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スギマルカイガラムシ

スギマルカイガラムシ

写真1 被害葉の裏側。美唄、庭のイチイ、2000/5/8。

写真2 写真1の拡大。

被害の特徴
樹 種 イチイ、トドマツ、スギ、ヒノキ。
部 位 葉。
時 期 春~秋。1年中みられる。
状 態 葉が黄色に変色したり、枯れたりする。苗木では木が枯死することもある。葉裏に貝殻状のものがある。
介殻は最大長約2mm。楕円形で黄色。

和名  スギマルカイガラムシ
別名 スギノマルカイガラムシ、スギノマルカイガラ(文献1943参照)。

学名 命名者   Aspidiotus cryptomeriae Kuwana

分類  カメムシ目(半翅目)Hemiptera、マルカイガラムシ科Diaspididae


形態  上述のとおり(文献1943、1980a、1994)。

寄主  スギ・ヒノキ(文献1943)、イチイ・イヌガヤ・トドマツ・モミ・ツガ・エゾマツ・トウヒ・クロマツ・スギ・ビャクシンなど(文献1980a、1994)。

生態  札幌辺りでは成虫が6月に出現する;卵は7月上中旬に孵化する;幼虫で越冬する(文献1996)。
 北海道では年1回発生のようである;春に幼虫が孵化し、葉上に移動して固着し、介殻を形成して樹液を吸収する;主に若木の針葉、特に新芽の部分に寄生する(文献1943)。
 形態および生態に変異があり、北海道から東北のイチイなどに寄生するタイプ、東北以南のスギに寄生するタイプとカヤに寄生するタイプに分けられる(文献1980a)。

分布  北海道・本州・四国・九州(文献1943)、サハリン・朝鮮半島(文献1943)、台湾。

被害  苗圃場の苗木や植栽間もない幼樹に被害が多い;被害が激しい時は葉が黄変し、樹勢が衰え枯死することがある;新芽に寄生するため、上長生長を阻害し、樹形が悪くなる(文献1943)。土埃のかかる場所で多発する(文献1977)。
 北海道ではイチイとトドマツに発生するとされているが(文献1979、1980b、1981)、目立った被害は記録がないようである。多発すると一部の葉が枯れることがあるが、樹勢の低下や枯死は知られていない。

防除  植栽地では被害木を抜き取って処分する(文献1943)。防除が必要になることはほとんどないが、気になるときは土埃を防いで予防する。


文 献
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[1977] 小林富士雄, 1977. 緑化樹木の病害虫(下)害虫とその防除. 290 pp. 日本林業技術協会, 東京. (害虫の特徴、被害)
[1979] 小泉力 1979. 昭和53年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業 31: 160-164.
[1980a] 河合省三, 1980. 日本原色カイガラムシ図鑑. 455 pp. 全国農村教育協会, 東京. (分類、形態、宿主)
[1980b] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1980. 昭和54年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 32: 159-163.
[1981] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1981. 昭和55年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 33: 155-159.
[1994] 河合省三, 1994. スギマルカイガラムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 415. 養賢堂, 東京. (形態、生態の解説)
[1996] 尾崎研一, 1996. イチイに新たな害虫イチイカタカイガラムシ. 森林保護, 256: 41-43. (生態、他のイチイのカイガラムシについても解説)

2009/2/8