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林業試験場

クリタマバチ

クリタマバチ

写真1 虫えい。小樽、クリ、2008/6/25。

写真2 古い虫えい。函館、1970/10。

写真3 被害状況。函館、1970/10。

被害の特徴
樹 種 クリ。
時 期 通年(虫えいが観察される時期)。
部 位 枝先。
状 態 新しい虫えいは赤く、小さな葉が数枚付く(写真1)。内部に幼虫が数頭いる。
古い虫えいは小さな穴があき、枯れて枝に残る。
幼 虫 体長最大3mm、白色。

 中国原産の国外外来種で、日本では1941年に岡山県で初めて発見された。北海道では1964年に道南の森町で発生が確認されたが、発生状況から1961~62年頃に侵入したと考えられている(館山ほか1965、館ほか1966)。


和名  クリタマバチ

学名  Dryocosmus kuriphilus

分類  ハチ目(膜翅目)Hymenoptera、ハチ亜目Apocrita、タマバチ科Cynipidae


生態  年1世代。成虫の羽化時期は7月下旬から1ヶ月ほど続き、ピークは8月上中旬である。成虫は虫こぶ(虫えい)に穴を開けて出てくる。雌だけで単為生殖を行う。卵は冬芽に産卵される。冬芽内で若齢幼虫で越冬する。幼虫の寄生している冬芽は翌春の5月以降に急速に膨らみ虫えいになる。7月上中旬に虫えい内で蛹になる。

分布  北海道、本州、四国、九州;朝鮮半島、中国、北米。
 北海道では1964年に道南の森町で発生が確認された後、道南各地や余市町、壮瞥町などでも確認された(館山ほか1965、館ほか1966、山口1972)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  被害を防ぐには抵抗性の品種を植栽する。寄生性天敵の導入による防除も行われ、好結果が得られている(文献1997)。


文献
作成中
[1973] 館和夫・上条一昭, 1973. 道南地方のクリタマバチの被害. 光珠内季報, 18: 10-13.(北海道での生態、被害)
[1975] 館和夫・上条一昭, 1975. 北海道におけるクリタマバチの分布と被害の経過. 北海道林業試験場報告, 13: 27-35. (北海道での生態、被害)
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌.
[1994] 守屋成一, 1994. クリタマバチ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 511-513. 養賢堂, 東京.
[1997] 館和夫, 1997. 道内におけるクリタマバチの天敵放飼. 森林保護, 262: 41-42. (天敵による防除結果)

2010/3/31