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マツノキクイムシ

マツノキクイムシ

写真1 被害枝、ヨーロッパアカマツ。函館市、2000/12/7。

被害の特徴
樹 種 マツ属(アカマツ、クロマツなど)。
部 位 幹の樹皮下(主に衰弱木)。健全木の枝先。
時 期 春から夏(幹の樹皮下)。夏から冬(枝先)。
状 態 木が枯れる、あるいは枝先が枯れる。
木が枯れる被害では、幹の樹皮下に坑道があり、成虫・幼虫・蛹がいる。内樹皮寄りに幹縦方向に長さ8~10cm幅2~3mmの坑道(母孔)があり、そこから左右に先端に向かい太くなる坑道(幼虫孔)が多数ある。後者の坑道は木くずが詰まる。
枝先が枯れる被害では、枝に直径2mmほどの孔が2つあり(写真1)、その間の枝内部に坑道がある。孔には樹脂が白く付着する。坑道内に成虫がいることがある。
幼虫・蛹 白色。幼虫は体長最大約3mm、頭部が淡褐色、円筒形で脚がない。
成 虫 体長4~5mm、長楕円形で円筒状。光沢の強い黒色、ときに上翅が暗褐色。
備 考 マツにはマツノムツバキクムシも加害する。この種では母孔が一カ所から数本伸び、成虫の尾端背面には左右に各3個の刺がある。

和名  マツノキクイムシ(文献1994)

学名 命名者  Tomicus piniperda (Linnaeus)
(文献1994)

分類  コウチュウ目(鞘翅目)Coleoptera、キクイムシ科Scolytidae


寄主  マツ属:アカマツ・クロマツ(文献1943)、各種の外国産マツ(文献1994)。

生態  年1回発生、成虫越冬、成虫は3~4月頃に衰弱木、新鮮な倒木、健全木の幹の樹皮下に穿孔する;雌成虫は幹の縦方向に内樹皮を穿孔し、孔道(母孔)の両側の壁に卵を産む;母孔の長さは10cm内外;孵化幼虫は母孔に対し直角の方向に穿孔し成長する;6~7月頃に幼虫は老熟し蛹化する;羽化した成虫は7~8月頃から樹皮に円形の穴をあけて外部に脱出した後、当年枝に穿孔して内部を食害する;枝の孔には樹脂が白く付着する;晩秋に幹根際の樹皮中に穿孔して越冬する;一部の雌成虫は春に産卵したのち、前年枝に穿孔・食害した後、再び樹幹に穿孔して産卵する(文献1943)。枝内部で越冬する成虫もある(文献1994)。

分布  北海道南部・本州・四国・九州、シベリア、モンゴル、中国、朝鮮半島、台湾、ヨーロッパ、北米(文献1943)。北アフリカ(文献1994)。被害は道央でも観察されている。

被害  加害樹は老齢過熟木、被圧木、潮害木、雪害木、風倒木、材線虫による年越し枯れ木、その他の病虫害木である(文献1994)。繁殖のため加害するのは主に衰弱した老木や新鮮な倒木である;被害木は枯死する;越冬のための穿孔は繁殖のための穿孔ほど著しい害はないが、樹勢を衰えさせ、穿孔虫数が多い場合は木を枯死させる;最も著しい被害は枝先を食害・枯死させることで、特に幼木で被害が著しく、生長が阻害され樹形が不整になる(文献1943)。
 1978年に旭川のストローブマツ採種林で被害記録がある(文献1979)。また、1990年に 芦別のヨーロッパカラマツ林で"マツノコキクイムシ"の被害記録があり(文献1991)、本種の誤認の可能性がある。
 街路樹や庭木のマツで被害が発生することもある。

防除  風倒木等を速やかに処分することは増殖を予防する上で重要であり、伐採木は速やかに整理する(文献1943)。枯死木は除去または薬剤散布する;被害枝は除去する(文献1994)。


文 献
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[1979] 小泉力 1979. 昭和53年度北海道に発生した森林害虫. 北方林業 31: 160-164.
[1991] 小泉力・前藤薫・東浦康友・原秀穂, 1991. 平成2年度に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 43: 155-161.
[1994] 野淵輝, 1994. マツノキクイムシ. 小林富士雄・竹谷昭彦(編集), 森林昆虫, 総論・各論: 161-163. 養賢堂, 東京. (形態、生態、被害、防除)

2011/5/8