スギノアカネトラカミキリ Anaglyptus subfasciatus
写真1 成虫。道南、スギ。1997/4/16。 | 写真2 被害木の横断面。 |
樹種 | スギ、ヒバ、ヒノキ。 |
部位 | 材。 |
時期 | ほぼ通年(幼虫加害時期、冬季を除く)。 |
状態 | 被害木は枯れ枝の付け根がコブ状になり、ヤニがでる場合もあるが、外観から被害木を判断するのは一般に困難である。 枯れ枝を根元で切ると、その断面に粉の詰まった楕円形の穴(長径3~4mm)がある。また、基部から4㎝ほど離れたところに直径3~4㎜の円い穴が開く。 材内に孔道が掘られ、その周囲が変色・腐朽する。 |
和名 スギノアカネトラカミキリ
学名 命名者 Anaglyptus subfasciatus Pic
分類 コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、カミキリムシ科Cerambycidae
寄主 スギ、ヒバ、ヒノキ、コノテガシワ属、ビャクシン属(文献1985)。
生態 2年で1世代、1年目は幼虫で越冬、2年目は成虫で越冬(文献1985)。卵から成虫まで早くて2年、寒冷地では推定4~5年かかる。成虫は5月下旬から材に3~4㎜の円い穴をあけ脱出する;脱出孔は枯枝の基部から4㎝くらい離れたところにある;雌成虫は羽化後交尾して、約1週間後に産卵を始める;産卵部位は枯れて2~3年たった枝の粗皮のめくれた部分や枝の分岐部など;卵は1~2個ずつ産みつけられる;孵化した幼虫は枝の辺材部や形成層部を食べて幹の材中に入り、材中を上下に穿孔する;成熟した幼虫は枯れ枝にもどり、蛹になり、成虫になって越冬する(文献1985)。成虫はサンショウ、ガマズミ、ミズキなどの花に集まり、蜜や花粉を食べる。
分布 北海道・本州・四国・九州北部(文献1985)。
発生観察地域 (文献1983、1987など;樹木害虫発生統計資料参照)
被害と防除 幼虫の食害部位の周囲がぼたん花状に変色する("とびぐされ"と呼ばれる);材質が劣化するが木が枯れることはない(文献1985)。ヒバやヒノキは、スギほど変色や腐朽の程度は大きくないといわれている。
寒冷地のスギでは被害は早くて20年生くらいから発生する。木が大きくなると枝も太くなり、生枝上の枯れ枝に産卵が多くなるため、幹への被害は少なくなるといわれている。
被害は局所的である。被害が確認されている林分と同じ流域地域では枝打ちによる被害予防が重要である。20年生から枝打ちを行い、枯れ枝が発生しないようにする。
文献
[1983] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1983. 昭和57年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 35: 178-182.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)
[1987] 吉田成章(北海道森林昆虫談話会), 1987b. 昭和61年度・北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 39: 179-184.
[1994] 遠田暢男, 1994. スギノアカネトラカミキリ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 188-192. 養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)