マツのオオアブラムシ類 Cinara spp. feeding on Pinus
写真1 マツオオアブラムシ?、体長3mm。北見、モンタナマツ上。2000/6/13。 | 写真2 ヒメコマツオオアブラムシ?。札幌、五葉のマツ属。2009/6/8。 | 写真3 ヒメコマツオオアブラムシ?。札幌、五葉のマツ属。2009/6/8。 |
樹種 | マツ属(アカマツ・クロマツ・ゴヨウマツなど)。 |
部位 | 枝や新条。 |
時期 | 春~秋。 |
状態 | 枝葉が黒く汚れる。アブラムシが群生する。 新条の伸びがが悪くなる。枝が枯れる。 |
昆虫 | マツ属の枝に寄生するアブラムシ害虫として、以下の3種が知られている。 マツオオアブラムシ 体長最大約3mm。赤褐色~黒褐色、わずかに白粉を装い、小黒紋が多数みられる。複眼は黒褐色。 マツノエダオオアブラムシ 体長最大約4mm。黒褐色、腹部背面の左右に暗褐色の斑紋が並ぶ。複眼は暗い赤色。 ヒメコマツオオアブラムシ 体長最大約3mm。頭部が淡褐色、腹部が褐色~暗褐色、わずかに白粉におおわれる。胸部および腹部第1、2、7、8節それぞれの背面に帯状の黒紋がある。五葉のマツ属に寄生する点で区別できるようである。 他にも数種のアブラムシが枝に寄生する。葉に寄生する種もある。 |
分類 カメムシ目(半翅目)Hemiptera、アブラムシ科Aphididae
和名 マツオオアブラムシ(文献1994a)
別名 マツノオオアブラ(文献1956、1970)。
学名 命名者・年 Cinara piniformosana (Takahashi, 1923)
ヨーロッパのCinara pineaと同種とされたこともあるが(文献1956)、別種とされた(文献1970)。
寄主 アカマツ・クロマツ・ヨーロッパアカマツ・その他マツ属(文献1970)。
生態 春から秋に若い木の枝に寄生;アリが集まる;秋に針葉の上側に2~10卵を並べて産む(文献1970)。
分布 北海道・本州・九州(文献1970)。四国。朝鮮・台湾(文献1956、1970)。
道内では空知・石狩・後志・胆振地方で採集されている(文献1970参照)。
和名 マツノエダオオアブラムシ(文献1994b)
別名 マツノエダオオアブラ(文献1970)、マツノエダアブラムシ(文献1994b)。
学名 命名者・年 Cinara pinidensiflorae (Essig and Kuwana, 1918)
寄主 アカマツ・クロマツ(文献1970)。
生態 小枝や枝に寄生する(文献1970)。卵越冬;春から秋に枝や幼齢木の幹で吸汁;アリと共生する;秋に枝幹の分岐部に産卵する(文献1994b)。
分布 北海道・本州、朝鮮、台湾(文献1956、1970)。中国(文献1970)。
道内では野幌・札幌・砂坂・七飯で確認されている(文献1970)。
和名 ヒメコマツオオアブラムシ(文献1994c)
別名 ゴヨウマツノオオアブラ(文献1956)、ヒメコマツオオアブラ(文献1970)、ゴヨウマツノアブラムシ(文献1994c参照)。
学名 命名者・年 Cinara shinji Inouye, 1939
寄主 ゴヨウマツ・キタゴヨウ・ストローブマツ(文献1970)。
生態 若い木の小枝・枝・幹に寄生する;アリが集まる;日のあたる場所にはいない;7月に有翅雌成虫が現れ、分散する(文献1970)。春から秋に吸汁;20~100匹で群生する;非常に活発で走り回る;初冬に針葉に産卵する(文献1994c)。
分布 北海道・本州(文献1970)。
道内では新十津川・札幌・Shirikisinaeで採集されている(文献1970)。
形態 上述のとおり(詳細は文献1970、1994a・b・cを参照)。
被害 マツオオアブラムシ、マツノエダオオアブラムシ、ヒメコマツオオアブラムシが害虫として知られている(文献1977、1994a・b・c)。北海道では1975年に渡島半島や日高地方のストローブマツ(数10ha規模)で"マツオオアブラ類"の被害記録(文献1976)があるが種は不明である。道内ではこれ以外にマツ属でオオアブラムシ類の被害記録はないようである。
すす病により木が黒くなる(文献1994a・b・c)。マツノエダオオアブラムシやヒメコマツオオアブラムシでは多発すると枝の伸長が抑制され、樹勢が衰え、ときに枝枯れを生ずる(文献1994b・c)。
防除 激しい被害は記録がないため、商品として栽培する場合を除き、防除は必要ないと考えられる。防除にはマツまたは樹木のアブラムシ用に登録されている農薬を散布する。アリと共生するので、アリを駆除する(文献1994b)。
文献
[1956] 井上元則, 1956. 北海道・東北地方の針葉樹に寄生するアブラムシ. 林業試験場北海道支場業務報告, 特別報告, 5: 204-238. (形態、生態)
[1970] Inouye, M, 1970. Revision of the conifer aphid fauna of Japan (Homoptera, Lachnidae). 林業試験場研究報告, 228: 57-102. (分類、形態、生態)
[1976] 山口博昭・小泉力, 1976. 昭和50年度に発生した森林害虫. 北方林業, 28: 97-101.
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑. 保育社, 大阪. (形態、生態、防除の解説)
[1983] 森津孫四郎, 1983. 日本原色アブラムシ図鑑. 全国農村教育協会, 東京.
[1994a] 喜多村昭, 1994. マツオオアブラムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 404-405. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除の解説)
[1994b] 喜多村昭, 1994. マツノエダアブラムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 405. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除の解説)
[1994c] 喜多村昭, 1994. ヒメコマツオオアブラムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 407-408. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除の解説)