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エゾマツカサアブラムシ

エゾマツカサアブラムシ

写真1 虫コブ。美唄。エゾマツ、2005/6/1。

写真2 虫コブ。美唄。エゾマツ、2005/6/30。

被害の特徴
樹 種 エゾマツ。アカエゾマツやヨーロッパトウヒにはほとんどみられない。
部 位 枝。
時 期 通年(虫こぶ観察時期)。
状 態 虫こぶは長さ3~4cm、葉がトゲのように生える。春~夏の新しい虫こぶは緑色。秋には多数の穴が開き、茶色に変わり、そのまま数年間枝先に残る。

和名  エゾマツカサアブラムシ(文献1985)

学名 命名者  Adelges japonicus (Monzen)(文献1985)

分類  カメムシ目(半翅目)Hemiptera、カサアブラムシ科Adelgidae


寄主  エゾマツ、まれにアカエゾマツやヨーロッパトウヒ。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985を一部改変)。年2世代、幼虫越冬;幼虫は春に翅のない雌成虫になり、冬芽の基部に卵をまとめて産む;卵は緑色、白い綿状の物質で覆われる;5月中下旬に卵から幼虫が孵化し、開いたばかりの新芽に寄生する;寄生された新芽は虫えい(虫こぶ)に変形する;虫えいの中で幼虫が成長する;夏に虫えいに穴が開き、翅のある雌成虫がでてくる;雌成虫は葉上に産卵する;卵から孵化した幼虫は冬芽の基部に付着して越冬する(文献1985)。本州ではトウヒとカラマツの間を行き来する(文献2008)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(越冬) +++ +++ +             + +++ +++ +++
 無翅雌成虫(産卵)       ◎ ◎◎                         
 虫こぶ内、幼虫          ◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆         
 有翅雌成虫(産卵)                     ◎◎◎ ◎◎         

分布  北海道・本州、サハリン(文献1985)。
 道内では各地に分布する(文献1972など、樹木害虫発生統計資料参照)。北海道でカラマツに移動するタイプが確認されており、本州からの移入が示唆された(文献2008)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  多発すると樹勢が低下するが、木が枯れることは少ない(文献1985)。
 虫えいは非常に目立ち、数年間は枝に残る。気になるときは虫えいが緑色のときに取り除いて駆除する。


文 献
[1972] 山口博昭, 1972. 昭和46年度森林害虫発生状況. 北方林業, 24: 230-232.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌.
[1994] 尾崎研一, 1994. エゾマツカサアブラムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 473-475.  養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)
[2008] Sano, M., K. Tabuchi and K. Ozaki, 2008. A holocyclic life cycle in a gall-forming adelgid, Adelges japonicus (Homoptera: Adelgidae). Journal of Applied Entomology, 132; 557-565.(カラマツに移動するタイプの北海道での発見)

2011/5/15