森林研究本部へ

林業試験場

写真1 幼虫集団。美唄、庭のクリ、1999/7/2。

  
樹種クリ、コナラ属(ミズナラ、カシワ、コナラなど)。
部位若い枝。
時期春~秋。
状態枝の伸びが悪くなったり、枯れる。アブラムシが多数みられる。
特徴アブラムシは体長最大5mm、黒色。
被害の特徴

和名  クリオオアブラムシ

学名 命名者  Lachnus tropicalis (Van der Goot)

分類  カメムシ目(半翅目)Hemiptera、アブラムシ科Aphididae


 

形態  概要は上記のとおり。文献1985に卵・幼虫・成虫のカラー写真がある。

寄主  クリ、コナラ属(ミズナラ、カシワ、コナラなど)(文献1977、1985)。

生態  生活環の概要は下表のとおり(文献1985を改変)。卵越冬;青枝や小枝に群生する;春から秋の間に繁殖を繰り返し、数世代を経過する;6月頃、有翅の雌成虫が現れ、他の木に移動して繁殖する;晩秋に幹の株元近くに複数の雌成虫が集まって卵をまとめて産む(文献1977、1985) 
 トビイロケアリ・クロクサアリ・アカヤマアリなどが共生するが、土莢(どきょう、土などによるアブラムシの隠れ家)は作らない。

 発育ステージ~3月  4   5   6   7   8   9  10  11~
 卵(越冬)◎◎◎◎◎◎◎        ◎◎◎◎
 幼虫~成虫(寄生・繁殖)   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆  

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島、台湾、中国。オセアニア(文献1985)。

被害と防除  森林では道南今金のミズナラ幼齢人工林で多発した記録(文献1992)が1例あるにすぎない。普通、防除は必要ない。 
 庭などのクリに普通にみられる。クリでは被害により新梢の伸びが悪くなったり、枝枯れを起こすといわれている(文献1977)。毎年発生するようであれば、冬に幹上の卵を取り除く。


 

文献 
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑. 保育社, 大阪. (形態、生態、防除の解説) 
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真) 
[1992] 福山研二・前籐薫・東浦康友・原秀穂, 1992. 平成3年度に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 44: 271-274. (ミズナラ造林地での発生記録)

2011/5/15