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林業試験場

イタヤハムシ

イタヤハムシ

写真1 幼虫、体長10mm。北見市、イタヤカエデ、2000/6/12。

写真2 幼虫。写真1と同じ個体群。

写真3 成虫、体長9mm。中川町、イタヤカエデ、2000/8/24。

被害の特徴
樹 種 イタヤカエデ。
部 位 葉。
時 期 主に5~7月。
状 態 葉がなくなったり、穴が開く。幼虫(5~7月)や甲虫(成虫、8~9月)がみられる。
幼 虫 体長最大10mm。黄土色の地に黒い斑紋がある、あるいは全体的に黒い。体の前方下側に3対のくの字状の脚(胸脚)がある。尾端は吸盤状。腹部に脚はない。
成 虫 体長7~9mm、黄土色。
注) よく似た害虫にニレハムシやサンゴジュハムシがあるが、加害樹種が異なる。

和名  イタヤハムシ

学名   Pyrrhalta fuscipennis

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、ハムシ科Chrysomelidae


寄主  イタヤカエデ。ダケカンバ、ハンノキ、ナナカマドにも寄生するといわれている。被害はイタヤカエデでのみ記録されている。

生態  年1回発生。卵越冬。幼虫は5月に孵化し、葉を食べて成長する。6~7月に幼虫は地上に降りて土中に潜って蛹になる。成虫は8~9月に出現し、葉を食害する。雌成虫は卵は樹皮の割れ目などに産み付ける。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  北海道内ではイタヤカエデで多発するが、被害は1~2年で終わっている(文献1975、1993、1994bなど、樹木害虫発生統計資料参照)。1992~1993年には後志・石狩地方を中心に数万haの森林被害が記録された(文献1993、1994b)。木が衰弱したり枯れた報告はないため、防除は普通必要ないと考えられる。ただし、春と夏とに2回食害が続いて起これば、木にかなり大きなダメージを与えると思われるが、詳しい調査は行われていない。
 庭などの小さな木で食害が気になるときは幼虫や成虫を捕って駆除する。


文献
[1975] 山口博昭・小泉力, 1975. 昭和49年度に発生した森林害虫と最近10年間の発生状況. 北方林業, 27: 111-114.
[1978] 館和夫, 1978. 函館地方の緑化樹の害虫(III). 光珠内季報, 38: 10-15.
[1984] 館和夫, 1984. 道南地方の樹木病害虫(広葉樹編-II). 光珠内季報, 61: 9-12.
[1993] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1993. 平成4年度に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 45: 269-272. (発生記録)
[1994a] 奥田素男, 1994. イタヤハムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 356-357. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)
[1994b] 福山研二・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1994. 平成5年度に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 46: 291-294. (発生記録)

2009/3/31