342-343.
［1967］ 奥谷禎一, 1967. 日本産広腰亜目（膜翅目）の食草（Ｉ）. 日本応用動物昆虫学会誌, 11: 43-49.
［1985］ 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌.
［1988］ 奥谷禎一, 1988. 木材に穿孔するキバチとクビナガキバチについて. 日本家屋害虫学会（編）, 家屋害虫2: 215-225. 井上書院, 東京.
［1989］ 阿部正喜・富樫一次, 1989. ハバチ亜目. 平嶋義宏（監修）, 日本産昆虫総目録: 541-560. 九州大学農学部昆虫学教室, 福岡.
［1996］ 佐々木克彦, 1996. キバチとその共生菌と林木被害. 北方林業, 48: 265-269.