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林業試験場

ヒメスギカミキリ

ヒメスギカミキリ

写真1 成虫。

被害の特徴
樹 種 スギ、ヒノキ、サワラ。
部 位 太い枝や幹の材部(主に辺材)。
時 期 ほぼ通年(幼虫加害時期、冬季を除く)。
状 態 太い枝や幹先端部、あるいは木全体が枯れる。10~30年生の衰弱木や損傷木が被害を受けやすい。
樹皮下の材表面に不規則に曲がりくねった扁平な孔道があり、幼虫がみられる。 材内の孔道の断面は楕円形。 孔道には細かな木くずが充填する。
樹皮に楕円形(長径5mm、短径2.5mm)の穴がある(加害終了後)。
幹の表面に成虫がいる。
幼 虫 体長最大約18mm。単独性。黄白色で扁平な円筒状。
前胸背板は台形で、前半部に1対の半月形の褐色部がある。

和名  ヒメスギカミキリ(文献1943、1994)
別名 スギノアカカミキリ

学名 命名者   Callidiellum rufipenne (Motshulsky) (文献1994)
= Semanotus rufipennis Motshulsky (文献1943)

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、カミキリムシ科Cerambycidae


形態  幼虫については上記のとおり(文献1943;詳細は文献1994)。成虫や蛹については文献1994を参照)。卵は長卵形で、淡黄白色、長さ1mm余り(文献1943)。

寄主  スギ、ヒノキ、サワラ(文献1943、1994)。モミ、アスナロ、ネズ、イブキ、ナラガシワ、イチイ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、ラジアータマツ(文献1994)。幼虫は辺材部を食べる(文献1994)。

生態  年1回発生(文献1943)。寒冷地では2年1世代のこともあり、食害中の材が乾燥すると3年以上経過することもある(文献1994)。成虫は4~6月に発生;雌成虫は主に樹幹の剥離した樹皮の裏面に産卵する;孵化した幼虫は樹皮化に食入し、辺材に沿って不規則に曲がりくねった孔道を掘って成長する;老熟した幼虫は7月頃から材部に入り蛹室を作る;前蛹期30日、蛹期約3週間の後に成虫となり、そのまま樹体内で越冬し、翌春に樹皮に楕円形の穴をあけて外部に脱出する;北海道では幼虫態で越冬し7~8月頃から羽化することがある(文献1943)。

分布  北海道南部・本州・四国・九州、朝鮮半島(文献1943、1994)。沖縄から北海道までの日本全土、サハリン、中国東北部、台湾、ニュージーランド(外来)(文献1994)。

被害と防除  10~30年生くらいの衰弱木の幹や太い枝、損傷木が被害を受けやすい;寄生された枝や梢頭部は枯死し、ついには樹全体の枯死を招くことがある(文献1943)。健全な生立木は加害しない;春~初夏に伐倒木を樹皮つきのまま放置すると樹皮下が加害される(文献1994)。
 被害を受けやすい衰弱木や損傷木、寄生を受けた枝を取り除く(文献1943)。成虫が活動する春から初夏の伐採を避ける;材を放置する場合は農薬を散布する(文献1994)。


文献
[1899] 佐々木忠次郎, 1899. 日本樹木害虫編, 上巻: 150. (文献1943の引用文献、引用箇所不明)
[1912] 佐々木忠次郎, 1912. 杉類の害虫. 大日本山林会報, 221: 4. (文献1943の引用文献、引用箇所不明)
[1923] 新島善直, 1923. 新編森林保護学, 上巻: 221. (文献1943の引用文献、引用箇所不明)
[1938] 皆川正實, 1938. スギカミキリ及びヒメスギカミキリの幼虫の形態並びに生態について. 応用動物学雑誌, 10: 53. (文献1943の引用文献、引用箇所不明)
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態・生態の概要、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用箇所の出典は確認していない)
[1994] 槙原寛, 1994. ヒメスギカミキリ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 187-188. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)

2011/5/13