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林業試験場

ドロノキハムシ

ドロノキハムシ

写真1 中齢幼虫。美唄、ポプラ。2005/9/20。

写真2 中齢幼虫。写真1の拡大。

写真3 老齢幼虫。美唄、ポプラ。2005/9/20。

写真4 終齢幼虫。美唄、ポプラ。2005/9/20。

写真5 老齢幼虫。美唄、ポプラ。2005/9/20。

被害の特徴
樹 種 ヤナギ科(ポプラ、ヤナギ属など)。
部 位 葉。
時 期 春~秋。
状 態 葉が食べられる。幼虫や成虫がいる。幼虫は体長最大約15mm、黄色やオレンジ色で黒い斑紋があり、頭部は黒色。腹脚はないが、尾端が吸盤状。胸脚はくの字状。
成虫は体長約10mm、鞘翅は赤色、他は黒色で青色の光沢がある。

和名  ドロノキハムシ

学名   Chrysomela populi

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、ハムシ科Chrysomelidae


生態  寄主はヤナギ科。
 生活環は下表のとおり(文献1985を一部改変)。北海道では年2世代、成虫越冬;成虫は5月、開葉とともに出現し、新葉を食べながら、葉裏に産卵する;卵期は1週間くらい;孵化幼虫は、集団で葉を食べるが、生長すると分散する;若い幼虫は葉の表面を削るように食べる(写真1);樹上の葉裏などに尾端を固定し、下垂して蛹になる;成虫の生存期間が長いため、成虫・幼虫・蛹などが同時に見られる;成虫は落葉の下、土中に浅く潜るなどして越冬する(文献1985)。より詳しくは文献1994。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 成虫(+越冬、◎摂食・産卵) +++ +++ +◎◎ ◎◎?              ++ +++
 幼虫(摂食・成長)           ◆ ◆◆◆ ?                  
 蛹              ◇◇ ◇?                 
 成虫(摂食・産卵)                 ◎◎◎ ?              
 幼虫~成虫(摂食)                  ◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆      

分布  北海道・本州・四国・九州、旧北区。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害など  しばしば多発するが、地域的にみると被害は1~3年で終わっている(樹木害虫発生統計資料を参照)。過去には薬剤防除が行われた(文献1974)こともあるが、木が枯死した記録はないため、森林では防除の必要はないと考えられる。


文献
[1956] 中根猛彦監修, 1956. 原色日本昆虫図鑑甲虫編, 増補改訂版: 1-274, pls 1-68. 保育社, 大阪. (分類、形態、生態)
[1963] 中根猛彦ほか, 1963. 原色日本昆虫大図鑑Ⅱ(甲虫篇): 1-18, 1-443, pls 1-192. 北隆館, 東京.
[1974] 山口博昭・小泉力, 1974. 昭和48年度に発生した森林害虫. 北方林業, 26: 97-99.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (生態、被害、カラー写真)
[1994] 木元新作・滝沢春雄, 1994. 日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説. 539pp. 東海大学出版会, 東京. (分類、形態、生態)
[1994] 奥田素男, 1994. ドロノキハムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 361-362. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)

2011/6/27